
江戸時代からつづく、池上本門寺の伝統行事「お会式」。毎年30万人もの人々が訪れる背景には、幻想的な光と音が織りなす世界、そしてほかで味わうことのできない深い感動がありました。注目ポイントとともにレポートします。
池上本門寺の「お会式」とは?
お会式(おえしき)とは、日蓮宗をひらいた日蓮聖人の命日をしのぶ法要のことです。江戸時代からつづく希少な伝統行事で、毎年10月11日~13日の3日間にかけて行われます。なかでも「万灯練供養(まんどうねりくよう)」は最大の見どころ。毎年、一晩で30万人を超える参詣者でにぎわいます。

お会式が行われる池上本門寺は、日蓮聖人が入滅(臨終)された寺院で、日蓮宗の大本山でもあります。 日蓮聖人は今から700年以上前の10月13日、61歳でその生涯を終えました。この命日に合わせ、池上本門寺では毎年10月11日から13日にかけて、さまざまな法要が営まれます。この3日間のことを総称して「お会式」といいます。
12日の夜には「万灯練供養」が行われ、大堂で僧侶が太鼓を打ち鳴らしながらお題目を唱えます。その祈りは明け方まで続き、朝8時になると法要を営みます。 こうして人々は毎年、日蓮聖人のご遺徳をしのび、その教えを受け継ぐ心を新たにしています。

ずらりと並ぶ屋台が圧巻!
お会式に際し、池上線 池上駅から境内にかけて、何百軒もの屋台が立ち並ぶ様子は圧巻!


これほどの規模の屋台ストリートは筆者も初めて見ました。

屋台フードは定番のたこ焼き・焼きそば・りんご飴から、おつまみにぴったりの焼き鳥や唐揚げ、チョコバナナなどのデザートまで多種多様に揃っていました。






人は多いですが、12日になると参道の車両通行止めが実施され歩行者天国となり、屋台ゾーンが広いこともあって、意外にゆったりと見ることができました。
万灯練供養のここが見どころ
18時になり、いよいよ万灯(まんどう)がやってきました!

お会式では、造花で飾られた万灯が練り歩き、纏(まとい)がそれを先導します。一行は参道を池上本門寺へ向かって、ゆっくりと進んでいきます。

万灯の意味は、「万の(たくさんの)灯(あかり)」。万灯を献灯することによって、仏さまの智慧をいただき、明るい人生を過ごしていこうとする仏教徒の決意が表されています

万灯の外側は紙でできた花(主に桜の花)で飾られており、なんとも幻想的で華やかな佇まい。中の骨組みは多くの場合「五重塔」や「多宝塔」など仏教的な塔の形を模したデザインになっています。
特に池上本門寺にある五重塔は、空襲による焼失をまぬがれた貴重な古建築です。お参りをする大堂のすぐそばにありますので、ぜひこちらも訪れることをおすすめします。


さて万灯の先導役として、行列のなかでもひときわ目を引くのが「纏(まとい)」です。棒の先端に紋章が掲げられ、その下には房状の飾りが垂れ下がっています。
纏はもともと、江戸時代の火消し衆が使っていた道具です。池上本門寺へ向かって力強く行進する信徒たちの姿に惹かれた火消し衆が、法被(はっぴ)姿で纏を担ぎ、行列に加わったのが始まりとされています。お会式では「講中(こうじゅう)」という、地域ごとにつくられたグループの象徴にもなっています。

ブンブンと勢いよくまわす姿は迫力満点!ハードな動きのため、子どもから大人まで交代でまわしながら進みます。お囃子に合わせて力強く舞う姿に、観客からはおおーっと歓声が上がっていました。

棒の先端は、色は白だけでなく金や銀もあり、形も四角や丸など、講中ごとにさまざま。また講中にはそれぞれ太鼓や笛の奏者がいて、お囃子の音色も異なります。

法被も講中ごとに個性があり、そうした違いを見つけるのもお会式の楽しみのひとつです。
講中は、参道から総門(お寺の入口)にたどり着くと、境内までの長い階段を、万灯を持ち上げながら進みます。


また境内で見物していると時折、観客に思い切り万灯を寄せてくれることがあります。花飾りの内側に入って、大人も子どもも大喜び!そのやさしい感触を確かめていました。

大堂前に到着すると、太鼓や鉦(かね)が力強く打ち鳴らされ、動きや掛け声も一段と熱を帯び、奉納の舞が最高潮に達します。最後に、大堂の中で参拝を行い儀式は締めくくられます。こうした一連の流れが、講中ごとに丁寧に執り行われます。
万灯練供養が始まるのは18時ごろですが、23時ごろまで続々と万灯がやってきますので、20時ごろから訪れても十分楽しむことができます。人は多いですが焦らず、ゆったりとした気持ちで見物されるのがおすすめです。

遠くから聞こえるお囃子の音に耳を傾けながら、池上のまちを散策するのも心躍るひととき。万灯のあかりが目印となるので、初めて訪れる方でも迷うことなくメインストリートへ戻りやすいです。

23時を過ぎ、最後の講中が奉納を終えると、観客からはあたたかな拍手が送られました。
5時間に及ぶ万灯練供養は、江戸時代※から脈々と受け継がれてきた文化の流れの中に、自身も身を置いているという実感をもたらします。それは他では味わえない深い感動でした。あなたもぜひ現地で感じてみてください。
※当記事は「池上本門寺のお会式」を主題としているため、池上本門寺のホームページに従い江戸時代としています。
池上本門寺へのアクセス

お会式が行われる池上本門寺までは、池上線 池上駅から徒歩10分ほど。東急線では、お会式で万灯練供養が行われる12日に合わせて毎年、列車を増発しています。駅を出ると早速、万灯が出迎えてくれました。
※東急バスも運行するエリアですが、毎年10月12日はお会式開催にあわせて運休や折返運行を実施しているため、池上線 池上駅のご利用がおすすめです。
<関連情報>池上駅(構内図・時刻表)



池上駅北口を出てすぐの交差点を渡り、黒い三角屋根のようなアーチが印象的な「本門寺通り」へ。「本門寺通り」には屋台が並びます。まだ明るいうちから、大にぎわいです!

そのまま道なりに進み・・・・・・つきあたりにある「稲垣商店」の角を右へ!

そのまま進むと、大通りに出ます。

池上本門寺の総門はもう目の前!人の流れに沿って、門へ向かえば到着です。
740年を超える歴史とつながろう

江戸時代から現代に至るまでつづく、池上本門寺のお会式。子どもから大人まで交代で纏をまわしながら本堂へ進む姿を眺めていると、数百年の長い歴史のなかに自身も身を置いているという、あたたかな感動が沸き上がります。
また創建から740年以上と由緒ある池上本門寺には、歴史的価値の高い文化財などが多数現存しています。先に紹介した五重塔のほか、同じく国の重要文化財である多宝塔や、西郷隆盛と勝海舟による江戸城無血開城の会見が行なわれた松涛園(一般公開期間に訪問可)など、見どころ満載です。
お会式の期間はもちろん、それ以外の日に訪れても、歴史の感動にふれられる池上本門寺。ぜひ一度、足を運んでみてください。
■池上本門
・住所:東京都大田区池上1-1-1
https://honmonji.jp/
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取材・文:山﨑彩恵子(東急公式サイト編集部)
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