
今回は、鉄道の廃材・遺構というキーワードで、東急線にまつわる4つの商業施設をご紹介します。古いものを壊したり取り払ったりして全く新しいものを作るのではなく、過去の遺構をデザインのエッセンスとして残すことで、その物語を継承。鉄道の記憶の継承とまちの魅力の向上は、まさに東急の得意とするところです。
「あの頃」の様子を織り交ぜたノスタルジックな雰囲気が、昭和・平成レトロの大流行もあいまって、さらに格好良く見えます。この記事で紹介する施設を普段から利用している方もそうでない方も、こんな逸話があるなんて!という発見にきっと出会えるはずです。
トレインチ自由が丘

「トレインチ自由が丘」は、大井町線の自由が丘検車区に建設された商業施設。緑豊かな屋外空間を楽しむ、開放感あふれるオープンモールです。
電車の車庫跡地に建設されたこと、車庫廃止後も残された留置線に隣接していることが、施設名称「トレインチ」=トレインの家(おうち)の由来。
「自然と過ごす、まちの“あいま”で」をコンセプトに2022年11月大幅リニューアルされ、単なるショッピングモールから、ワークスペースやラウンジを併設した「屋外滞在型」の複合施設へと進化。ガタンゴトンと通り過ぎる大井町線の電車の音をBGMに、くつろぎの時間や仕事の時間を過ごせる空間です。

8500系車両の記憶
かつてこの地にあった「自由が丘検車区」は1966年に廃止され、検車区廃止後は「自由が丘車庫」として大井町線の車両が留置されていました。このような経緯を踏まえたことで、2006年のオープン時より、敷地内では留置線の廃レールやまくら木があちこちに活用されています。

2022年リニューアルオープン時には、新たに田園都市線8500系車両の部材などの鉄道廃材を活用。この8500系車両は1975年に開発され、東急最多の400両(10両編成×40編成)が製造された車両です。1976年には「鉄道友の会ローレル賞」を受賞。8500系車両は大井町線、田園都市線、東横線で使用されており、2023年に惜しまれながらも定期運行が終了しました。47年もの長きにわたって愛された造形には、見覚えがある方も多いことでしょう。


「トレインチ自由が丘」は、大井町線沿い・九品仏川緑道沿いに位置しており、開放感あふれる立地が特徴です。建物は2階建て、まくら木を加工したデッキ、豊かな植栽など、のんびりとしたランドスケープで現在も電車が間近に見られる場所。
初期の計画策定にあたっては、女性の来街が多い自由が丘の特性に合わせ、女性中心の検討チームを設け、そこで出た意見を環境計画やテナント構成に反映させたそうです。また、周辺環境の向上を目的とした約750台もの駐輪場を設置。おしゃれなショップが集まり、自由が丘らしさと、まちの回遊性のアップに寄与する施設です。
レストラン、雑貨店、グローサリーなど個性豊かなショップのほか、カフェ・オフィス・レンタルスタジオを併設したラウンジなどがあります。季節の移ろいとともに多様な表情を見せる緑豊かな小道と、プラットフォームを彷彿とする建物の風情が魅力。ストリートマルシェや、展示会などの屋外イベントも注目の駅近スポットです!
<トレインチ自由が丘>
・住所:東京都目黒区自由が丘2-13-1および東京都世田谷区奥沢5-42-3
・アクセス:東横線・大井町線「自由が丘駅」(南口)より徒歩約2分
※営業時間はショップごとに異なります
https://www.trainchi.tokyu-tmd.com/
https://www.instagram.com/trainchi_jiyugaoka/
<関連記事>トレインチ自由が丘では鉄道の廃材を再利用しています!
LOG ROAD DAIKANYAMA

