東急沿線クラフトビール愛好会/二子玉川「ふたこビール醸造所」で、日常に寄り添う一杯を味わう
Urban Story Lab.
2026/6/2

クラフトビールには、つくり手のこだわりや土地の魅力がぎゅっと詰まっています。味や香りはもちろん、名前や原材料、醸造の背景まで、その土地ならではの個性が感じられるのが魅力です。「東急沿線クラフトビール愛好会」では、東急線沿線のブルワリーを訪ねながら、ビールをきっかけに、まちの文化や歴史、人の思いにふれていきます。
第5弾は、二子玉川駅にある「ふたこビール醸造所」をレポートします。「ふたこビール醸造所」は、店内に醸造設備を備えたブルワリー。できたてのクラフトビールを、その場で味わえるのが魅力です。カフェのように過ごせる空気があり、初めてでもすっと馴染めますよ。
自然と洗練が溶け合うまち、二子玉川

東京都・世田谷区に位置する二子玉川。

多摩川のゆったりとした流れと、洗練された街並みが共存するこのまちは、自然と都市の心地よいバランスが魅力です。

駅前のにぎわいから少し離れた路地「柳小路」へ。今回訪ねたのは、このビルの2階にある一軒。

階段をのぼったその先に、ビール好きが集う隠れ家があります。
まるでダイニングのようにくつろげる店内

その名も、「ふたこビール醸造所」。田園都市線・二子玉川駅から徒歩5分ほどの場所に位置しています。

大きな木のテーブルを囲むこの空間は、窓から入る光と、ほどよく落とした照明が混ざり合い、まるでダイニングのように自然と長居したくなるような心地よさ。カウンターで注がれる一杯を、思い思いの席で楽しめます。

店内の奥には、銅色の醸造タンクがずらり。ビールが仕込まれている様子を見ながら、できたての一杯を楽しめるのは、醸造所併設ならではの醍醐味です。

ラインナップは、定番5種を軸に、期間限定のビールやコラボレーションビールを加えた常時約8種類(※取材時)。訪れるたびに新しい味と出会えるのも、この場所の楽しみのひとつ。

喉が乾いてきたので、早速ビールを注文します!黒板の前でひとしきり悩み、今回は「3種飲み比べセット」(1,600円・税込)をチョイス。「フタコブラック」(写真左)「フタコエール」(写真中央)「フタコIPA」(写真右)と、個性が異なる3種類です。黒、金、琥珀。色のコントラストも美しい3杯に、心が踊ります。

「フタコブラック」は、コーヒースタウトらしく重厚な見た目ながら、ひと口飲むと印象はやわらか。用賀に本店を構えるスペシャルティコーヒー専門店「Woodberry Coffee」のコーヒー豆を使用し、ローストの香ばしさとほのかなビター感が広がります。まるでアイスコーヒーを飲んだときのような、重たすぎず、すっきりとした後味です。

「フタコエール」は、創業当初からつくられているフラッグシップビール。麦のコクとホップのフルーティーさのバランスが心地よく、苦味は穏やか。じんわりと、「おいしい」が続く一杯です。
「フタコIPA」は、マンゴーやトロピカルフルーツを思わせる香りが印象的。苦味よりも果実感が前に出て、軽やかな余韻が続きます。自然と「もうひと口」を誘う味わいでした。

定番3種の次は、期間限定ビールといきましょう!日本酒酵母を使った吟醸ビール、「こめとむぎ」(Rサイズ1,210円/Lサイズ 1,580円 ・ともに税込 写真はRサイズ)を飲んでみます。

グラスを近づけると、ふわりと立ちのぼるのは日本酒を思わせるやわらかな香り。ひと口含むと、お米由来のほのかな甘みが静かに広がり、どこか和のテイストを感じさせる一杯です。

そんなビールに合わせたおつまみは、「バゲット」(写真左 4切れ 330円・税込)「ガーリックシュリンプ」(写真中央 1,430円・税込 )「季節のポテトサラダ」(写真右 R 660円 S440円 今回はRサイズ・いずれも税込)。

