ロマンあふれる遺構や建物をたどる「旧渋谷町水道みち」

東急公式サイト編集部

2026/2/6

今回ご紹介するのは、町営水道の跡である「旧渋谷町水道みち」。

大正時代に旧渋谷町が町民のために建設した設備で、渋谷のインフラであっただけではなく、まちの大きな発展を陰で支えたともいわれます。

双子の給水塔で有名な「駒沢給水所」や送水管トンネル「岡本隧道」、「砧下浄水所」など、大正ロマンが感じられる遺構や施設をたどって歩きます。

水流とは逆に向かうルートを歩いて東京を深掘りする、約4.5キロメートルの道のり。知ればちょっと嬉しくなる、“トリビアまち歩き”です。

ただただ真っすぐな「旧渋谷町水道みち」

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『駒沢給水塔風景資産保存会』作成

忠犬ハチ公も生まれる前の渋谷。旧渋谷町(東京府豊多摩郡渋谷町)は大正時代、急激な人口増加に伴い、水不足が深刻になっていました。そこで大規模な水道工事を計画。

砧下(きぬたしも)浄水所で取水、浄化した水は駒沢給水所まで揚水ポンプの力で高く持ち上げられ、給水所から渋谷までは自然の重力で送水する仕組み。多摩川の水を引き込むために生まれた町営水道です。

水道みちを地図で見てみると、ひたすら真っすぐ。名前のとおり、道路の下に水道水の送水管が敷かれているのですから、なるほどそうですよね…。

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まずは田園都市線桜新町駅から、駒沢給水所へと向かいます
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田園都市線線路の真上を通る都道427号線を東へ進むと、さっそく水道みちが見つかります
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生活道路のようですが、確かに水道みちです

約4.5キロメートルのお手軽コース

歩いたのは駒沢給水所(桜新町駅より徒歩約7分)から砧下浄水所(二子玉川駅より徒歩約24分)までの約4.5キロメートル。

途中には公園やいくつかの遺構もあるとか。ほぼ真っすぐ、という点に気付くだけでも楽しい都内ウォークです。

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スタートの駒沢給水所。南西の角に正門があります
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ゴールの砧下(きぬたしも)浄水所

レトロな駒沢給水所

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「双子のクラウン」給水塔

まずはスタート地点と定めた駒沢給水所へ。田園都市線桜新町駅より徒歩約7分です。

1924年(大正13年)完成の双子の給水塔が目印で、現在は災害時の応急給水槽として利用されています。

設計したのは“日本近代水道の父”と呼ばれる中島鋭治博士です。仙台や名古屋など15を超える自治体の上下水道、八幡製鉄所、東京駅、今では超高層ビルが建ち並ぶ新宿副都心の淀橋浄水場(~1965年)を手掛けたなど、その実績がすごい!

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『駒沢給水塔風景資産保存会』作成

駒沢給水所に2基並んだ鉄筋コンクリート造の給水塔は、内径13.937メートル、高さ22.72メートル。満水にしたときの水面の標高は約64メートルにもなります。

水をいったん高台(駒沢給水所)へ押し上げ、高低差を利用して落とす、という斬新な方法で、多摩川から駒沢給水所を経由し渋谷までの送水を解決したのだそうです。

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アールデコ調の給水塔。おしゃれです

住宅地に突如出現するこの施設。王冠を模した装飾が施され「丘の上のクラウン」「双子のクラウン」とも称される駒沢給水所の給水塔。大正ロマンを感じる美しい意匠を見上げて、先人の偉業に脱帽。外観だけでも一見の価値ありです(保安上、立入禁止で内部の見学はできません)。

なお、せたがや百景に選ばれており、2012年度(平成24年度)、土木学会選奨土木遺産にも認定されています。

<駒沢給水所>
・住所:東京都世田谷区弦巻2-41-5
・アクセス:田園都市線桜新町駅より徒歩約7分
・施設データ:セキュリティ上の理由から一般公開していません
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kouhou/meisho/komazawa

道中の歴史発見!