東横線代官山駅より徒歩約4分、JR山手線・東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約9分。
「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」は、東横線の地下化により生じた地上部分、全長220メートルの線路跡地の商業施設です。細長い敷地形状を意識したランドスケープが個性的な、代官山の散策ルートになっています。
商業施設は、コテージのような5つの棟で構成。1~2階建てで圧迫感がなく、木材が多く使用されていて、洗練された別荘地のようです。デッキを踏む足音も軽やか。植栽計画が緻密なのか、とても自然な緑が豊富で、いつ歩いても四季が感じられます。
空が抜けていつつビルもある景色は、とても代官山らしい雰囲気。電車が走行する場所としての“線路”からの変身ぶりに驚かされます。

エリアの新たな回遊スポット
ログハウスの“ログ”、とレイルロード(線路)の“ロード”から“LOG ROAD”と名付けられた、この施設。
地上時代の東横線の線路で使われていたまくら木などの廃材が散策路の足元やベンチ、植栽の土留めなどポイントに使われており、ロゴマークの12本のラインは、線路をイメージしています。まっすぐな散策路も線路を思い起こさせ、鉄道廃材というよりも土地の記憶を呼び起こすことそのものが魅力の場所です。施設の真下(地下)を東横線が走っているのもワクワクするポイント。


代官山駅と渋谷・恵比寿方面を行き来する、おしゃれな散策路となった線路跡地。オープン当初から営業するキリンビールのクラフトビール専門店「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO」を筆頭に話題のショップが並び、また不定期に開催される「LOG ROAD MARKET」やお祭りイベント、イルミネーションなども見どころ。居心地の良い環境が整えられており、デートの回遊スポットや休憩地点にもぴったりです。
<LOG ROAD DAIKANYAMA>
・住所:東京都渋谷区代官山町13-1
・アクセス:東横線「代官山駅」より徒歩約4分
https://www.instagram.com/logroaddaikanyama
<関連記事>LOG ROAD DAIKANYAMA|都心にありながら緑溢れる、“集い・憩い・刺激”のある商業空間
渋谷ストリーム

国道246号線を挟んで、“駅の向こう側”だった渋谷の南エリアを一気に中心街へと引き上げたのが、ここ「渋谷ストリーム」。かつての東横線渋谷駅のホームと線路跡地およびその周辺地区を再開発し、商業施設、ホテル(SHIBUYA STREAM HOTEL)、ホール、オフィスなどがある、地上35階建ての複合施設として生まれ変わりました。また、渋谷川沿いには遊歩道「渋谷リバーストリート」が整備されています。
東横線渋谷駅は、東京メトロ副都心線との相互直通運転開始に伴い、2013年3月16日に地上から地下へと移設されました。利便性も向上しましたが、ちょっとカーブしたホームや目玉壁、かまぼこ屋根がなつかしく、今も記憶に残っているという方は多いのではないでしょうか。


魅惑の“鉄道遺構”散策
「渋谷ストリーム」には、旧東横線の歴史がいろいろな場所に残されています。鉄道の歴史が大切にされていることがわかる演出です。外せないのは、「渋谷スクランブルスクエア」とつながる「国道246 号横断デッキ」。実はこのデッキ、旧東横線の高架橋が再利用されています。
ここに、目玉壁とかまぼこ屋根を再構築。床の一部には旧東横線をイメージした線路のレールが埋め込まれています。電車が走っていたところをなぞって歩いていると、なんだか青春を思い起こす感じ(笑)。また軌道に沿って数字が書いてあるのですが、これは支柱の管理番号です。旧渋谷駅が起点「01」ですね。

「渋谷リバーストリート」は、地上を走っていた東横線の線路跡を利用した恵比寿方面につづく約600メートルの遊歩道です。渋谷川に沿って「渋谷ストリーム」脇の稲荷橋からはじまり、金王橋・八幡橋・徒歩橋・並木橋・新並木橋と6つもの橋を通過します。
2つめの橋である金王橋では、生い茂る緑の中に旧東横線のレールが隠れており、その後も歩道ではちょくちょくレール跡が辿れます。八幡橋では武骨な高架橋が残され、並木橋には旧並木橋駅のホーム跡、新並木橋にも橋脚跡がつづきます。橋脚跡には支柱の管理番号があり、旧渋谷駅を起点にところどころ抜けつつも散策とともに数字が増えていくのが楽しいです。
遺構を再利用したオブジェやベンチが味わい深い、潤いある散歩道です。