ガーリックシュリンプは、ぷりっと弾力のある海老に、にんにくの香ばしさがしっかりと絡みます。ビールの苦味や香りを引き立てる、絶妙な塩加減です。

ガーリックシュリンプの特製ソースは、ぜひバケットにたっぷり絡めてどうぞ。ビールづくりで出る麦芽粕をアップサイクルし、瀬田醸造所横のパン工房で焼き上げたバケットは、外は香ばしく、中はもっちり。穀物の風味がほんのりと感じられます。

ポテトサラダは、ハーブとヨーグルトを合わせたギリシャ風。爽やかな酸味と軽やかな口当たりが印象的で、ガーリックの余韻をすっと整えてくれます。飲み比べの合間に挟みたくなる、名脇役です。
ビールをきっかけに、人とまちをつなぐ

そんなビールと料理を楽しみながら、改めてふたこビール醸造所について、店長の栗本めぐみさん(以下、栗本さん)に話を伺いました。
ふたこビール醸造所を運営する株式会社ふたこ麦麦公社が動き出したのは、2015年。きっかけは、二子玉川のまちづくりをテーマにしたプレゼンテーション大会でした。

「『この街にあったらいいもの』として、代表がクラフトビールを提案したことが始まりだったんです」

その後、委託醸造やイベントでのクラフトビール販売を経て、2018年にふたこビール醸造所がオープン。客層は30代から50代まで幅広く、クラフトビールに詳しい方だけでなく、「これからいろいろなビールを飲んでみたい」という方も多いそうです。

「だからこそ、接客のときは専門用語に寄りすぎず、できるだけ身近な言葉でお話することを心がけています。『クラフトビールって難しそう』というハードルを下げて、まずは気軽に好きになってもらえたらと思っていて」

その姿勢は、ビールの味づくりにも通じています。
「『ドリンカブル(Drinkable)』という考え方を基本に、ビールをつくっています。香りや個性はしっかり感じられるのに、重たすぎず、飲み疲れない。気づけばもう一口、もう一杯と手が伸びるような味わいを大切にしているんです」

さらに、常連の方に対しても「いつもの一杯」に寄せすぎないのが、ふたこビール醸造所らしさ。
「新しいビールが出たときは、あえてメニューを手渡し、別のスタイルを提案することもあります」
そうしたひと言がきっかけになって、お客さんがこれまで選ばなかったスタイルを試してみたり、「好き」の幅が少しずつ広がっていったり。そんな変化に立ち会えるのも、この場所ならではの面白さなのだとか。


また、ふたこビール醸造所が大切にしているもうひとつの軸が「地域循環」です。世田谷区の農園で育ったブルーベリーや梅を使ったビールをつくり、一般の摘み取りが終わった後に残る果実を活用するなど、無理のないかたちで地域資源を生かしています。
「地域のものを使って、地域で手づくりする。ビールが、そんな流れをつくるきっかけになればいいなと思っています」

開店11周年を迎えた今は、新しいビールのリリースやコラボレーションも積極的に展開。さらに缶での製品化もしており、店舗だけでなく自宅でもその美味しさを楽しめるようになっているとのこと。地域に根ざしながらも、挑戦を続ける姿勢が印象的でした。
「おいしい」クラフトビールの入口が、ここにある

「仕事帰りに軽く立ち寄る」という人もいれば、パソコンを広げて作業をしながら飲む人もいる。クラフトビールのお店でありながら、カフェの延長のように過ごせる間口の広さが、ふたこビール醸造所の魅力だと感じました。
「2階ですし、場所も少しわかりづらいので、最初はちょっと勇気がいるかもしれません。でも、ぜひ気軽に来てほしいです」
そう話す栗本さんの表情は、とてもやわらかでした。
クラフトビールに詳しくなくてもいい。
まずはグラスを傾けて、「おいしい」という気持ちを、まっすぐ受け取ってほしい。
その一杯が、二子玉川のまちでまた、新しいつながりを生み出していきます。
ふたこビール醸造所
・住所:東京都世田谷区玉川3-13-7 柳小路南角2F
・営業時間:11:30〜22:00
・定休日:第4火曜日(臨時休業はSNSにて案内)
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文・インタビュー/高橋まりな
写真/Ban Yutaka
編集/高山諒(ヒャクマンボルト)
掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。
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まちのいいところって、正面からだと見えづらかったりする。だから、ちょっとだけナナメ視点がいい。ワクワクや発見に満ちた、東急線沿線の“まちのストーリー”を紡ぎます。











