第9章 第9節 第2項 連結経営の強化をめざして

9-9-2-1 連結会計システムの共通化を推進

当社が東急グループのガバナンスを担うことを明確に表明したのは2000(平成12)年4月発表の「東急グループ経営方針」が初めてであった。そして2012年3月に発表した「中期3か年経営計画」では、10年後の2022(令和4)年にありたい姿として「東急線沿線が『選ばれる沿線』であり続ける」と合わせて、「『ひとつの東急』として、強い企業集団を形成する」を中長期ビジョンに定めた。

「ひとつの東急」を実現するうえで重要なテーマとなっていたのが、東急グループにおける会計システムの共通化である。連結決算の本格化に合わせて、すでに中小規模のグループ会社を中心に共通化を図ってはいたが、企業規模の大きい主要グループ会社については各社で導入済みの会計システムからの移行に、さまざまな課題を抱えたままであった。

しかしながら経理業務が複雑化・高度化の傾向にあるほか、専門的な知識を有する人材の慢性的な不足、経験人材の固定化が懸念されており、近年では新会社設立にあたって経理業務の立ち上げに時間やコストを要する例も目立っていた。

このため、2016年2月、当社連結グループを構成するグループ約120社を対象に、共通会計システムを導入することを決定した。導入の基本方針として「業務品質の向上」、「ガバナンスの強化」、「コスト最適化」の三つを掲げ、当社財務戦略室が主導し、各社の経理担当者が参加するプロジェクト形式で取り組むこととした。グループ各社に対しては、現場レベルからトップ層までの各階層で説明会を開催して合意形成を図り、会計システムの要件定義にかかわる検討を開始。会計業務手順と各社の経理業務をすり合わせて「標準経理業務」を決定、必要な会計システムの機能を決定した。

図9-9-4 会計システム共通化のメリット
出典:社内資料

新しい共通会計システムのコンセプトは「ノンカスタマイズ」。従前は、グループ各社が独自に会計システムを持ち、業務の進化と共にカスタマイズを重ねたため、多大な保守コストがかかっていた。こうした反省を踏まえ、本導入では極力独自開発は行わず、「システム標準に業務を寄せていく」ことを方針に掲げ、導入各社の理解を得た。システムの共通化を機に、業務フローや勘定科目も各社間で統一した。その後、各社の現行システムの更新時期などを鑑み、2017年ごろから一部会社で導入を開始、2022年7月までに共通会計システム「ZEACAST」を完全導入した。

こうした共通会計システム導入と歩を合わせ、当社は会計業務におけるペーパーレス化や承認プロセスの簡素化を進め、2021年7月に経費精算システム「Concur(コンカー)」、2022年7月には、現場部門と経理部門の間における問い合わせやタスクを一元的に管理するシステム、「ServiceNow(サービス・ナウ)」を導入した。これらは共通会計システムを基盤に構築したもので、Concurは2023年2月現在、グループ16社で導入している。

また、IT面において株式会社東急コンピュータシステムを当社の直接子会社とし、2016年4月に東急テックソリューションズ株式会社に社名変更、共通IT基盤であるITシェアードサービスの拡大による連結経営強化への寄与を図った。共通会計システムにおいても、同社がシステム運用保守の窓口を務め、一元的な保守体制としている。

なお、2000年4月の「東急グループ経営方針」を発表したのは、清水仁社長であった。清水社長は、グループ全体の経営状況が厳しい状況に直面した際には、対応の指揮を執り、健全性回復と成長戦略への道筋をつけることに尽力した。2021年6月に90歳で死去。2004年に旭日大綬章を受章され、さらに2021年には従三位に叙された。

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