第9章 第10節 第1項 創立100周年から次の100年へ

9-10-1-1 記念事業の実施

2022(令和4)年9月2日に東急グループが創立100周年を迎えるにあたり、当社はお客さまをはじめとするすべてのステークホルダーに感謝の気持ちを伝え、グループ社員と共に100周年の節目を祝うべく、記念事業の実施内容について検討を開始。東急の「歴史」を振り返り、東急の「今」を知り、東急の「未来」への期待を醸成する機会として活用することとし、2022年4月からの1年間を「100周年Year」と設定した。

記念事業の実施にあたり、「100周年ロゴマーク」を2021年9月に制定、名刺などを皮切りに、記念事業のシンボルとしての展開を始めた。

東急グループ100周年ロゴマーク

このロゴは、安全・安心や環境を象徴する緑色の2本の線(レール)と数字の「1」(木々、建物)で東急グループの原点である鉄道・開発などのまちづくりを表し、東急グループのロゴカラーである赤色と、顧客や豊かさを表す黄色で描いた二つの「0」が重なり合うことで、この先も顧客を大切に、寄り添いながら、成長を続けていく決意を表現している。

〈東急グループ100周年トレインの運行〉

100周年Yearの始まりを告げる事業となったのが、特別企画列車「東急グループ100周年トレイン」の運行である。100周年ロゴマークのデザインをモチーフにしたラッピング車両を導入し、車内には1922(大正11)年の目黒蒲田電鉄創立から今日に至る歩みや、歴代車両を紹介したポスター、街の変化が感じ取れる今昔の写真、100周年メッセージなどを掲示。外からも、車内でも、時代の変化や100周年の祝祭が感じられる車両とした。

ラッピング車両は4路線、車内ポスター掲示は7路線で実施。2022年4月から1年間にわたって乗り入れ先も含めて運行を行い、とくに往時の沿線風景や歴代車両の写真などは、大きな反響をもって迎え入れられた。

  • 東急グループ100周年トレイン
  • 東急グループの歴史を紹介する写真などを展示した車内

〈小学生絵画コンクール〉

小学生の皆さんが大人になる2050年、「住んでみたい」「遊んでみたい」「こんな電車に乗ってみたい」と思う東急の街を、自由に表現してください――。そんな呼びかけで、「『東急のまちの未来を描こう』小学生コンクール」を実施した。2022年7月から8月にかけて募集を行ったところ、予想を上回る多数の応募があり、審査を担当するグループ社員も力作の数々に感慨を新たにした。

応募作品のなかからは金賞、銀賞、銅賞、東急賞、佳作、小学校賞を選出し、選ばれた作品のすべてをWEBサイトで公開した。上位作品については「東急グループ100周年トレイン」車内、渋谷駅、電車とバスの博物館で掲示・展示した。

〈レターコンテスト〉

「東急線の駅や街で出逢った、思わず『ありがとう。』と言いたくなった瞬間。」をテーマに、東急線の駅や街で出逢った、思わず「ありがとう。」と言いたくなった瞬間を、400文字以内のレター(手紙)形式で募集を行った(2022年10月~11月)。

最優秀賞10点をはじめとした合計100点の入賞作品を選定し、入賞者へは賞状と副賞を贈呈すると共に、その作品は特設WEBサイトでの紹介や「東急グループ100周年トレイン」内などで掲示を行った。

〈東急電鉄「感謝を伝えるプロジェクト」〉

駅を利用するすべてのお客さまへの「感謝」と、これからの「思い」をしたためたメッセージを、鉄道各駅の各職場から発信するプロジェクト。東急電鉄の全社を挙げた取り組みとして2022年7月からメッセージの掲出を始めたほか、WEBサイトでも展開した。

〈東急会「クリーンアップ・グリーンアップ運動」〉

地域ごとに東急グループ各社が集まって社会貢献活動などを展開する「東急会」の事業として、2022年10月9日を中心とする9月から11月にかけて、各地で清掃活動や植樹活動を実施。渋谷地区では落書きを消すクリーンアップ運動を行い、長谷部渋谷区長や髙橋社長も参加した。

〈『東急グループ創立100周年記念写真集』の発行〉

過去と現在の写真グラビアを中心に編纂した記念写真集、『100Thanks TOKYU GROUP 100th Anniversary Book』を製作し、当社および東急電鉄の全従業員と希望のあった東急グループ各社・各法人従業員全員に配布した。また2022年9月2日の東急グループ創立100周年記念祝賀会の出席者や関係者にも配布された。

〈『東急100年史』の編纂〉

2016(平成28)年に100年史編纂プロジェクトを立ち上げ、50年ぶりとなる当社史の編纂を進めた。2022年4月からWEB版の公開を順次開始し、2023年3月に資料編も含めた全編をWEBで公開した。