桜新町から用賀に向かうあたりは、田園都市線が地下を通る「旧玉川通り(世田谷通り)」が水道みちとイコールになります。

江戸時代は大山詣での道として人々が歩き、明治時代には玉川電車が地上を走り、大正後期には水道管が敷設された…いろいろ通る、面白い道の歴史です。

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用賀駅のほど近く、用賀3丁目で地下の田園都市線とはお別れ/東京都世田谷区用賀3-14付近

世田谷通りに寄り添うように分かれるY字路を右手に進み(一方通行なので車は逆走になってしまいます)、住宅地に入ります。「大山道追分」はこの住宅地の只中にあります。

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「大山道追分」を過ぎてすぐ先に「水道みち」の道標を発見。このあたりでスタートから約1.5キロメートルほどでしょうか/東京都世田谷区用賀3-14付近
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眞福寺、無量寺、オーケー新用賀店などを過ぎると、首都高速3号渋谷線に突き当たります。ここは道なりに右へ行くとすぐに高架橋の下をくぐれます。水道みちは続きます
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ここでご注意。つい広くて直角な道を行きそうになりますが、水道みちの“角度”を意識してください。信号の先ではなくマンションの手前の道です
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環状八号線を横切り、住宅地をしばらく行くと急な坂が現れます。東から西に向かっているので下り坂ですが、多摩川から水を流すとなると、上りなので大変な圧力が必要だなと思いました
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岡本隧道公園という“ほぼ緑道”に出ます

水色の三角屋根は「岡本もみじが丘」という東急バスのバス停でした。目の前には世田谷区立岡本公園・世田谷区立岡本静嘉堂緑地のこんもりとした緑。

多摩川が10万年以上をかけて武蔵野台地を削り取ってきた段丘。緑と湧き水をもたらす台地と低地の境目である国分寺崖線の片鱗を見ます。

国分寺崖線の自然を活かした「世田谷区立岡本公園」

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世田谷区立岡本公園の駐車場は無料。レンタサイクル、自動販売機、公衆トイレもそろっていました

今回のまち歩きで、一番の小休憩おすすめスポットが世田谷区立岡本公園。

国分寺崖線の自然をそのままいかした緑地公園で、疲れを癒やす自然が豊富。

また、昭和初期頃の典型的な農家の家屋敷を再現した民家園や岡本八幡神社があり、あわせて訪れるのがおすすめです。世田谷区立岡本公園・世田谷区立岡本静嘉堂緑地の一帯は国分寺崖線の上に位置し、水道みちの中で、駒沢給水所のある場所の次に高台です。

そして、何といってもこの園内には「旧渋谷町水道みち」をたどる中でも見逃せない、岡本隧道があります。

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岡本八幡神社
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神社の石段「男坂」
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勾配の厳しい階段は見下ろすと怖い
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鳥居近くの石燈籠には寄進された氏子のお名前があり、よくクチコミに上がります

今回のまち歩きでは公園の東側、岡本八幡神社の鬱蒼とした森の裏手から入ります。公園の民家園や岡本隧道までは、岡本八幡神社の石段を一気に下ります。ものすごい急坂です。転ばないようご注意くださいね!

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遊びの広場に出ると、岡本隧道の案内があります
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案内のとおり、民家園へ。民家園は開園時間に制限があります。岡本隧道を見学の際にも要注意

<世田谷区立岡本公園>
・住所:東京都世田谷区岡本2-19-1
・開園時間:公園エリア(屋外広場、遊具など)は終日開放

<世田谷区立岡本静嘉堂緑地>
・住所:東京都世田谷区岡本2-23-42
・開園時間:9:30~16:30(平日のみ。土・日・祝日は開園しておりませんので、ご注意ください)
・入園料:無料
・施設データ: 緑地内の静嘉堂文庫美術館は、建物の外観のみご覧いただけます。静嘉堂文庫は、主に大学生以上の研究者向けの和漢古典籍の専門図書館で利用は完全予約制です。詳しくは静嘉堂文庫利用案内をご覧ください。

世田谷のほこる歴史遺産、岡本隧道

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岡本隧道の遺構。石囲いや刻まれた文字に大正ロマンを感じます

「旧渋谷町水道みち」が砧下(きぬたしも)浄水所を出て間もなく横断する、国分寺崖線である岡本の台地。揚水ポンプの負荷を少なくする工夫として造られたのが、台地を貫通する「岡本隧道(おかもとずいどう)」です。

隧道とはトンネルのことです。トンネルは高さ約2メートル、幅約2.5メートル。直径80センチメートルもある送水管が通っていて、その長さは120メートルにもおよびます。

