徹底調査!多くの偉人が愛した「洗足池公園」は歴史スポットの宝庫だった

東急公式サイト編集部

2025/6/7

こんにちは。東急公式サイト編集部です。

今回訪れるのは、池としては23区内屈指の広さをほこり、日蓮上人や源頼朝、勝海舟といった歴史に名を刻んだ人物と深いかかわりがある「洗足池公園」。知る人ぞ知る歴史スポットを巡りながら、洗足池公園とその周辺の魅力をお伝えします。

日蓮上人ゆかりの「洗足池」と、歴史を伝える松がある「御松庵 妙福寺」

「洗足池」は周辺の湧き水や雨水などをせきとめた池で、かつては「千束郷の大池」と呼ばれていました。「洗足池」と呼ばれるようになったのは、鎌倉時代、日蓮宗の宗祖として知られる僧侶・日蓮上人が常陸国に向かう途中で立ち寄り、 “池で足を洗った”伝承が後年伝わったことからだそうです。その折に日蓮上人が袈裟をかけた伝承のある「袈裟懸(掛)(けさがけ)の松」があるのが「御松庵 妙福寺」です。

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「御松庵 妙福寺」の山門。境内には見事な竹林があります。
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境内はとても静か。竹林の効果で身も心もリラックスできます。
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境内には日蓮上人の銅像もあります。

奥に進むと、しめ縄が張られたご霊木の松の木を発見。これが日蓮上人の「袈裟懸(掛)の松」伝承地です。ただし、残念ながら日蓮上人の松は古松だったため現存しておらず、世代を超えて受け継がれた松の木が当時の面影を残しています。

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ご霊木の松の木。こんなに成長するのかと驚くほど大きな松です。
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松の横には、「御袈裟懸松」と書かれた碑もあります。
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江戸時代から景勝地として有名な洗足池は、歌川広重の浮世絵『名所江戸百景』にも登場します。右中央に描かれているのが「袈裟懸(掛)の松」とされています。(勝海舟記念館内にて撮影)
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現在の洗足池と「御松庵 妙福寺」が所在する緑の樹林地(右手)。池の水面に緑が映りこんで幻想的です。

美しい竹林と緑に包まれた「御松庵 妙福寺」。日蓮上人ゆかりの松がある境内は、すごくゆったりとした時間が流れていました。寺院内を散策した後は、池のボートに乗って、寺院を外から眺めてみるのもおすすめです。

■洗足池公園
住所 東京都大田区南千束2-14-5
TEL 03-3726-4320(大田区地域基盤整備第三課)
営業時間 24時間
定休日 なし
URL https://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/park/senzokuike.html

■御松庵 妙福寺
住所 東京都大田区南千束2-2-6
TEL 03-3729-2338
営業時間 5時~17時    
定休日 なし
URL http://www.tokyonanbushumusho.com/m/mobile_jiin.php?targ_jiin=s_myofukuji

江戸無血開城の功労者「勝海舟」の足跡をたどる「勝海舟記念館」

次のスポットは洗足池駅から徒歩6分ほど、「御松庵 妙福寺」の山門前の道を進んだ先にある「大田区立勝海舟記念館」です。文政6年(1823年)に江戸で生まれた勝海舟は、幕臣として「咸臨丸」で渡米して日本海軍の基礎を築き、慶応4年(1868年)には「江戸無血開城」を実現させました。勝海舟も洗足池にゆかりの深い人物で、新政府軍の本陣が置かれた池上本門寺へ向かう途中に立ち寄った洗足池の風景を気に入り、池のほとりに別荘「洗足軒」を設けました。

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建物は昭和3年(1928年)に竣工。4本の柱が特徴的な外観はネオ・ゴシックスタイルのデザインです。

