田園都市株式会社を源流として、当社（現・東急株式会社）の前身にあたる目黒蒲田電鉄が1922年に設立された。順次、鉄道路線網を拡大、バス事業・百貨店業へ参画、そしていわゆる「大東急」の成立ののち、終戦を迎える。

終戦後の混乱や「大東急」の再編成を経て、当社は鉄道、バスの輸送力増強、渋谷での商業施設の建設を進めた。「東急多摩田園都市」開発にも着手する一方、観光を軸としたホテル業や地方への進出を進めた。

五島慶太の死後、五島昇を中心に結束した当社は、田園都市線の開通や日比谷線との直通運転を開始、多摩田園都市では開発を進めた。東京ヒルトンホテルや東急百貨店本店の開業や航空事業への進出など、事業分野の拡大を進めていった。

1970年代前半は、鉄軌道事業と不動産事業が外部環境の変化により大きく収益が落ち込み、経営環境が悪化した。しかし、新玉川線の開通、東急インや商業施設等の拡充、地方開発や航空事業の再建などが奏功し、1970年代後半にはこの苦境を脱していく。

田園都市線が全線開通し住宅開発の山を越えた当社は、生活関連事業に本腰を据えた。鉄道では混雑緩和のための大規模改良工事がスタート、さらにバブル経済を迎えリゾート・海外事業を中心に事業展開が加速した。

五島昇亡き後、その遺志を継いだ大規模なアクションプランを発表したが、バブル崩壊を引き金とするグループ全体の経営悪化を受けて方針転換した。鉄道の大規模改良工事や渋谷などの開発事業は推進する一方、海外事業を中心に一部で撤退へ踏みきるなど、大きな転換点となった。

東急グループはこの時期、存亡の危機と言っても過言ではない状況にあった。金融危機と会計制度変更に対し、当社は「選択と集中」による財務健全化を急ぎ、グループ会社・事業の再編成を進めて危機を脱した。渋谷では２大プロジェクトが完成、その後渋谷を中心とした沿線へ経営資源を集中させていく。

グループの危機を脱した当社は、成長路線を歩み出した。沿線へ事業集中を続け、渋谷では「100年に1度」の開発に着手。東横線渋谷駅地下化により相互直通運転の一大ネットワークが誕生した。また、将来の人口動態を踏まえた新規事業の展開を始めた。

当社は中長期視点で成長を描くサステナブルな経営を掲げ、2019年9月「東急株式会社」に商号を変更し、事業持株会社となった。渋谷や南町田、新宿などでの開発、鉄軌道の安全対策を着実に推進。「世界が憧れる街づくり」を標榜し、感染症拡大などの社会変容に対応しながら新規事業育成や外部連携を促し、創立100周年をふまえた次世代の持続的な成長の実現を目指していく。