〈その他の記念事業〉

2023年1月までの発表・実施分
当社本社1階に設置された東急グループ100周年記念展示「History Wall」

9-10-1-2 記念行事の実施と次の100年に向けた決意

〈「東急グループ創立100周年記念祝賀会」の開催〉

目黒蒲田電鉄の創立からちょうど100年目にあたる2022年9月2日には、これまで東急グループを支えていただいた方々を迎えて、セルリアンタワー東急ホテル ボールルームで「東急グループ創立100周年記念祝賀会」を開催。岸田文雄内閣総理大臣をはじめ、東急グループとゆかりのある約500人の各界著名人が出席した。

祝賀会会場前のホワイエには、100年の歩みを写真と共に振り返る「東急百年絵巻」を展示。会場入り口では東急グループの野本弘文代表、当社髙橋和夫社長、東急不動産ホールディングス金指潔会長と西川弘典社長、東急建設寺田光宏社長が、招待者の皆さんを笑顔と共に立礼で出迎え、18時に祝賀会が開幕した。

野本代表や髙橋社長らが招待者を出迎え

祝賀会では「東急のあゆみ」と題する動画が大スクリーンで上映されたあと、野本代表があいさつに立った。このなかで野本代表は、これまで東急グループを支えていただいた方々への感謝を述べたあと、次のように抱負を語った。

100周年を迎える今日、東急グループを取り巻く環境は決して穏やかなものではありませんが、渋沢栄一翁の『逆境の時こそ力を尽くす』という言葉や、五島慶太翁が大事にした信念、どんな困難な時でも『なあにこのくらいのこと』という精神をしっかりと受け継いでまいりたいと思います。(中略)東急グループは、これからも『美しい時代へ』というスローガンの下、人々に『楽しさ』『豊かさ』『美しさ』を感じていただけるまちづくりを通じて、『文化大国日本』の一翼を担える企業集団として頑張ってまいる所存です。

野本代表のあいさつ

これに続いて、演台に立った岸田総理大臣から来賓あいさつが披露され、小池百合子東京都知事からはビデオメッセージが寄せられた。このあと日本生産性本部会長も務める茂木友三郎キッコーマン取締役名誉会長から乾杯の発声をいただき、鏡開きが行われた。来賓では黒岩祐治神奈川県知事もあいさつを披露、会場ではハープの生演奏が流れるなか、和やかな会談風景が繰り広げられた。

幾重もの人の輪ができた祝賀会場

100周年記念ミニコンサートとして川井郁子によるヴァイオリンの生演奏が披露されたあと、最後に髙橋社長が演台に立って閉会のあいさつを行い、約1時間半の宴は幕を閉じた。招待者には感謝を込めた引出物として、100年の軌跡を一冊にまとめた写真集「100 Thanks」、宮古島の農業支援の一環で産官学の連携により生まれたヤム芋焼酎「ずみ」、セルリアンタワー東急ホテル謹製のパウンドケーキを手渡しして散会となった。

〈「東急 次の100年に向けた決起集会」の開催と「変革プロジェクト」の推進〉

東急グループが創立100周年を迎える前日の9月1日には、セルリアンタワー東急ホテルで「東急 次の100年に向けた決起集会」を開催。当社と東急電鉄の従業員約800人が会場に集結したほか、オンラインでも約1100人が参加した。

当日は冒頭に東急100周年ステートメントムービー「経った100年。たった100年。」が上映されたあと、髙橋社長が壇上に立ち、次の100年に向けた想いが全従業員に伝えられた。

髙橋社長から次の100年に向けたメッセージ

このなかで髙橋社長は、日本には長寿企業が多く存在することを挙げ、その共通点として「常にイノベーティブな挑戦をしている」「社員を大切にしている」「地域に貢献し、地域に愛されている」が定説とされていることを紹介。そして、東急の次の100年に向け、「変革」に取り組んでいく姿勢について、次のように述べた。

いま、当社では「変革」という名の下、さまざまなプロジェクトを走らせています。変革を進めていくにあたり、経営層や従業員の皆さまと対話していくなかで、私たちが大切にすべき行動が見えてきました。それが、「見る」「動く」です。(中略)そして「見る」と「動く」をチームのちからに変えていくために必要なことは「対話」であると考えています。(中略)お互いに腹落ちし、共感することで、はじめて東急のちからに変わっていくのだと思っています。

創立100周年を目前に控えた1年間、経営層合宿やマネジメント層対話、従業員を交えた対話を進めてきたことを踏まえて、当社は8月から社長直轄の「変革プロジェクト」をスタート、「事業ポートフォリオとKPIマネジメント」「顧客視点へのシフト」「人財風土改革」の三つのテーマを掲げた。そして髙橋社長は、2023年度上半期に従業員も交えた対話を続けながら三つのテーマについて検討を重ね、次期中期経営計画の策定に結びつけていくことを表明。最後に100周年ステートメントを読み上げ、集会を締めくくった。

100年という歴史に重みを感じながらも、次の100年に向けて新しい一歩を踏み出す契機となった決起集会であった。

100周年ステートメント「経った100年。たった100年。」
出典:社内資料
決起集会フィナーレ

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