麺day vol.7

優しいコクに包まれるポタージュ系。長原で「チキポタラーメン」を味わう

Urban Story Lab.

2026/3/3

麺をすする行為はまるで深呼吸のよう。静かに息を吸い、リラックスして麺をすする。そして「ふぅ〜、美味しい」とひと息つく時間が、日常の疲れを和らげ、心に新たな活力をもたらしてくれるのです。
ラーメン、そば、うどんなど、東急線沿線の街角には、疲れた心にそっと寄り添う「麺」のお店が数多くあります。
本企画「麺day」では、そんなリラックスできる麺料理とのひと時をテーマに、東急線沿線の麺にまつわるお店をショートストーリーでご紹介します。

高橋まりな
三度の飯より酒が好きなライター。主戦場は赤提灯酒場。1人でも多くの人と盃を交わすための我が人生。合言葉は「約束はいらない、酒場で会おう」。
X:https://x.com/f_y_takahashi

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心地よい街並みの中で、主人公が訪れる麺のお店と、そこで味わう小さな幸福を皆さんにお届けする「麺day」。第7弾となる舞台は長原駅。ライター・高橋まりなが麺をすすり、想像をふくらませながら文を綴ります!
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クリーム色のスープをひと口。鶏のコクにやさしい丸みが重なり、もちっとした中太麺にスープがとろりと絡みつく。
私の麺day、今日も始まります。

都心のすぐそばで、時間が少しだけゆるむまち

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私が住む長原駅は、時間が少しだけゆっくり流れているまちだ。池上線に揺られれば、およそ10分で五反田駅まで行ける。都心のすぐそばなのに、長原駅に降り立つと空気がゆるりと切り替わるのだ。

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特に好きなのは、駅の改札を出てすぐの長原商店街。個人経営の飲食店やクリーニング屋、薬局などがぽつらぽつらと立ち並ぶ、日常に溶け込んだ通りだ。等身大の「生活」が感じられるので、妙にほっとする。

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夕方になると街灯がともり、シャッターがガラガラと閉まり出すのも、このまちに帰ってきた合図のようで嫌いじゃない。

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今日は、最近通い始めたジム帰り。身体に鞭打った後は、カロリーを気にすることなく思いっきり美味しいご飯が食べたい!そんな気持ちで長原商店街を抜け、中原街道に出る。行き交う車の流れに背中を押されるように、足取りが自然と速くなった。

鶏のコクと、やさしい丸み。もちっと麺に絡むチキポタスープ

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そうして中原街道沿いを2分ほど歩くと、住宅街の一角に見えてくるのが「麺屋チキポタ」だ。「頑張った日のご褒美に、いつか行こう」と決めて以前からチェックしていたラーメン屋さん。まるでポタージュのように濃厚なスープが特徴のラーメンがあると知り、ずっと気になっていた。

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扉を開けると、外の喧騒がすっと遠のき、音楽が心地よく耳に響いた。あたたかな照明が、カウンターをぐるりと照らす。黒を基調にした店内はどこかバーのようでもあり、城の石壁のようでもある。

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待ちきれずに「ラーメン並」(950円 税込)を注文すると、ほどなくして目の前に丼が置かれた。クリーム色のスープに映える、鮮やかな青い器。湯気の向こうから、鶏の旨味に重なる優しい香りがやわらかく立ちのぼる。

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レンゲですくったスープは、濃厚なのに不思議と軽やかだ。口に含むと、コクのある旨味のあとから、穏やかな甘みが広がっていく。もちっとした中太麺がスープにしっかり絡みつき、食べ進めるほどにもうひと口が欲しくなってしまう。

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箸で持ち上げたチャーシューは、今にも崩れてしまいそうなほど、ほろほろと柔らかい。舌にのせた瞬間、肉の旨みがじゅわりと溢れ出し、静かに溶けていった。

あっという間にするすると完食。スープを飲んでいると、カウンター越しに男性の店員さんが「ご飯を入れて、雑炊風にするのもおすすめですよ」と話しかけてくれた。それは、やってみない理由がない。

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少しだけ残したスープに、「ライス小」(150円 税込)を投入すると、器の中はたちまち贅沢な雑炊へと姿を変えるスープのコクがご飯にほどよく染み込み、さっきまでとは別の一品を食べているような満足感があった。

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雑炊まで食べ終え、しばらく余韻に浸っていると、先ほどの店員さんが話しかけてくれた。

「お味はいかがでしたか?」

「美味しかったです」

「それは良かった」

にっこり微笑んでくれた店員さん。聞けばこの店の店主で、塩野さんというらしい。初めて来た店なのに、こんなふうに声をかけてもらえる距離感が、妙に心地よかった。

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「店内がバーみたいなので、ついついのんびりしちゃいました」

そう伝えると、塩野さんは「夜はダイニングバーとして営業しているのですが、昼も『頑固なラーメン屋』にはしたくなかったんです」と、少しはにかんだ笑顔を見せた。

お客さんとの距離感は、できるだけ近くありたい。ラーメンを食べるだけでなく、その時間ごと楽しんでほしい。

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「世間話をしに食べに来てねって思ってます」

穏やかに話す塩野さんの言葉に、この店の空気がすべて詰まっている気がした。

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11種のスペシャルトッピングで彩る『旨辛油そばスペシャル』(並1,400円/大1,550円 ともに税込)

「美味しいラーメンの形は、人それぞれじゃないですか。感じ方も違えば、好みも違う」

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魚粉の効いた『魚介つけ麺』(並1,200円/大1,350円 ともに税込)

「だからこそ、自分が純粋に『食べたい』と思えるラーメンを、いつでも食べられる場所をつくりたかったんですよね。いろんな種類を試すもんだから、太っちゃって」

朗らかに話す塩野さんの言葉を聞いて、私も思わず頬がゆるんだ。

そうこうしている間に、外が少しずつ暗くなってきていることに気づく。
カウンター越しに、塩野さんが冗談めかして笑う。

「……もう一杯、食べます?」

今日はジム帰りだ。多分、いける。いや、絶対いける!

長原の夜は、どうやらまだまだ長い。
カウンターの向こうに並んだボトルが、静かにきらきらと光っていた。

【店舗紹介】

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麺屋チキポタ

2022年オープン。看板メニューの「チキポタラーメン」は、玉ねぎやにんじんなどの野菜をじっくり煮込み、カレーの仕込みのような手間をかけて仕上げたポタージュスープが特徴。麺は浅草開化楼の中太麺を使用。他メニューは、麺類のお供にぴったりな、「チャーシュー丼ミニ」(550円 税込)、「旨辛そぼろ丼ミニ」(400円 税込)など。

・住所:東京都大田区南千束1-1-2 1F
・電話番号:080-8504-5511
・営業時間:火・土 11:30〜14:00/日・祝日 11:30〜17:00 
・定休日:月・水・木・金(※変動あり)

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文/高橋まりな
写真/Ban Yutaka
編集/高山諒(ヒャクマンボルト)

掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。

Urban Story Lab.

まちのいいところって、正面からだと見えづらかったりする。だから、ちょっとだけナナメ視点がいい。ワクワクや発見に満ちた、東急線沿線の“まちのストーリー”を紡ぎます。