「大田区立勝海舟記念館」は、図書館機能と講堂での講義を目的とした施設であった旧清明文庫を改修し、2019年に開館しました。1階には4つの展示室とミュージアムショップ、2階には2つの展示室があり、勝海舟ゆかりの品なども多数展示されています。建物自体は補修を繰り返し行っているものの、当時の意匠や建具などは保存状態も良く、昭和初期の建築様式の美しさを現代に伝える貴重な歴史的建造物にもなっています。

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1920~1930年にアメリカやヨーロッパで人気を博したアールデコが得意とした扉や床のモザイクタイル。壁のタイルは京都の伝統工芸「泰山タイル」との相似性があります。

「勝海舟記念館」の1階では、勝海舟が訪れた日本の各地をタッチパネル付きのモニターで紹介する「全国行脚」という展示室や、実際の資料をもとに勝海舟の一生をたどれる「海舟クロニクル」などがあります。入館料は一般300円、小中学生100円です(いずれも税込)。

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「海舟クロニクル」には勝海舟の誕生から亡くなるまでの年表もあります。勝海舟が生涯を通して、いかに多くの功績を遺した人物なのかが分かります。
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着用していた裃(かみしも)が復元されていました。勝海舟は身長が156センチメートルほどの小柄な人物だったそうです。
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3面シアターが備わる「時の部屋」では、数多の困難を乗り越え「咸臨丸」で渡米した際の様子を迫力満点の映像で楽しめます。
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常設展の奥には、毎回、初披露となる貴重な資料などを集めた「企画展示室」もあります。定期的に内容が変わるので、勝海舟ファンなら1,000円(税込)の年間パスポート購入もおすすめです。

続いて、建物の2階へ上がると、正面に清明文庫の時代に使われていた「貴賓室」を復元した展示室があります。漆喰で塗り固めた天井や木材を組み合わせた寄せ木張りの床など、当時の意匠を垣間見られる貴重な空間です。

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復元された貴賓室の中央には勝海舟の胸像も設置されています。
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2階のメインとなる展示室はかなり広く、清明文庫時代の講壇も復元されています。モニターでは「洗足池の四季」「若き日の海舟」など、3作品が上映されています。
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勝海舟の別荘であった「洗足軒」のジオラマも見応えがありました。
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2階の渡り廊下から建物の外側をじっくり見学。外壁や窓ガラスなどは状態も良く、当時の建築意匠を間近で見られます。
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見学が終わったらミュージアムショップへ。勝海舟にちなんだ“勝茶”や“無血”開城にかけた絆創膏などが販売されています。ちなみに、ミュージアムショップは入場料なしで入れます。
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オリジナルの印章を押せる「勝海舟コットンバッグ」は、唯一無二のお土産になりそう。

■大田区立勝海舟記念館
住所 東京都大田区南千束2-3-1    
TEL 03-6425-7608
営業時間 10時~18時 (入場は17時30分まで)
定休日 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、臨時休館日
URL https://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/hakubutsukan/katsu_kinenkan/index.html

勝海舟夫妻が眠る墓所には、同志・西郷隆盛をしのんだ碑も

「勝海舟記念館」の近くには、勝海舟夫妻が眠る墓所もあります。記念館で彼の生涯や功績をしっかり学んだ後は、勝海舟のお墓も訪問してみましょう。勝海舟は、明治32年(1899年)に数え年77歳でこの世を去り、彼の遺言によってこの地に葬られたそうです。

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勝海舟夫妻のお墓は勝海舟記念館のちょうど裏手にあります。
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標識に沿ってまっすぐ進むと、勝海舟の墓入口に到着します。左側には洗足池公園の桜広場があります。
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墓所から勝海舟記念館を望む。墓所内には立派な松の木もありました。

勝海舟は生前にこの地に墓を建てることを決めた際に、墓の形状まで指示したそうです。その6年後に勝海舟の妻である民子(たみこ)も逝去し、一度別の墓地に埋葬されたそうですが、改葬によって現在の地に移されたとのこと。

