第9章 第3節 第2項 その他不動産開発の進展

9-3-2-1 横浜市緑区十日市場町周辺地域で持続可能な住宅地形成を推進

横浜市は2010年代に入ってからたまプラーザ駅北側地区など四つのモデル地区で「持続可能な住宅地推進プロジェクト」を進めてきた。その内の一つが「緑区十日市場町周辺地域」である。この地域内の十日市場センター地区の街区について、2014(平成26)年12月に横浜市が、民間事業者を公募した。当社と東急不動産、NTT都市開発の3社共同体が事業予定者に決定し、2015年9月、横浜市と3社共同体が基本協定を締結した。

事業対象は、いずれも横浜市が所有する20街区と21街区で、20街区は横浜市から土地取得し、3社共同(事業比率は当社50%、東急不動産30%、NTT都市開発20%)でマンション分譲事業を行い、21街区は土地賃借し、東急不動産が不動産賃貸事業(シニア住宅など)および定期借地権付き戸建分譲事業を行うことで協議がまとまった。

2019年4月、21街区で、アクティブシニアから要介護の高齢者までを対象としたシニア住宅「クレールレジデンス横浜十日市場」を中心に、賃貸住宅や戸建住宅が開業。2019(令和元)年11月に20街区で、分譲マンション「ドレッセ横浜十日市場」やミニスーパーなどの生活利便施設、子どもたちの遊び場や地域イベントの会場として使えるコミュニティスペースが順次竣工した。

また、多世代の住民同士や住民と来街者の交流促進、住環境の維持・向上を目的として、住民が主体となって運営するエリアマネジメント法人「一般社団法人横浜グリーンバトン倶楽部」を設立した。

ドレッセ横浜十日市場

この3社共同の複合開発は「横浜グリーンバトンプロジェクト」と呼称し、2020年10月に、2020年度グッドデザイン賞を受賞した。敷地内の緑地帯を線的・面的につなぎながら活動の場をつくる試みや、保育園やコミュニティカフェ、イベント広場を設け、防災関連をはじめとするプロジェクトに取り組む点などが評価された。

9-3-2-2 新駅設置で動き出した、新綱島駅前の再開発事業

2012(平成24)年10月の相鉄・東急直通線の都市計画決定で、新綱島駅(当時は仮称)が設置されることとなったことから、横浜市と地権者などで新駅周辺のまちづくりとしての土地利用方針を検討し、横浜市は周辺地区について土地区画整理事業により、都市計画道路の整備を行うこととした。また、これと一体的な取り組みとして、「新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業」が推進された。

この市街地再開発事業は、新駅周辺にふさわしいにぎわいの創出、新たな文化芸術活動の場となる区民文化センターの設置、周辺地域のさらなる安全・快適性を図ることを目的としている。施行者は、新綱島駅前地区市街地再開発組合で、当社はこの再開発組合の権利者および参加組合員として参画している。

計画概要は、商業施設、公益施設、住宅が一体となった複合開発で、地上29階・地下1階建てのSouth棟(住宅棟)とNorth棟(商業棟)の2棟で構成される。住宅棟には住宅と住宅共用施設、一部に商業施設を併設。商業棟には商業施設と港北区区民文化センターを設ける。

当社は住宅用と商業用の保留床を取得。住宅用の保留床を分譲タワーマンション「ドレッセタワー新綱島」として2021(令和3)年に販売を開始し、商業用の保留床では賃貸事業を展開することとした。竣工予定は2023年10月。また、北側には東急不動産による高齢者住宅(グランクレール綱島)が同年11月に開業予定である。

図9-3-3 新綱島駅周辺再開発の概要(B地区が市街地再開発事業区域)
出典:ニュースリリース(2021年11月11日)
「新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業」建物外観イメージ

9-3-2-3 「国家戦略住宅整備事業」第1号、横浜駅きた西口鶴屋地区の再開発事業

横浜駅きた西口鶴屋地区は、2016(平成28)年8月に開催された第12回東京圏国家戦略特別区域会議において、全国で初めて、住宅容積率の緩和を活用した国家戦略住宅整備事業として、内閣総理大臣に認定を受けた。

この事業は横浜駅きた西口鶴屋地区市街地再開発組合が主体となって推進しており、当社は権利者および参加組合員として参画している。

国家戦略特区としての利点を活用し、日本有数のターミナル駅である横浜駅の至近に、サービスアパートメント、多言語対応のメディカルモールやコンシェルジュサービス、子育て支援機能、グローバル企業誘致に貢献する充実した生活環境の整備を進めている。

2021(令和3)年10月には施設名称が「THE YOKOHAMA FRONT」に決定。この内、総戸数459戸の分譲住宅(物件名「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」)については、参加組合員である相鉄不動産と当社が、2022年に販売を開始した。施設建物の竣工予定は2024年である。

「横浜駅きた西口鶴屋地区第一種市街地再開発事業」建物外観イメージ

9-3-2-4 「横浜市旧市庁舎街区活用事業」に参加

横浜市の市庁舎が関内(横浜市中区港町)から馬車道駅前(横浜市中区港町)に移転することに伴い、2019(平成31)年1月、旧市庁舎跡地の活用事業者の公募が行われた。当社は三井不動産を代表企業とする8社で構成した企業コンソーシアム「KANNAI8」に参画。2019(令和元)年9月、同コンソーシアムが事業予定者に決定し、2022年7月に着工した。

本事業は、「MINATO-MACHI LIVE(みなとまち ライブ)」をコンセプトとし、「新旧融合」を特色に、旧市庁舎行政棟を保存・活用して横浜の文化を継承し、格式ある景観を形成する。また、次世代の横浜を象徴するエンターテインメント&イノベーションの拠点となり、新たな感動とにぎわいの源泉となる街を創造する。2026年春にグランドオープン予定である。

東急100年史トップへ