第7章 第4節 第3項 商業施設の拡充

7-4-3-1 南町田駅前に「グランベリーモール」を開業

南町田駅(現、南町田グランベリーパーク駅)の南側に広がる一帯は、1975(昭和50)年に土地区画整理事業を終えた南町田第一地区内に位置するエリアである。第4章でも触れたように同地区は、1961年以降、当社が先行して土地を買収してきたところで、土地区画整理事業の竣工後に換地・保留地合わせて約8万7000㎡が当社社有地となった。「商業地域」として用途地域の指定を受けたことで、大規模な商業施設の開発が可能になった。町田市にも「南町田を町田駅周辺に次ぐ第二の中心地に発展させたい」という意向があった。この社有地の活用については、たびたび検討がなされてきたものの、駅前に東急ストアが開業した以外では、駐車場、グラウンド、住宅展示場などの暫定利用にとどまっていた。

こうしたなか、若手社員の発案によりショッピングモールの建設が提案された。ショッピングモールの特徴は、一つの街とも呼べるほどの広さにある。米国の郊外ではフリーウェイ沿いの広大な敷地に低層の建物が並んだ商業施設がアウトレットモール、ライフスタイルモールなどとして人気を集めており、モール内をそぞろ歩きしているだけでも楽しめ、一日を過ごせる「時間消費型」の商業施設とも称されていた。東名高速道路横浜町田インターチェンジや国道16号、国道246号に隣接する南町田の広大な敷地は、鉄道駅から近く、日本国内ではまだ珍しかったショッピングモールを具現化するには最適な条件を備えていたのである。

だが、この提案が社内ですんなり通ることはなかった。食料品や日用品以外の消費は都心方面でするのが一般的と考えられており、米国で成功したショッピングモールが日本で受け入れられるかどうかは未知数であったからである。また地区内の居住者は少なく、日常的な通行量も乏しい立地でもあった。ただ従来のような暫定利用よりも利益を創出する可能性があるのも確かで、10年間という期間限定条件でのショッピングモール建設にゴーサインが出され、民都機構に一部の底地を売却して、のちに買い戻すという手法も活用した。1997(平成9)年8月、都市開発事業部内に南町田プロジェクト推進部が発足した。

10年間の社有地活用とし、短期間での資金回収を図るため、従来の当社の商業施設とは一線を画した低投資・軽装備の平屋建て中心の商業施設を計画。これと並行して日本初出店となる米国アウトドアショップなどのテナントを誘致し、総店舗数79店を有する新しいタイプのショッピングセンターとして、「グランベリーモール」が2000年4月に開業した。

開業時の「グランベリーモール」(2000年)
図7-4-2 グランベリーモール施設配置図
出典:「東急からのお知らせ HOT ほっと TOKYU」2000年6月号

新しいトレンドに敏感なファミリー層や若年層などの関心は予想以上に高く、グランベリーモールは、大盛況の幕開けとなった。開業から3日間で25万人が来場、2000年のゴールデンウィーク期間中には65万人がこの地を訪れ、その後も緩やかに来場者数は伸び続けた。

グランベリーモールの開業は、田園都市線の都心方面からの輸送人員の増加にも一役買った。従来、南町田駅は各駅停車だけが停まる駅で、開業前の1999年度の一日乗降人員は1万3361人であったが、開業4年後の2004年度には2万6802人と倍増した。このような駅利用者の急増に応えて2000年7月から、人出が多くなる夏休み、年末年始の土休日などに急行列車を臨時停車することとし、2001年からはゴールデンウィークにも臨時停車するようになった。来場者の利便を図るのはもちろん、マイカー利用の増加に伴う周辺道路の混雑緩和を図ることも目的とした判断であった。

7-4-3-2 「青葉台東急スクエア」の開業

多摩田園都市の第3ブロックの中心地と位置づけた青葉台駅の周辺では、1990年代に商業施設や文化施設の整備が進んだ。

その後ビル事業部では、早期に宅地化が進んでいた青葉台にふさわしい商業施設のあり方を探求するなかで、施設全体を「青葉台東急スクエア」としてリニューアルすることを計画。

リニューアルにあたっては、百貨店を中心とする商業施設から、個性あふれるテナントを誘致し、常に鮮度が高く提案性を備えた専門店型ショッピングセンターに業態変更することを決定。2000(平成12)年5月から順次改装を進めた。

生活者から高い支持を得ていた雑貨店やカフェ、化粧品店、ファストファッションをはじめとする多様な衣料品店、感度の高い食料品専門店、大型家電量販店やビジネスマン向けの紳士服店、ヨーロピアンスタイルの家具店、さまざまな国の料理が楽しめる新業態レストラン、また「カルチャー」をコンセプトにした店として、東急ハンズの新業態店、新感覚の事務用品店、書店、カルチャースクール「東急セミナーBE」など、多種多様な全65のテナントで構成。2000年11月に第1期が開業、2001年3月に第2期が開業し、2002年3月にグランドオープンを迎えた。

青葉台東急スクエア

一連のリニューアルを機に、運営は当社100%子会社の東急マーチャンダイジング アンド マネージメントに委託した。同社は八王子東急スクエアやたまプラーザ東急ショッピングセンターで実績を重ね、渋谷マークシティのマークシティモール、グランベリーモールの一部でも運営業務を行っており、商業施設運営で成長を遂げていく。

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