【体験レポート】渋谷で自動運転小型EVバスに乗ってみた!東急バスの実証実験から見えた“未来の移動”とは

東急公式サイト編集部

2025/11/25

スクランブル交差点、明治通り、国道246号――。多くの歩行者や車が集まる渋谷のまちの中心で、自動運転バスの走行試験がおこなわれていることをご存知でしょうか。今回、東急公式サイト編集部は、東急バス株式会社(以下、東急バス)が2022年から実施している実証実験に同行。東急バスの担当者 倉橋さんにもお話を伺いながら、実際に自動運転バスに乗って体感した“未来の移動”をレポートします。

※この実証実験では一般の方の乗車はできません。

東急バスによる実証実験のこれまで

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京浜急行バス・東急バス・東急の3社が能見台と虹ヶ丘・すすき野エリアで実施した自動運転の「共同実証実験」で使用した車両(画像提供:東急バス株式会社)

東急バスでは2022年から自動運転技術や遠隔監視の実証実験をおこなっていて、今回はその5回目。はじめは郊外の住宅地(すすき野・虹が丘)、続いて世田谷区の用賀エリア、そして今回の渋谷エリアへと、走行環境の難易度を段階的に上げてきました。

自動運転の実証実験における重要なポイントが「遠隔監視」です。目黒区にある東急バス本社の遠隔コントロールセンターには複数台のモニターが並び、カメラ映像や車両の状態、ルート上の混雑状況などが常時表示されます。非常時にはオペレーターが介入できる体制で、現場の係員と連携しながら安全を確保する仕組みになっています。

慢性的な人手不足など、さまざまな課題を抱えているバス業界。将来的には、「遠隔監視×自動運転」の技術を用いて安全性向上や運転業務の負担軽減を実現することで、その課題を解決することを目指しています。

今回の実証実験の舞台は“超複雑”な渋谷エリア

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今回の走行ルート(画像提供:東急バス株式会社)

2025年9月29日から10月31日にかけて実施された、今回の実証実験。走行ルートは、渋谷フクラスを起点に、渋谷駅前交差点(スクランブル交差点)や明治通り、国道246号、代々木公園周辺を含む、全長約4.1キロメートルのルートです。歩行者が多く横断する場所、合流が複雑なエリアなど、渋谷ならではの変化に富んだ条件がそろっています。

自動運転のプロジェクトを担当する東急バスの倉橋さんによると、「自動運転システムが渋谷エリアのような複雑な走行環境に適応できるかどうかを検証することが、今回の実証実験の最大のねらい」なのだといいます。また、走行環境への適応状況とともに、自動運転バスにおける旅客案内や乗車予約システム、遠隔監視の体制なども検証の対象です。

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自動運転のレベル分け

また、今回の実証実験で用いられているのは、「レベル2」に分類される自動運転です。レベル2では、アクセル・ブレーキ操作、ハンドル操作が部分的に自動化されていて、車線維持や加速・減速といった複数の運転操作をシステムが担います。一方で、運転操作の主体はあくまで運転者。周囲の安全確認や最終判断は常に運転者と係員がおこないます。つまり、バスは自動で走るものの、無人ではないということです。

多数のカメラやセンサー付き!オリジナルのEVバス

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東急バスが開発、東急テクノシステムがEV化を担った「自動運転小型EVバス」

今回使用されるのは、東急バスが開発した「自動運転小型EVバス」。もともとはガソリン車だったトヨタの「ハイエース ワゴン グランドキャビン」を、東急テクノシステムがEVバスに改造しました。

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ヘッドライトの下部にあるLiDARセンサー
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ナンバープレートの上にもセンサーを発見。左右の丸いパーツは給電口で、急速充電なら1時間で約100キロメートルの走行が可能。

まず目に入るのは、車体各所に取り付けられたセンサーやカメラ、マイクなどの機器。フロントバンパー付近のセンサーなどがいわゆる“目”の役割を果たしていて、色や形、歩行者の動きの特徴を捉えたり、周囲の距離や形状を立体的に把握したりするのだそうです。

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ボンネットに取り付けられたカメラでは前方を撮影
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フロントガラス横の集音マイク(中央上)とカメラ(中央下)

合わせて20個弱も取り付けられているカメラとマイクは、基本的に遠隔監視用。遠隔コントロールセンターの担当者が車両の内外の様子を確認したり、係員との会話や乗客へのアナウンスをおこなうときに使用します。

「レベル2」の自動運転を実現するシステム

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助手席には自動運転システムのモニター
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LiDARセンサーによって、バス自身の位置はもちろん、周囲の歩行者や車の位置を正確に把握できる