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墓所では勝海舟夫妻が隣り合って静かに眠っています。

また、墓所内には勝海舟が「江戸無血開城」以来、親交を深めた新政府側の要人・西郷隆盛の死を悼み、彼の詩とその筆跡を残すために自費で建てたという碑もあります。

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西郷隆盛の3回忌に合わせて建てた西郷南洲 (隆盛)留魂詩(りゅうこんし)碑。西郷隆盛が配流中に詠んだ詩が刻まれています。

勝海舟とともに「江戸無血開城」を実現させた西郷隆盛ですが、明治10年(1877年)に自らが兵を率いた西南戦争に敗北し、非業の死を遂げました。幕府側と新政府側という立場をこえて、歴史的な和平交渉を成功させた盟友だった勝海舟と西郷隆盛。この碑をじっくり見ていると、同志を失った勝海舟の悲しみの深さがひしひしと伝わってきます。

■勝海舟夫妻墓所
住所 東京都大田区南千束2-14-5 洗足池公園内
URL https://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/rekishi/yukigaya_senzoku/katsukaishuu_bosho.html

源頼朝の愛馬・池月の伝説が残る「千束八幡神社」

勝海舟のお墓を訪問したら、再び「洗足池公園」に戻り、今回ご紹介する最後の歴史スポットへ。ここまで紹介したスポットは洗足池の東側にあるのですが、もうひとつは池の西側にあります。せっかくなので、池の周囲を散策しながら向かいましょう。

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洗足池公園は面積が約77,000平方メートルで、池1周で約1.2キロメートルもある広大な公園です。取材日には多くの愛犬家が散歩に訪れていました。
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池のほとりにある「洗足池弁財天(厳島神社)」には、水や芸能の神として知られる市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)が祀られています。後ろに桜山があり、春は花見客でにぎわいます。

ここは、鎌倉幕府を開いた源頼朝にゆかりがある「千束八幡神社」です。1180年に源氏再興のため挙兵した源頼朝は、石橋山の戦いに敗れた後、鎌倉へ向かう途中に、洗足池で宿営したと言われています。そして、ちょうどこの神社があるあたりで戦勝祈願をしたということから、「千束八幡神社」は“旗挙げ八幡”とも呼ばれています。

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「千束八幡神社」は860年に勧請され、千束郷の総鎮守として長い歴史があります。
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「千束八幡神社」の社殿は昭和17年(1942年)の建立。戦火を免れて現存しています。

また、「千束八幡神社」には源頼朝の愛馬・池月の伝説も語り継がれています。源頼朝が洗足池で宿営した際に、突如、目の前に青い毛並みに白い斑点のある野馬が現れ、天地をゆらすほどの声で嘶いたそう。その野馬を一目で気に入った源頼朝は、池に映る月影のような馬の文様から「池月」と名付けたそうです。

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社殿横には、青い体に白い斑点がある鮮やかな「池月」も描かれています。手前の狛犬は江戸時代後期につくられた貴重な歴史遺産です。
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開運招福・家内安全の絵馬にも名馬「池月」が描かれています。
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「千束八幡神社」の近くに設置されている名馬「池月之像」。
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近くにかかる橋も「池月橋」といいます。毎年5月には、笛や囃子による「春宵の響」が開催されます。

日蓮上人ゆかりの松から源頼朝にゆかりのある神社に愛馬・池月、さらには幕末から明治までを駆け抜けた勝海舟や西郷隆盛など、周りに歴史スポットがぎゅっと詰まった「洗足池公園」。その景観の美しさは時代を越えて、時の浮世絵師の心を動かし、多くの偉人に愛されてきました。そんな歴史に思いを馳せながら、のんびりと散策できるスポットです。

■千束八幡神社
住所 東京都大田区南千束2-23-10
TEL 03-3727-7584
営業時間 9時〜16時
定休日 なし
URL http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/ota/5395/

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取材・文:TAKEKO(東急公式サイト編集部)

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