トップコミットメント

新中期3か年経営計画(2021年ー2023年度)「変革」

事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元

東急株式会社
取締役社長

新中期経営計画を策定し始めた2020年は、コロナ禍により最もダメージを受けている時期でした。先が見通せない中で新しい計画を立てるのは容易ではありませんでしたが、まずは痛んでいる事業の立て直しをすることに注力し、第一の目標を初年度である2021年度の黒字化といたしました。これは、長期安定的な経営を志向する上場企業である以上、赤字決算を連続させないという経営の強い意思表示です。

新中期経営計画のテーマは『変革』としました。コロナ禍発生からしばらく時間が経ち、新常態として直面する課題や工夫すべき点が徐々に明らかになってきました。それらを踏まえ、事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元に取り組んでいます。
「捲土重来(けんどちょうらい)」の想いで今回の危機をチャンスととらえ、新たな成長に向けた転換点にしてまいります。

各セグメントの事業戦略については、財務健全性の維持だけでなく、ESGやDX(デジタルトランスフォーメーション)の要素を取り入れ、新たなライフスタイルやワークスタイルに適合する領域を伸ばすよう、メリハリをつけて進めてまいります。

中期3か年計画

2030年に向けた価値創造

個性ある魅力的な街を連ねてエリア価値を最大化する

2019年に、2030年までの経営スタンスおよびエリア戦略・事業戦略などを長期経営構想として取りまとめました。私たちは事業を通じた社会課題の解決をDNAとして引き継ぎ、お客さまの暮らしに貢献する生活総合産業として、永続的に東急線沿線をはじめとしたエリア価値を向上させるため、時代の変化に合わせさまざまな事業領域に進出し、顧客支持を獲得してまいりました。

新常態においては、週5日都心まで通勤しなくとも、近隣へのショートトリップで活き活きと過ごせるような、テレワークと移動を合わせたライフスタイルが浸透するものと考えます。そのため、私たちが目指すのは、居住地域の近くで「職住遊」が完結できる街づくりであり、そのうえで沿線全体を俯瞰してみると、個性のある街が連なることで沿線自体の価値が向上するというのが理想的ではないかと考えます。必要機能がそろっていても、どこに行っても同じような印象の街を目指せば良いということではなく、その土地ごとの色や特徴を付加していくということです。沿線には都市と自然が共存する二子玉川や緑豊かな住宅街で次世代郊外まちづくりに取り組むたまプラーザ、駅周辺に公園と商業施設が一体で整備された南町田など、いくつも東急が開発してきた魅力的な街が生まれており、そうした拠点間が、ストレスフリーなモビリティ(交通)で直接つながると、生活者の移動パターンも変化していくと思います。

また、新たな成長機会として、人々のライフスタイルを支えるデジタルのプラットフォームを組み合わせた街づくりを進めるべく、2021年10月より各事業分野のサービス提供のデジタル化を一元的に進める専門部署を新設します。これにより、従来当社グループの特徴であったリアルでの顧客接点に加え、デジタルを活用した潜在ニーズを取り込んでいくことで、次世代の自律分散型の街づくりを目指します。

魅力的な街を生み出していくにあたり、一つの拠点・エリアで各事業が密接に関わり合っていることも当社の特徴です。前述の二子玉川では、駅を起点として、隣接区域においてショッピングセンターやオフィスを賃貸し、連結子会社がスーパーマーケット事業やホテル事業を営み、加えてタワーマンションも分譲しています。再開発以前は、ショッピングが中心の街であったところが、オフィスワーカーや家族連れなど、多様な人々が訪れる街へと変貌しました。このように、各事業が連携・協同することで新たなニーズを開拓し、これまでにない付加価値を提供することを実践しています。
さらに、当社グループだけでは解決しきれない部分については、積極的に他社提携も進めています。例えば2023年に竣工・開業予定の新宿歌舞伎町一丁目地区再開発プロジェクトでは、劇場、ライブホール運営のパートナーであるソニー・ミュージックエンタテインメントと連携し、施設内のホテル、シネマだけにとどまらず、街の皆様とともに新宿歌舞伎町エリア全体から、世界中の人々に向けて魅力あるエンターテインメントを発信していきます。

長期経営構想

サステナブル経営に対する思い

―「美しい時代へ」―

当社は間もなく、2022年に創業100周年を迎えようとしています。この先を展望したときに、次の100年は地球環境が維持できるのか疑問視されるのが現状です。
そのため当社としては、社会課題や環境問題に対して真正面から取り組むことにより、初めて次の100年や豊かさについて語る資格があると考えています。持続可能な企業を目指すことに変わりはありませんが、その前に持続可能な社会があるという前提を実現する必要があります。そのため、環境に係るサステナブル重要テーマを低炭素から脱炭素に変え、CO2排出量ゼロの目標を掲げました。気候変動への適応についても、私たちは都市インフラを支える事業をしていますから、長期的予測を踏まえた災害対策など物理的な対応はもとより、事業機会となりかつ社会の行動変容を促すために何ができるかも考えていかなければなりません。

また、事業者だけが利益を得て、地域社会が犠牲になるようなまちづくりでは事業は継続できません。一時的には収益性が落ちても、真に沿線の皆様のためになる先行施策が「肥やし」となって、いずれ自分たちに返ってくる、という経験をしながら、当社はこの地で100年に亘り事業を行ってきました。先人が築き上げてきた「安全・安心」「信頼」といった無形資産を守り、今後さらに磨きをかけ、次につなげていくという行動が、「当社の成長」と「街のサステナビリティ向上」の両輪がうまく作用することにつながる、当社の「長期循環型ビジネスモデル」そのものなのです。

図らずも新型コロナウイルス感染症拡大という予測困難なパンデミックに見舞われましたが、当社グループは都市インフラを支える企業として、事業を継続する責務があり、鉄道やバス、スーパーマーケット、シニア施設、学童・未就学児保育、病院などといったリアルの現場で働く職員、すなわちエッセンシャルワーカーで成り立っています。緊急事態宣言がたびたび発令されるなど、感染リスクのある中で顧客接点の最前線で職務を全うしている従業員を思うと、感謝の念に堪えません。従業員の安全確保を事業継続の大前提として、感染症対策やワクチンの職域接種の実施など働く環境整備に最大限に配慮しています。

当社事業の根幹である「安全・安心」を全ての事業活動において遂行することで、企業価値および私たちのブランド価値、お客さまが東急ブランドに寄せる「信頼」を守り続けます。それを一番の土台としながら、沿線の皆さまをはじめとするお客さまに共感いただけるサービスを提供し続けることで、表面的な美しさでなく、「東急グループの商品・サービスを利用して心地よかった」と心から思っていただけるまちづくりをしてまいります。そのために東急は、改めて「美しい時代へ」のスタートラインに立ち、『変革』を進めてまいりますのでこれからの私たちにご期待ください。

サステナブル経営への取り組み