第8章 第3節 第4項 永田町プロジェクト(東急キャピトルタワー)の進展

8-3-4-1 動き出した「永田町二丁目計画」

当社と東急ホテルズは、2005(平成17)年8月、キャピトル東急ホテルの営業を2006年11月末で終了し、その跡地にホテル、オフィスなどからなる高層複合ビルを建設する「永田町二丁目計画」を推進することを発表した。

この周辺では、1991年5月に地権者らが「開発協議会協定書」を締結し、再開発計画が検討されていた。1993年4月に「永田町二丁目地区再開発計画」の都市計画決定が告示された。この計画は、業務用途地区(A地区)、宗教関連地区(C地区の日枝神社)、ホテル用途地区(B地区)からなり、当社が進める「永田町二丁目計画」は、B地区にあたる。

B地区については、1994年11月に地権者などの間で、都市計画決定後10年前後をめどに着工することが確認された。先行してA地区の山王パークタワーが2000年1月に竣工、2月に開業した。

図8-3-3 1993年に都市計画決定された「永田町二丁目地区」地区計画
出典:千代田区資料「地区計画図書一覧 永田町二丁目地区」
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4355/04nagatachou.pdf

B地区については、当初は土地建物の所有者である東急ホテルチェーンが主体となって協議を進め、1993年の都市計画決定により容積率が従前の500%から910%に大幅に増え、ホテル用途限定となった。その後、地元千代田区が定住人口の増大を要望していたことや事業性確保の観点から、ホテル用途のほかに業務用途や住居用途を加える計画変更が検討された。

この都市計画変更などの協議や調整は、東急ホテルチェーンから事業主体の地位(今回該当するキャピトル東急ホテルをはじめ、第7章で述べた東急ホテルチェーンへ統合する前の当社や東急ホテルチェーンがホテル用途として保有・管理していた一部資産)を継承したティー・エイチ・プロパティーズから当社が業務受託し、都市開発部門が中心となって進めた。2005年3月に建物用途をホテル・業務・住居とする都市計画変更が決定され、同年5月に「永田町二丁目計画」発表に至ったのである。

建物は、地上29階・地下4階建て、高さ130mで、複合用途とし、高層部の18〜29階をホテル客室、14〜15階および1〜4階をホテル関連施設(宴会場など)、4〜13階をオフィス、16〜17階を住宅とすることとなった。

2007年3月には当社がティー・エイチ・プロパティーズから土地建物を取得して事業主体となり、ホテル部分は再編後の東急ホテルズに賃貸し、住宅とオフィスは一般向けに賃貸することとした。

キャピトル東急ホテルの解体後、2008年3月、高層複合ビルの建設に着手することとなった。

8-3-4-2 「ザ・キャピトルホテル 東急」を核とする「東急キャピトルタワー」が竣工

永田町二丁目の同地は、北大路魯山人ゆかりの高級料亭「星ヶ岡茶寮(星岡茶寮とも呼ばれる)」があったところで、戦後に東急グループが一帯の土地を購入して、高級中華料理店「星ヶ岡茶寮」を営業、その後東京ヒルトンホテルを建設した場所である。その後、東京ヒルトンホテルはキャピトル東急ホテルに名称変更され、東急グループのフラッグシップホテルとして営業を継続してきた。日本の政治の中心地に近いという特殊な立地で、当社および東急グループの所有する都心の所有地としては最大規模の土地である。当社はおもてなしの心をこの地に再現すると共に、高度利用することで、収益基盤の確立や資産ポートフォリオの強化につなげることとした。

高層複合ビルを「東急キャピトルタワー」と命名。東急キャピトルタワーは、隣接する日枝神社の緑と一体化した庭園や散策路を設けるなど、都心の一等地にありながら、豊かな自然を取り入れた設計とした。デザインアーキテクトに建築家の隈研吾、ランドスケープアーキテクトに宮城俊作を起用、モダンデザインをベースとしながらも「和」の本質を追求した。

キーテナントのホテルは、名称を「ザ・キャピトルホテル 東急」とし、東急ホテルズの新たなフラッグシップとなるラグジュアリーホテルと位置づけた。客室251室のすべてで45㎡以上のゆったり寛げる広さを確保。五つのレストラン&バー、五つの宴会場、20mのインドアプールを備えたフィットネスクラブ、トリートメントサロンなどが設けられた。またオフィスフロアは、眼下の緑や東京を見渡せる眺望に加えて、高いセキュリティ性を確保し、機能性と快適性を併せ持つビジネス環境を形成した。東急キャピトルタワーは2010(平成22)年7月に竣工、ザ・キャピトルホテル 東急は同年10月に開業した。

東急キャピトルタワーと日枝神社
「ザ・キャピトルホテル 東急」の客室

東急キャピトルタワーの緑を保全する取り組みについては、日枝神社の丘から連なる建物低層部において大規模な屋上緑化を実施し、神社の杜から建物1階エントランスにかけて立体的な緑地群を創出した。樹種の選定、植栽にあたっては、周辺地域の自然環境調査をもとに、地域の生態系に配慮した。また神社とつながる散策路を設け、一般来街者に開放した。こうした取り組みが評価され、2013年10月、公益財団法人都市緑化機構が主催する「第12回屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール」の屋上緑化部門において、最上位の国土交通大臣賞を受賞した。

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