第7章 第4節 第5項 REIT事業のスタート

7-4-5-1 REIT事業の検討

2000(平成12)年4月に発表した「東急グループ経営方針」において、当社は「東急グループ成長戦略の推進による事業の活性化」を実行施策の一つとし、そのなかで不動産投資信託(REIT)事業の検討を開始した。

不動産投資信託(REIT=Real Estate Investment Trust)は不動産証券化の一つで、その仕組みは、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、ホテル、物流施設などの不動産を購入し、運用によって得られる賃貸収入や物件の入れ替えなどによる譲渡益から運用報酬を差し引いて、投資家へ配当するというものである。1960年代に米国で始まり、日本でも自己所有によらない不動産ビジネスモデルとして、1990年前後から三井不動産をはじめとした業界大手が中心となって、研究されていた。

当社も、他人資本を取り込み、その資本を新たに開発に再投資し、開発した物件をREITに拠出する、という循環を繰り返すことで、東急線沿線の開発促進、付加価値向上につながる新しいビジネスモデルになると、注目していた。2000年11月に、投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)の改正で日本でもREIT事業が解禁になったことから、当社は東急不動産と、事業化に向けて準備を進め、東急グループの中心的な事業に育て、海外投資家からも資金を集めてREIT事業のリーダー的存在になることをめざした。そのために、2001年6月、不動産投資信託事業として世界有数であった豪州の不動産会社、レンドリース・コーポレーション(以下、レンドリース社)と提携し、併せて、資産の運用会社、東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント株式会社を当社60%、東急不動産40%の出資で設立した。

2001年9月には日本における市場「J-REIT」が開設され、早速三井不動産などが設立した日本ビルファンド投資法人と三菱地所などが設立したジャパンリアルエステイト投資法人が、東京証券取引所に上場した。当社と東急不動産、レンドリース社は、3社でREIT事業に参入することを検討してきたが、上場方針に関する考え方の違いがあったことから、提携期間満了に合わせ、東急側2社でJ-REIT上場をめざすこととした。

7-4-5-2 東急リアル・エステート投資法人の上場

2003(平成15)年9月に東急リアル・エステート投資法人(TOKYU REIT)が東京証券取引所に上場し、東急グループのREIT事業がスタートした。事業スタートにあたっては利益相反対策として、そのルールを明確化すると共に、第三者によるチェックや情報開示の透明性を徹底した。投資対象は、用途をオフィス、商業施設の物件に限定し、地域は東急線沿線と東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)を中心とした。これは、グループが価値向上を図っている東急線沿線と、成長が見込まれる都心で競争力のある物件のみに投資するという意図で、日本初の地域限定REITであった。上場時の物件は東急不動産と共同開発した世田谷ビジネススクエア、QFRONT(キューフロント)、東急鷺沼ビル、当社本社(東急南平台町ビル)など11物件であった。

REIT事業は、グループ各社が所有する物件をREITに拠出することにより資金を得て、財務健全性を維持すると共に、その資金を新たな開発に再投資することで開発が早く進められることも大きな意義であった。また物件管理などの業務をグループ会社が請け負い収入を上げるという、グループの持続的成長を下支えする役割も果たしていく。中期2か年経営計画で掲げた不動産事業の構造転換にも資するものとして期待された。

図7-4-3 東急リアル・エステート投資法人のスキーム
出典:第135期中間報告 株主通信(2003年12月)
図7-4-4 REITを活用した開発の循環イメージ
出典:東急リアル・エステート投資法人WEBサイト「東急(株)との協働体制」
https://www.tokyu-reit.co.jp/tre/collaboration
※図中のスポンサーとは、当社と東急不動産のこと

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