第9章 第7節 第2項 タイでの住宅事業

9-7-2-1 シラチャ──日本人駐在員向け賃貸住宅事業を展開

ASEAN諸国でベトナムに続く事業展開となったのがタイ王国(以下、タイ)である。タイは2016(平成28)年に、産業構造の高度化を図るための国家プロジェクトとしてEEC(東部経済回廊)構想を掲げ、首都バンコクの東側に位置する3県を対象地域に指定、2022(令和4)年までの5年間で1兆7000億バーツの投資を官民で行うこととした。

3県は共に日系企業による進出が活発な地域で、3県の一つ、チョンブリ県シラチャには日本人学校があり、学校周辺の広大な土地を所有する現地の大手財閥系企業サハグループが一帯を開発する計画を進めていた。当社はこれに参画することとし、サハグループ4社と東急グループ2社の合弁によりサハ東急コーポレーション社(以下、サハ東急社)を2014年10月設立。まずは日本人学校の西側隣地に、日本人駐在員家族向けの賃貸住宅「ハーモニック・レジデンス・シラチャ」(総戸数180戸)を建設することとなった。

1戸あたりの延床面積は120㎡を超える広々とした2階建て(メゾネットタイプ)で、敷地の入口にはセキュリティゲートを設置して24時間体制で警備を行い、敷地内にはプレイグラウンドや遊歩道、中央部にはクラブハウスを設けて、日常生活をサポートするさまざまなサービスを用意。快適で安全な住環境を整え、2016年9月に全館開業を迎えた。これに続いて隣接地を活用した拡張計画はコロナ禍で段階的に進めることとなり、クラブハウスを増築し、2022年現在、総戸数212戸で運営している。

賃貸住宅「ハーモニック・レジデンス・シラチャ」

この間の2017年4月には「ハーモニック・レジデンス・シラチャ」が、ミキハウス子育て総研による「子育てにやさしい住まいと環境」に海外物件では初めて認定された。日本人駐在員の駐在期間の終了に伴う入れ替わりもあるが、退去時に行ったアンケート調査でも、子育て環境に優れている点が高く評価された。

「ハーモニック・レジデンス・シラチャ」が高い稼働率で推移したことからサハグループとのパートナーシップが強まり、1999年に開業した日本人駐在単身者向けアパート「グリーンライフシラチャ」(全75室)の施設運営をサハ東急社が2019年6月に継承。リノベーションおよび営業力強化により競争力を高め、複数物件運営によるシナジー効果をめざした。

9-7-2-2 首都・バンコク──分譲住宅事業などを展開

シラチャに続いて、首都・バンコクでは大手住宅デベロッパーのSansiri社(サンシリ社)との合弁で分譲住宅事業を開始することとした。合弁事業の出資比率はサンシリ社70%、当社29%、サハ東急社1%で、案件ごとに特別目的会社(SPC)を組成して事業を進めることとなった。

まず第1号案件として、タイ人富裕層や日本人駐在員居住エリアであるスクムビット地区におけるマンションプロジェクト「taka HAUS」(地上8階建て・7階建ての2棟、総戸数269戸)に着手し、2019(令和元)年8月に竣工。続く第2号案件は同じくスクムビット地区の高層マンションプロジェクト「XTエカマイ」(地上38階建て、537戸)で、2020年10月に竣工し、第1号第2号共に好調な販売実績を上げた。

バンコク市における高層マンションプロジェクト「XTエカマイ」

第3号案件として着手した、地元中間層が居住するスクムビット50地区におけるマンションプロジェクト「ザ・ベース スクムビット50」(地上8階建て、415戸)は、経済成長の鈍化や、住宅ローン規制導入などの事業環境の変化を受けて、販売計画を見直した。

また2022年、当社初の取り組みとしてバンコクで、サンシリ社と消費財系財閥・サハグループの子会社SPR社と共に、合弁会社を通じて、分譲戸建て事業「Burasiri Krungthep Kreetha(ブラシリ・クルンテープクリータ)」に参画し、2022年9月より引き渡しを開始した。総戸数276戸、高品質な一戸建てで、敷地内にはプール、フィットネスクラブ、コワーキングスペースなど充実した共有施設を備え、EV充電器や太陽光発電仕様を全戸に標準設置し、タイにおいては先進的な環境配慮の取り組みを導入した。

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