日々是緑日

知られざる公園の宝庫、江田駅。地図で緑を探して巡る散策記【日日是緑日】

Urban Story Lab.

2025/6/7

「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」とは、中国の雲門禅師の言葉で「どんな日々もかけがえのない、素晴らしいものである」という意味(諸説あり)。そんな素敵な言葉にならい、都会における「緑のある風景」の素晴らしさをあらためて探し、そして満喫しよう!というのがこちらの企画「日日是緑日」だ。

東京での一人暮らしをはじめて、もうすぐ1年になる。都会の生活には慣れてきたけど、時々ふと地元の緑が恋しくなることがある。窓を開けたら一面の緑......というのが理想的な生活だが、東京で暮らすとなるとそんな生活は難しい。最近の私は慢性的に”緑不足”だ。

そんなとき、なんとなく地図アプリを開いて、緑色のエリアを探してみるのがマイブームになっている。ノープランで街に出て、ただただマップ上にある緑に行ってみるだけの散歩だ。

すると都会には、緑を感じられる場所が意外とあるということに気づく。東急線沿線の駅で緑を探してみることにした。

ほしあさひ
千葉県生まれ。編集者・ライター。日々おだやかな生活を送るためにさまざまな実験を行う。散歩とサイゼリヤとデカい犬が好き。

人生で初めて、江田駅に上陸!

渋谷駅から電車で約30分、田園都市線で上陸したのは「江田駅」。
神奈川県横浜市に位置し、ベッドタウンとして人気の鷺沼駅やあざみ野駅とご近所だ。

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はじめまして、ライターのほしあさひです。江田駅にやってきました!

江田駅は聞き馴染みのない人も多いだろう。

しかし、江田駅を地図で調べると、駅の周辺に数えきれないほど緑がある。つまり、ここは緑の宝庫なのだ!

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駅に降り立って早速、緑と花を見つけた。江田駅周辺は横浜市がおこなう地域緑化計画によって、いたるところに緑が植えられているらしい。

季節は冬。緑が少ない時期ではあるが、その色彩はさまざま。道端のさりげない緑や、公園に行って季節の移ろいを感じたい。さて、知られざる江田駅周辺を探索していこう。

まずは荏田街の南東エリアへ

どこから歩くか少し迷ったが、南東のエリアに公園が密集していたので行ってみる。駅から一番近く、そして面積が大きい「荏田猿田公園」という公園に向かうことにした。 

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どこに行っても、おしみなく緑が植えられていてすごい。
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道端に咲き誇るローズマリー。きれい!

地図上で見える緑を追っていくと、名前に“荏田(えだ)”とついている公園が多い。駅名は“江田”だが、地名になると“荏田”になるとは不思議だ。調べてみると、駅ができた当時は“荏”という字が当用漢字(現在の常用漢字)になかったので、旧名の“江田”を駅名として採用したらしい(諸説あり)。どちらの名称も平等に地域の人から親しまれているという。

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しばらく歩くと、開けた高台の先に大きな公園を発見!

広い芝生が気持ちいい!荏田猿田公園

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駅から徒歩5分程度で到着。暖かくなると芝生も緑に色づきそう。とっても気持ちがいい場所!

東名高速沿いにある公園。かなり広い面積で、強い傾斜を利用した構造が特徴的だ。この公園は歴史好きには有名らしく、大昔はこの辺りに政治の中心を担う役所があった場所なんだそう。

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斜面を利用した長い滑り台が子供たちに人気らしい。

家族連れが何組か遊具で楽しそうに遊んでいる。周りをぐるっとケヤキに囲まれていて、住宅街の中でも自然をしっかり感じられる。しかもとにかく広いから、思いっきり走り回って追いかけっこするのにぴったりな公園だ。 

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服が汚れるとわかっていても、芝生の上で寝ちゃうよな〜。
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寝っ転がると生い茂る木と青空が見えて最高です!

広めのテーブルもある。木漏れ日を感じながらここでランチや読書なんかをしたら最高だろうなぁ。 

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緑に囲まれて読書がはかどる。

駅近でこんなにも解放感のある公園があるとは、恐るべし江田駅......。すでに引っ越したくなってきたぞ!

荏田猿田公園
・住所:神奈川県横浜市青葉区荏田西2-8-1
・アクセス:田園都市線 江田駅より徒歩約8分

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さて、せっかくだし少し散策をしながら他の公園も巡ってみよう。
地図を見ると、荏田第一、第二、第三、第四、第五公園って並んでる。公園の兄弟みたいな感じ? ちょっと気になるから、近くにある第二、第三公園に行ってみることにした。

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高台からは街全体が見渡せる。思わず見惚れてしまう眺めだ。

江田駅のあたりは丘が多いせいか、けっこうアップダウンがある地形。坂道を登っていくと、ふっと視界が開けて、思わず「おお……」って声が出るような景色が広がってる。こういうのがあるから、散策はやめられない。 

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厚木街道の横に流れる小川。街の賑わいと自然が共存しているのが魅力的な街だ。
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コンクリートの隙間から茂る緑。あなた、根性ありすぎ!

街を歩いていると、根性系の緑がいたるところに発見できた。 

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フェンスを突き破って生えてくる草も愛おしい。

子どもたちの遊具の宝庫。荏田第二公園

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自然豊かな園路を歩くと鳥のさえずりが聞こえて和む。

江田駅から厚木街道を東に歩いて10分ほどで「荏田第二公園」に到着。

ブランコや砂場など遊具が豊富で、この日も楽しそうに駆け回って遊ぶ子供たちで溢れていた。遊具広場の下には緑地があり、自然豊か。地元のお祭りが開催されることもあるのだとか。 

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「elephant/ゾウ」と書いてある。ゾウをこの形で切り取るのはあまりにもハイセンスすぎる。
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裏側は「hippopotamus/カバ」。こちらもなかなか独特なデザイン。

楽しげな遊具を見つけたので紹介させてほしい。ぱっと見、どうやって遊ぶのか全然わからなかったが、両サイドに乗ってシーソーみたいに動くようだ。ネットで調べたら、「スイング遊具」という名称らしい。

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懐かしい手遊びから知らないものまである。これはかわいい......!

