「サプライズがあるまち、蒲田」今日もトングでカチカチと〜蒲田編〜
Urban Story Lab.
2026/7/14

パン屋さんに入ったときにフワッと香る、甘くて香ばしい幸せな匂い。高揚感に包まれながら、たくさんのパンを前に「どのパンにしようかな」と、トングを持つ手もカチカチと踊る。
エッセイストの藤岡みなみさんが東急線沿線の一駅を歩き、パン屋さんを巡るこの企画。
6回目の舞台は蒲田。街歩きの中で感じた出会いや、話題のパン屋さん「トーチドットベーカリー蒲田本店」で感じたときめき、味わいをレポートしていきます。
藤岡みなみ
1988年生まれの文筆家。ラジオパーソナリティとしても10年以上活動するほか、ドキュメンタリー映画のプロデューサーなども務める。時間SFと縄文時代が好きで、読書や遺跡巡りって現実にある時間旅行では? と思い、2019年にタイムトラベル専門書店utoutoを開始。時間をテーマにしたイベントや書籍なども制作している。著書にエッセイ集『パンダのうんこはいい匂い』『ふやすミニマリスト』『時間旅行者の日記』などがある。学生時代パン屋さんでアルバイトをしていた。
Twitter(X):https://x.com/fujiokaminami
Instagram:https://www.instagram.com/fujiokaminami/
--
慌ただしい日々が続いているせいか、調子が狂っていつもの私じゃないみたい。
そんなときは散歩で自分を取り戻そう。
蒲田で降りた瞬間、なんだか愉快なことが起こりそうな予感。


南口から出ると、手作り感のある花壇に出迎えられた。
花の向こうには交通安全宣言。お散歩は安全第一ですね。


花壇に気を取られていたらなんだ、足下からミストが噴射?
見たことない注意書きでおもろい。罠?
駅を背にずんずんまっすぐ歩いていこう。


すぐにのどかな感じになりました。
生活感がよい。蒲田。
駅前の賑わいもいいけれど、まちがすっぴんを見せてくれる瞬間も好き。

カラフルな「とまれ」。
たまには立ち止まることも大事だと、蒲田が言っている。
目的地のベーカリーに行く前に、直感に従って寄り道しよう。
わ、わ、なんかすごい公園があるんですけど!

ドーン!
小学校の校庭2つ分くらいありそうな敷地に、タイヤでできた遊具がたくさん。
タイヤの国に迷い込んでしまった。

見上げると大迫力のゴジラ。

団地の平和を守るマンもいる。
人生の「一度にタイヤを見た数」が更新されたかも。


テンション上がらざるを得ない。
ここに来たら大人でも「わー!」って言っちゃうから、次は誰かを連れてきたいな。

蒲田って意外性のある友達のよう。
「え!なにそれ!」っていつも驚かせてくれる子みたいな。
駅側に少しだけ戻って、目指していた「トーチドットベーカリー」へ。

マンションの1階の大きなお店。
生き生きと植えられたグリーンの向こうにはテラス席もある。


陳列台、厨房、カフェスペースのある広い店内。
高低差のある棚に並べられたパンたちが「私を選んで!」と話しかけてくる。



うわ〜〜〜選べないよ〜!
心の声に耳を澄ます......今私が食べたいパンはどれか。
甘いのか、しょっぱいのか、サクサクか、ふわふわか……。
最も気になる2つを厳選。


せっかくだから今日はお店で食べていこう。
気持ちよさそうな外の席に決定。お供はアイスティー。
その前に、気になるものがあったんだよな……。


店内に設置された、自由に使えるトースター。
買ったパンを好みに合わせて温められる。
これはうれしい!もちろん使います。

いちごとキウイが載った「季節替りのデニッシュ」は、香ばしいケーキみたい。
いい香りのデニッシュ生地にクリームたっぷりで、一口で疲れが吹き飛ぶ。
味が読めないから買った「茎わかめとわさびマヨネーズ」。
これがめちゃくちゃおいしい。ゴマが茎わかめとパンの仲をとりもってる。
ゴマだ!茎わかめだ!わさびだ!と順に風味がやってきて、複雑で飽きない。

お店の看板メニューだと教えてもらった食パンを購入して帰ります。
明日の朝のお楽しみ。
パンを買って帰るって、うれしい未来を持って帰るみたいな感じだ。

駅までまっすぐ戻ると、かわいいものを発見。
あれは観覧車?
飾りなのか、本当に乗れるやつなのか。
行きは背中を向けて歩いていたから気づかなかった。


近づくと駅隣接の東急プラザ蒲田の上に「かまたえん」なる施設が!
有名らしいのに全然知らなかった。
導かれるように屋上に向かう。

なんと……楽園があるではないか……。
懐かしい感じがする。
いくつかの遊具とステージもある。
広々としていて席もあるし、ここでパンを食べるのもよさそう。



遠くから見えたあの観覧車に実際に乗れる!
都内唯一の屋上観覧車らしい。なんと初代は1968年に設置。
乗りたい乗りたい。
吸い込まれるように乗車。


あ、ちょっと待って。
一人きりで観覧車に乗るの初めてだった。
高所恐怖症なんだった。
何も考えずにノリで乗っちゃった。


結構高い。揺れる。
蒲田が一望できるけどそんなことより怖い。
高いところが得意な人は最高に気持ちよさそう。
私は震えています。
今日こんな気持ちになると思ってなかった。
パンを買いに来ただけなのに。
サプライズをくれるまちだわ……蒲田。

タイヤ公園で遊んで、おいしいパンを買い、かまたえんで観覧車に乗る。
これかなり最強のコースです。千円以下でできちゃうし。
想定外だらけの散歩で、今日という一日を楽しむ気持ちを取り戻せた。
ありがとう蒲田。

散歩の余韻で目覚めた翌朝、トーチドットベーカリーの自慢の食パンを食べる。
ちょっとこれは……おいしすぎる。
本当のもちもちってこういうことか。
これパンなの?もちなの?もうわからないってくらいもちもち。
食パンは断然トースト派だったけれど、これは焼かないよさがある。
絶対また買いに行く!
最後まで意外な表情を見せてくれた蒲田でした。
元気がない時はぜひ蒲田へ。
<取材協力>
トーチドットベーカリー 蒲田本店
・住所:東京都大田区西六郷一丁目2-14
・電話番号:03-6424-5929
・営業時間:8:00~20:00(完売次第閉店)※土日祝日は18:30閉店
・定休日:毎週水曜(祝日の場合は翌木曜)
--
文・写真/藤岡みなみ
編集/ヒャクマンボルト
掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。
Urban Story Lab.
まちのいいところって、正面からだと見えづらかったりする。だから、ちょっとだけナナメ視点がいい。ワクワクや発見に満ちた、東急線沿線の“まちのストーリー”を紡ぎます。