民家園の奥、フェンスの先の石囲いの中にカマボコ型の扉があり、銘板には「岡本隧道」と刻まれています。1923年(大正12年)に竣工した近代水道の建造物。貴重な遺構を実際に見学しましょう。

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民家園に入ってすぐに、左に曲がります
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民家園は、区の有形文化財第1号の旧長崎家住宅主屋、土蔵、椀木門を移築復原し、昭和初期頃の典型的な農家の家屋敷を再現しています
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農耕機具の展示を横目に奥に進むと「岡本隧道」の遺構にたどり着きます
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フェンスに覆われていて、中に入ることはできません

<世田谷区立岡本公園民家園>
・住所:東京都世田谷区岡本2-19-1
・アクセス:田園都市線・大井町線二子玉川駅より徒歩約20分
二子玉川駅より東急バス玉30系統「玉川病院循環」・玉31系統「成城学園前駅」行、「民家園バス停」下車徒歩約1分
・開園時間:9:30~16:30(元日は10:00~15:30)
・入園料:無料
・休園日:月曜日(月曜が祝・休日の場合は、その翌平日)、年末年始(12月28日~12月31日、1月2日~1月4日)
・施設データ:無料駐車場(開園時間内のみ)
https://www.city.setagaya.lg.jp/02059/9012.html

鎌田前耕地緑道と野川水道橋

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岡本公園と丸子川。国分寺崖線が恵んだ水と自然です
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250メートルほどの鎌田前耕地緑道。東西の間には鎌田前耕地公園が整備されています/東京都世田谷区岡本2-12ほか
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緑道の西側
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鎌田前耕地緑道と一般道路が交差する場所にある、地目の鋲(びょう)

岡本公園でひと休みした後、ここからは迷いようのない水道みちです。

遊び場から丸子川にかかる橋を渡ると、水道みちは鎌田前耕地緑道として利用されています。真っすぐな水道みちの上でカーブを描く緑道。草花が美しく整備されており、要所に「水道用地」という鋲(びょう)が打ってあります。

 

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野川水道橋の現在。住宅街の暮らしに密着した道路です。橋を渡ればゴールはすぐそこ。300メートルほどで砧下(きぬたしも)浄水所です/東京都世田谷区鎌田2-20-10
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野川水道橋の中ほどに旧野川水道橋が描かれたプレートがあります。ものすごく太い水道管があったのがわかりますね

緑道が切れ、さらに真っすぐ歩くとほどなく野川水道橋へと差し掛かります。水道橋の名前の由来はそのまま、『水道管のある橋』だから。はじめ野川の川底に埋設されていた水道管ですが、1960年(昭和35年)の改修で地上に出てこの橋に支えられ、2006年(平成18年)の改修でまた川底へ。野川水道橋の名前は、水道みちの歴史の中でも昭和~平成の時代の証明です。

ゴールも大正ロマン。砧下(きぬたしも)浄水所
 

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浄水所正門前
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歴史を伝える風格ある看板

旧渋谷町水道建設時に造られた砧下(きぬたしも)浄水所。今回のまち歩きではゴールですが、水道としてはスタートですね。こちらは現在も東京都水道局の浄水所として現役で稼働。多摩川の伏流水を河川敷の地下から取水しています。

敷地内には渋谷町営水道の歴史的遺産が数多く残っており、駒沢給水所と同じく大正ロマンを感じたい!と思いますが、現在、東京都の水道施設は展示施設のみ見学可となっているようなので、残念ながら内部見学はできません。

まち歩きの最後に、多摩川土手で「とんがり帽子」を発見!

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多摩川の伏流水を取り込む際に、水道管の中で膨張する空気を抜く装置

浄水所を迂回すると多摩川の土手、浄水所正門の反対側あたりに、赤いとんがり帽子のような特徴的な設備を見つけました。これは、取水管空気抜きです。かわいらしいオマケと雄大な景色を眺めながら、まち歩きを振り返り。

先人の活躍や地形、インフラの大切さ。そこに現在の発展した華やかな渋谷を重ね、興味深い“新マップ”が脳内に生まれたのでした。

<砧下浄水所>
・住所:東京都世田谷区鎌田2-4-1
・アクセス:田園都市線・大井町線二子玉川駅より徒歩約24分
・施設データ:セキュリティ上の理由から一般公開していません

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取材・文:haruta kana(東急公式サイト編集部)

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