東急バスの自動運転では、名古屋大学が開発した自動運転ソフトウェア「ADENU(アデニュー)」を導入。システムの一部をカスタマイズして使用しています。

モニターでは、道路が白い点、歩行者や車がオレンジ色の点で表示されます。「バスと観測対象の間に遮蔽物があっても、センサーが遮られていなければ観測可能で、高い精度で位置を表示します」と話す倉橋さん。たしかにこの時も、かなり遠くにいる歩行者や塀の向こうを走る路線バスがしっかりと画面に表示されていました。車外に取り付けられているセンサーの精度の高さが実感できます。

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運転席にある赤・青・黄のプッシュボタン。赤=停止・青=進行・黄=徐行を意味する

先述のとおり、今回の自動運転はレベル2に相当するもの。安全確保や最終判断はあくまで運転者が担いますが、その中で重要な役割を果たすのが、運転席に設置された赤・青・黄のプッシュボタンです。

今回の走行試験は、信号では毎回バスを停止させるプログラムになっているので、青信号の場合は止まらずに走行するよう指示しなければなりません。そのため、運転者が制御するプッシュボタンが設置されています。

また、自動化されているのは、アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作。ただし、運転席の下部には通常の車両と同様にアクセルとブレーキがあり、運転者がブレーキを踏んだ場合には即座に手動運転に切り替わります。

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倉橋さんによる自動運転システム関連の機器類の解説

こうした自動運転のシステムを制御する機器類は、トランク部分に積み込まれています。大型の機器類がたっぷりと積み込まれていると思っていたので、想像以上のコンパクトさに驚きました。

自動運転での営業を実現するために、多数の機器やシステムを備えているこの自動運転小型EVバス。しかし、今回の実証実験の舞台は、普通の自動車で走るだけでも緊張感のある渋谷エリアです。果たして自動運転で問題なく走行できるのか…少しドキドキしながら、実際に乗り込みました。

いよいよ乗車!自動運転で渋谷のまちを走る

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オレンジの点の濃さに、スクランブル交差点周辺の歩行者と車の多さが表れている

さあ、いよいよ出発です。モーター駆動らしい静かで自然な走り出しから、さっそくスクランブル交差点に進入します。歩行者も車も特に多い場所ですが、それらの位置が「ADENU」にしっかりと表示されています。

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停留所と現在地の表示。時速とあわせて、自動運転/手動運転の状態も表示される。
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バスの状態をアナウンスしてくれる

座席前方には乗客向けのモニターとスピーカーが設定されていて、通常のバスのように停留所を表示するほか、「遠隔監視しています」「停車します」「左折/右折します」など、日本語と英語の両方で音声アナウンスも流れてきました。バスがどんな動きをするのか丁寧にアナウンスしてくれるので、安心感につながります。

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車間距離を十分に保って減速・停止する

前方車両との車間距離を保ち、丁寧に減速と停止をするのもこの自動運転バスの特徴です。ただ、急な割り込みや飛び出しを検知した際には、どうしても急ブレーキ気味になってしまうのだそう。たしかに、この実証実験中も2、3度ほどそういった場面に出くわしましたが、倉橋さんによると「ブレーキ操作の精度は、将来的に自動運転バスの実用化を目指すうえで改善したいポイント」とのことです。

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助手席の後ろのモニターで、遠隔コントロールセンターのようすが確認できる

東急バス本社の遠隔コントロールセンターでは、バスのカメラ映像、位置、速度、システム状態がリアルタイムで表示されます。現場の係員との通話が可能で、必要な時には指示や支援をおこないます。万一の時、警察や消防への通報をおこなうのも遠隔コントロールセンターの役割です。

そして、バスはあっという間に出発地点へ戻ってきました。“複雑すぎる”と言っても過言ではない渋谷エリアですが、スムーズで安心感のある運転でした。暮らしの中に自動運転がある未来が近づいていることをたしかに感じます。

自動運転で変わる、“未来の移動”

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自動運転バスのプロジェクトを担当する倉橋さん

最後にあらためて倉橋さんにお話を伺いました。

実用化されれば、バス業界の課題解決や地域の移動手段の拡充につながることから、関係者からの期待を集めている自動運転バス。東急バスでは、早ければ2〜3年後までをめどに実用化したいと考えているそうです。

一方で、「自動運転システムの不具合や事故発生時の対応、乗車予約の仕組み、運行体制・ダイヤの整備など、より一層の改善が必要なポイントもまだまだ多い」と倉橋さん。それでも実証実験は順調に進んでおり、地域の住民の方々からの理解も得られてきているといいます。

「東急線沿線のお客さまの足になれるよう、一刻も早く実用化を実現したい」と話す倉橋さんの表情には、“未来の移動”を担う意気込みが感じられました。

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取材・文:SABO(東急公式サイト編集部)

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