
2026年3月5日(木)、長津田検車区構内において「運転事故総合訓練」を実施しました。これは、鉄道事故発生時にお客さまの安全確保や復旧作業などを確実に遂行するため、東急電鉄では最大規模の訓練です。
2025年度は、運輸、車両、電気、工務など各部門の関係者、総勢約350名が参加。ワンマン運転を行う東急新横浜線および東横線(元住吉電車区)内で発生した事故を想定し、二部制にて実施。少人数オペレーションでのお客さま救護や、多様な技術を結集しながらの速やかな復旧を目指しました。
【第一部】「非常用渡り板」を使用した避難救護訓練

想定事故の概要
- 東急新横浜線下り列車が新綱島駅を発車後、走行中前方の架線(電線)付近で青い光を確認。当該箇所を通過した際に、大きな音が発生したために非常ブレーキにて停止。その後、停電が発生。駅間での長時間停車が見込まれる。
- 上り線の架線状態に異常は見られないため、お客さま救護のために新横浜駅に停車中の上り列車を「救援列車」とし、下り当該列車に横付けして「非常用渡り板」を設置してお客さまの救護を行う。
- 乗客は総勢約100名を想定。車内に負傷者はなし。空調切れによる体調不良のお客さまが3名。車いすご利用お客さま、ベビーカーご利用のお客さま、白杖ご利用のお客さまが各1名

訓練は、当該列車の運転士が架線付近に青い光を発見し、停電により列車が停止する時点から開始しました。
運転士は、非常事態の発生を司令所に速やかに連絡。お客さまには「危険なので絶対に車外に出ないようお願いします」と車内放送で伝えます。その後司令所から、「停電の原因が不明なので長時間の停車が見込まれる。新横浜駅に停車中の上り列車を救援列車として当該列車に横付けさせるので、お客さま救護にあたるよう」との指示がありました。

現場に救援列車が到着すると、運転士は応援に駆けつけた駅係員や乗務員、技術系係員(電力、信通、保線、車両部門)と連携し、即座に救護に取り掛かるため、非常用渡り板を設置。さらに、落下防止用に腰の高さにロープを張ったうえで乗務員と技術系係員が補助者として非常用渡り板の周りに立ち、お客さまが安全に避難できるようサポートしました。

なお、今回の訓練に先立ち、非常用渡り板を使った避難誘導自体の耐久性も予め検証しました。
第一部訓練では約100名のお客さま役の方を安全かつ迅速に救護することができ、非常用渡り板を使った避難誘導の有用性を確認することができました。
【第二部】脱線を想定した復旧訓練
想定事故の概要
- 東横線綱島駅を発車した当該列車が鶴見川橋梁を通過後、下り線軌道(線路)内に陥没箇所を確認。当該箇所を通過した際に脱線し、停止した。
- 前日12時に大雨警報が発令されていたが、当日7:00には解除され、11:00には大雨注意報も解除されている(総雨量295mm)。このような状況から、陥没は大雨によるものと思われる。
前日の大雨により、線路に陥没箇所あり
訓練は、陥没箇所の修復が完了し、車両の復旧作業に着手する時点から開始しました。連携して復旧に取り組んだのは車両部、電気部、工務部です。
車両部は「リライバー(簡易脱線復旧機材)」を使用した脱線復旧訓練を行いました。リライバーとは、脱線した車両前方のレールに装着し、チルホール(手動牽引機)と組み合わせ、ジャッキアップせずに、車両をレール上に迅速に誘導するスロープ型装置です。


一般的に脱線復旧には油圧ジャッキを用いることが多いのですが、これには十分な作業スペースや安定した足場を必要とします。今回は前日の大雨で足場が不安定との想定であったため、リライバーを使った脱線復旧を試みました。
係員は車両とチルホールを素早くワイヤーでつなぎ、チルホールのレバーを繰り返し引いて車両を誘引。最後に複数の係員で手押しすることで、想定時間内に車両をレール上に戻すことができました。
架線や軌道の修復も実施

電気部は、脱線で損傷した架線の復旧にあたります。係員は該当列車上に登り、車両に電力を送るためのトロリ線や、トロリ線を吊るすためのハンガイヤーの破損部を修復。その作業と並行して、線路沿いに設置された沿線電話をつなぐ通信ケーブルの断線も修復しました。

続いて工務部が、変位した軌道(線路)の修復と損傷したマクラギ交換を行います。まずは線路幅を維持するための締結装置を取り付け、破損した想定のマクラギ周りの砕石(バラスト)をシャベルで素早くかき出します。次に新しいマクラギとレールと犬釘で仮留めし、タイタンパー(振動機)で砕石を突き固めた後、係員全員で軌道の高さや幅のずれを補正する軌道修正も行いました。
最後に検電器により、現地で送電を確認。当該列車が運転再開となり、今回の「運転事故総合訓練」は無事終了となりました。

担当者からのメッセージ
『年に一回行っている「運転事故総合訓練』では、適切なお客さまの避難誘導や技術力の維持・向上を図ることを目的としています。また、部門間の横連携を実践することにも重きを置いており、社員同士が協力し知見を共有する場ともなっております。
今回の訓練で行った、「非常用渡り板を使った救護」と「リライバーを使った車両復旧」は、他社での利用実績はあるものの、当社では実績のないものでした。もしもの時に迅速に対応できるよう、訓練を通して経験をしておくことが重要です。こうした新しい手法や技術を積極的に取り入れながら、今後も研鑽に努めたいと思います。またその一方で、進化だけでなく従来技術の継承や掘り起こしにも力を入れ、緊急時には柔軟に対応できるように備えてまいります。
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