<渋谷ストリーム>
・住所:東京都渋谷区渋谷3-21-3
・アクセス:東横線・田園都市線、半蔵門線・副都心線「渋谷駅」(C2出口)直結
山手線、埼京線・湘南新宿ライン「渋谷駅」(新南口)直結
・施設情報:事務所、店舗、ホテル、ホール、広場、駐車場等
https://shibuyastream.jp
<関連記事>旧東横線の「線路跡」を辿って。「渋谷リバーストリート」を歩いてみた
PARK COFFEE

ターミナル駅である大井町は、東急にとって大井町線の重点エリア。複数路線が通り、空港も近く、住宅やオフィスが混在と、あらゆる人が行き交うまちです。「PARK COFFEE」は大井町駅からすぐ、2021年10月にオープンした、コミュニティカフェ。
店名には、“公園のように、大井町を訪れる誰もが気軽に立ち寄る場所となり、この場所でのであいが新たな発見や人との繋がり、街のコミュニティを創出していく”、という思いが込められています。天気の良い日には外のベンチでひと休みするのも、気持ちが良さそうです。
「PARK COFFEE」ではオリジナルブレンドをはじめとするスペシャルティグレードのコーヒーを提供。三軒茶屋の「OBUSCURA COFFEE」監修のもとスタートしましたが、2024年より自由が丘に自家焙煎所「JIYUGAOKA ROASTERY」を構え、今では2つのロースタリ―のスペシャルティコーヒーを扱っています。豆の販売も浅煎り~深煎りまで9種類以上(200グラム:1,650円~/税込)。個性豊かなコーヒーはどれも味わい深い仕上がりで、香りにつられて入店してしまいそうです。スタッフに相談しながらお好みのスペシャリティコーヒーを見つけてみてください。

日常に、コーヒーの香りとSDGsを
「PARK COFFEE」の立て看板やカウンター下、ベンチの座面の木材は、池上駅の木造旧駅舎の廃材が使われています。ペンキの色も元のまま。田園都市線車両の座席の一部や手すり、網棚なども内装として活用し、なんとカフェスタッフのエプロンは鉄道の技術服リメイクだそう。まさに“エモい”アイテムがたっぷり!


また、カフェに併設されたコミュニティスペースは、日常的に通え、情報が入り、敷居の高さを感じない場所。さまざまなイベントを実施しており、フードロス削減など社会課題をテーマとしたイベントや、手作りワークショップなどを通じてSDGsに取り組んでいます。“仕事と育児の両立座談会”など、地域やコミュニティの応援企画もあり、一貫してSDGsに取り組みつつ、楽しめる空間です。


<PARK COFFEE>
・アクセス:大井町線「大井町駅」より徒歩約2分
・住所:東京都品川区大井1-8-3
・TEL:03-6754-4286
・営業時間:月~金8:00~20:00、土・日・祝 10:00~18:00
・施設情報:全席コンセント有、Free Wi-Fi有※混雑時、1時間程度のご利用をお願いしており、お声がけさせていただく場合がございます
・定休日なし
https://www.parkcoffee-oimachi.com
https://www.instagram.com/parkcoffee_ooimachi
<関連記事>手ぶら×顔認証でコーヒーが飲める!大井町・PARK COFFEEで「手ぶらでコーヒーチケット」を体験
“鉄道の記憶”が伝えるノスタルジー
鉄道ファン、昭和・平成レトロ好き、さらにはなつかしさを知るはずのない世代までも魅了してしまう鉄道廃材や遺構。あらためて感心したのはその“タフさ”でした!毎日多くのお客さまの移動を支えつづけてこられたのは、座席や網棚、まくら木やレールなどのおかげ。錆びたレールや朽ちたまくら木など、東急の鉄道廃材はノスタルジーとともにその“記憶”をいまに伝えているのです。
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取材・文:haruta kana(東急公式サイト編集部)
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