その隣には、小さな丸いベンチがいくつか並んでいた。よく見ると、座る部分に手遊びや公園でできる外遊びの説明が書いてあって、イラストもすごくかわいい!ちょっと座りながら、遊びのヒントを見つけられるのが素敵。

たまたま隣にいた子供たちが「なべなべ」をやって見せてくれた。この公園に集まる子供たちにとっては、きっと お約束の遊びなんだろう。昔ながらの遊びが、こうやって自然に受け継がれていくのってなんだかいいな。

荏田第二公園
・住所:神奈川県横浜市青葉区荏田町435-5
・アクセス:田園都市線 江田駅より徒歩約10分 

街を一望できる、荏田第三公園

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高台にあるので、荏田町を一望できる。朝の散歩で来たいな!

こちらは高台にある緑に囲まれた公園。木々の間には遊歩道があり、森林浴をしながらのんびり散歩が楽しめる。小さな遊具広場からは荏田町を一望できて、気持ちのいい眺めが広がっている。 

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公園の入り口すぐに、めちゃくちゃデカい丘がある。なんで?
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奥に進むと緑がたくさん。気軽に森林浴ができる。

荏田第三公園
・住所:神奈川県横浜市横浜市青葉区荏田町449-10
・アクセス:田園都市線 江田駅より徒歩約12分 

荏田街北西エリアへ

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さて、せっかくなので北西のエリアも行ってみよう。荏田の街の中心を走る線路に沿って歩いてみる。気持ちのいい道を歩いていると、突然見慣れないものに出会った。 

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あれ、パンダ......??

奥へ行ってみると、小さな小さな公園(?)らしきものが......!!

集合住宅の隙間に、憩いの場がある。これはご近所の人も嬉しいはず。 

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中心にパンダだけが置かれている、独特の空間。

この小さな公園、マップには載っていなかった。こういう場所に偶然巡り合えるのが、散策の醍醐味だなぁと改めて感じた。

穏やかな時間が流れる、小黒公園

荏田北の北端あたりに位置する。閑静な住宅地の奥にふっと現れる緑豊かな公園。

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中は結構広い。小高い丘があり、植栽が綺麗に植えられている。

サクラが見所の公園のようで、サクラで囲まれた原っぱゾーンは春になると大勢の花見客でにぎわうらしい。この日も、子どもたちや家族連れが凧揚げをしたり、思い思いの過ごし方をしていた。なんて穏やかな時間なんだ......! 

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原っぱをみるとピクニックがしたくなる!シートを敷いてみよう。

歩き疲れたので、ここで休憩。お昼ご飯を食べよう。 

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張り切って豪華なピクニックセットをもってきてしまった。お気に入りの人形たちと共にパチリ。

ご飯の後は、編集者とキャッチボールでも遊んでみた。とても広い公園ならではの遊び方。 

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ふたりとも下手だった。

小黒公園
・住所:神奈川県横浜市青葉区荏田北2-19-1
・アクセス:田園都市線 江田駅より徒歩約13分、田園都市線 市が尾駅より徒歩約12分

公園だけじゃない。気軽に古墳を見られる市ケ尾横穴古墳群

今まで散々公園を紹介したけれど、もっとディープな緑スポットもご紹介したい。先ほど紹介した小黒公園から徒歩5分ほどの、市ケ尾横穴古墳群だ。 

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1933年に発見されたのだそう。歴史が深い!

6世紀後半から7世紀後半にかけての古墳時代末期に造られた有力な農民のお墓と考えられているそうだ。1957年には神奈川県史跡に指定され、市ケ尾遺跡公園として整備され保存・公開されている。なんと、貴重な横穴墓を間近に見ることができるのだ。 

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奥に進むと横穴墓が!!まるでジブリの世界みたいだ。

外観からは想像できない迫力に、思わず「すご〜〜!」と声が出た。住宅街の中に古墳があるなんて、なんだか不思議な感じ。

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一部の横穴は中に入れるようになっている。中はシンと静かで、ちょっと怖いかも。

このスポットも緑が豊かで、歩いているだけで心が落ち着く。近所に住んでいたらしょっちゅうお散歩に来ちゃうだろうな。

市ケ尾横穴古墳群
・住所:神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1639-2 市ケ尾遺跡公園
・アクセス:田園都市線 江田駅より徒歩約20分、田園都市線 市が尾駅より徒歩約10分

江田駅、荏田町は緑の宝庫だった

今日は江田駅周辺の緑をたくさん巡ることができた。今まで降りたことがなかった駅だけど、駅から少し歩いてみると広々とした公園がいくつもあって、思っていた以上に緑が豊かだった。

特に、丘の上に広がる景色や、ケヤキに囲まれた広場、子供たちが元気に遊べる遊具のある公園。どこを歩いても、自然を身近に感じられる場所ばかり。都会の喧騒を忘れて心がほっと落ち着いた。

もし緑を感じたくなったら、ぜひ江田駅まで足を運んでみてほしい。

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坂が多いので、映画『君の名は。』に出てきそうな階段がそこかしこにあった。きたれ、江田駅!

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文/ほしあさひ
写真/Ban Yutaka
編集/ヒャクマンボルト

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