第8章 第7節 第2項 東急ブランドの醸成に向けて

8-7-2-1 顧客へ訴えるブランドマネジメント活動へ

2000(平成12)年の東急グループ経営方針で掲げた「東急グループマネジメントの整備」については、2003年にブランドマネジメント委員会を立ち上げて以降、ブランド価値の向上に向けた諸活動やブランド防衛活動などを推進した。つねに新しい視点で生活品質を提案し、ひとり一人の生活価値を高めることで、東急グループが魅力ある企業グループであることを伝え、「東急」ブランドを守り育てるという意味である。まずは広く惹きつける目的で2003年から2004年にかけてキャッチなフレーズの15秒CMを制作・放映するなど、各種取り組みを着実に進めていった。

CMのワンカット

この時期の新たな取り組みとしてスタートしたのが2007年からの「とうきゅうキッズプログラム」である。これは、小学生を対象とした体験型イベントで、親子で一緒に職業経験や施設見学、ものづくりなどのプログラムにチャレンジするものである。電車運転士の職業経験やケーキ作り、科学実験や文化体験など、グループ各社・各法人が企画したプログラムを通じてグループへの理解を深めることを目的としており、2019(令和元)年には全29プログラムを実施した(新型コロナウイルス感染症拡大の2020年からはオンライン視聴の形式で実施)。また、子どもやシニアに向けたプロモーションとして「Tokyu Child Partners」(2011年~)、「TOKYU SENIOR PARTNERS」(2014年~)を開始するなどした。

とうきゅうキッズプログラム 東急バスによる「でっかいバスの運転士になろう!」の様子(2019年)

また、渋谷ヒカリエ、二子玉川ライズなど大型物件の開業、さらには「100年に一度」の渋谷再開発が進むなか、大きな事業を通じて各社の活動が顧客に浸透し、東急ブランド醸成との相乗効果を生む取り組みも始めた。渋谷では2013年から「SHIBUYA de バレンタイン」や「SHIBUYA de クリアランス」などの企画をグループ外企業などとも協力しながら行ったほか、2006年から開催されている「渋谷音楽祭」をはじめ、イベントへの協賛や会場提供などの協力を通じて、国内外から渋谷への注目度を高めて来街者を増やす取り組みを進めた。

そして、音楽やスポーツイベントの開催など従前からの活動の継続にも取り組み、とくに「東急レディスゴルフ」は、グループが運営する全国のゴルフ場を会場に、女性ゴルファーにゴルフを気軽に楽しんでいただきながら、グループへの親しみを深めていただくことを目的に1992年の開始から現在も続いており、毎年約3万名が参加する恒例行事となった。

第31回東急レディスゴルフメインビジュアル(2022年)

ブランド防衛活動は、グループ経営方針策定の2000年前後から継続して取り組んだことである。グループとまったく関係ない第三者が「東急」や「109」の名称を併記した店舗名などを許可なく呼称し、事業を展開するケースが実態としてあったことから、当社はこうした者に対し名称の使用停止を求め解決を見るに至った。

8-7-2-2 自然災害における東急グループ、東急会の支援活動

一方、近年国内外で増加・拡大する自然災害を受けたグループや東急会の支援活動にも取り組んだ。

第6章で述べた阪神・淡路大震災の活動に続き、2005年には、新潟県中越地震(2004年10月)を受けた新潟県観光キャンペーンの実施、スマトラ島沖地震(2004年12月)を受けたチャリティコンサートの開催、東日本大震災(2011年3月)の際には例年開催のコンサートを「被災地支援コンサート」として目的を変えて開催するなどした。

また、東急会においても「子供たちに笑顔を!」プロジェクトとして、東日本大震災での被災地の小学校を回り子どもたちにプロの料理人の食事を提供・交流するなどの企画を、当社、東急ホテルズ、東急バス、東急ストア、東急エージェンシーの5社の有志と東北東急会が2011年から6年間にわたり継続して実施したことをはじめ、さまざまな支援活動を実施した。

「子供たちに笑顔を!」プロジェクト

そして、東急グループとしての活動のみならずグループ各社・東急会における個々のブランド醸成活動を促進させる一助とするため、2008年度より表彰制度「東急グループ ブランド賞」(2018年度からは環境活動に関する表彰と統合して東急グループ環境・社会貢献賞表彰となる)を創設。上述の「子供たちに笑顔を!」プロジェクトも含めさまざまな活動が表彰された。

表8-7-2 「東急グループ ブランド賞」表彰一覧
出典:2022年7月25日ニュースレター「第4回東急グループ環境・社会貢献賞表彰を実施」

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