
おしゃれなアパレルショップや話題のグルメスポットも集まる渋谷区・神南エリアにある、「渋谷区立北谷公園(以下、北谷公園)」をご存知でしょうか。
北谷公園は、東急株式会社(以下、東急)をはじめとする民間と行政が協働して公園の整備・運営を行う「Park-PFI」という制度を活用し、公共空間に新たな価値を吹き込んだ場所。地域の人々や企業が関わり合うことで、都市と人との新しい関係性を体現している公園でもあります。
そんな北谷公園に注目して、渋谷のまちの今と未来を再発見してみませんか?今回は、2021年に生まれ変わった北谷公園の運営を担当している東急の秋元さんと福島さんにもお話を伺いました。
北谷公園の歴史

北谷公園は、1963年に開園した960平方メートルほどの渋谷区立公園です。周囲には、NHK放送センターや渋谷区役所、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)など、公共・商業を問わず多くの施設があります。その中で長らく地域に愛されていた北谷公園でしたが、路上の違法駐輪の対策として敷地の一部が駐輪場となったのは2005年のこと。
ちょうどそのころから、喫煙所としての利用の増加や公園を取り囲む木々による見通しの悪さなども原因となり、だんだんと閉鎖的な印象の公園に変わってしまったといいます。
その後、北谷公園が大きく生まれ変わったのは2021年4月。それまでの「立ち入りづらい雰囲気」を払拭し、「Park-PFI」の新たなロールモデルとなる公園として注目を集めています。
公共空間の未来を変える仕組み「Park-PFI」とは?

北谷公園の再生に用いられたのが、「Park-PFI(公募設置管理制度)」という制度です。この制度では、民間事業者が主体となり、公園の整備・管理と収益施設の運営を一体的に行います。いわゆる「官民連携」を土台に、運営の中で生じた収益を公園の整備に充てることができるスキームです。
行政の財政負担を軽減しながら質の高い空間を生み出せるだけでなく、民間ならではの発想やサービスを取り入れることで、公園がより魅力的な都市拠点へと進化します。北谷公園もまさにその好例であり、都市開発の新しいモデルとして注目されているのです。
前述の経緯から多くの課題を抱えていた北谷公園でしたが、変化のきっかけがやってきたのは2019年。公園の再生に向けて、渋谷区が区内初の「Park- PFI」公募を実施したのです。渋谷とは切っても切り離せない歴史をもつ東急は、北谷公園が抱える課題の解決やより良いまちづくりを目指して、代表企業としてこの公募に手を挙げたのでした。

その後、渋谷区初の「Park-PFI」公募には東急を代表企業とするコンソーシアムが選定され、別途公募された公園の指定管理者を「しぶきたパートナーズ」(※)が担当するかたちで北谷公園が運営されています。
※しぶきたパートナーズ:東急株式会社を代表企業として、株式会社CRAZY ADおよび株式会社日建設計の3社で構成されるコンソーシアム。
カフェやキッチンカーも集まる“開かれた公園”へ

装い新たに生まれ変わった北谷公園の最大の特徴は、何よりも“開かれた公園”であること。生い茂った植栽を整えることで、かつては9%ほどだった開口率を22%まで高め、見通しがよくて明るい公園になりました。また、公園の北側には2階建ての建物を新設。カフェとして運営することで収益化を図るだけでなく、自然と人が集まる場所にもなっています。

「北谷公園の運営で大切にしているのは、公園を“舞台”として、神南エリア全体を盛り上げること。周辺の地域プレイヤーと連携する、『地域連携型』の運営をおこなっています」と語るのは、公園運営を担当している東急の秋元さんと福島さん。すでに多様な人やお店などが集まる神南エリアだからこそ、彼らの自由な活動や発信の“舞台”として公園を活用してもらえば、自然とエリアの魅力向上が実現できるという構想なのだそうです。
公園を構成する5つのエリア

北谷公園は、次の5つの空間からなります。創造・発信の場として活用してもらうことと、日常の憩いの場として機能することの両立を意識した構造です。
- ランウェイエリア:最も広く様々な過ごし方ができる広場
- 大屋根エリア:カフェと隣接した半屋外イベントエリア
- ステージエリア:階段から見下ろせる位置にあるパフォーマンス空間
- ステップエリア:段差を使って設置されたベンチで寛げるスペース
- カフェ
その中で、特に多くの人が日常的に利用しているのが、カフェやキッチンカーです。神南エリアにショッピングに訪れた方や近隣のオフィスで働く方などを中心に、多くの方が足を運ぶスポットになっています。
多彩なメニューが魅力の「ブルーボトルコーヒー 渋谷カフェ」

2階建ての店内には約40席、屋外ベンチもある人気のカフェ。定番のコーヒー以外にも、ソフトドリンクやティー、キッズドリンクなど、幅広いメニューが魅力です。ワッフルやグリルドチーズサンドイッチ、グラノーラ、デザートといったフードメニューも充実しているので、いろいろな過ごし方を楽しめます。
営業情報
・営業時間:月〜日 8:00〜20:00
https://store.bluebottlecoffee.jp/pages/shibuya
平日のランチに便利な「キッチンカー」

平日は毎日、2〜3台が出店するというキッチンカー。和洋中、エスニックなど、さまざまなメニューを手軽に楽しめるのが最大の特徴。公園内のテーブル・ベンチやステップエリアでランチを楽しむ人の姿もよく見られます。
営業情報
・営業時間:平日11:00〜15:00
・出店予定:https://www.mellow.jp/ss_web/markets/nRTlW
北谷公園から始まる、地域×人×公園の新しい関係
“開かれた公園”として多くの人々に利用されている北谷公園では、公園を舞台にしたイベントの開催にも積極的に取り組んでいます。
イベント開催の現状について秋元さんと福島さんに尋ねてみると、「商店街など、地域の方々のサポートが非常に大きいですね。周辺の企業の方や地域のみなさんと協力して、さまざまな取り組みの企画や運営をスムーズに実施できている実感があります」といいます。
こうして多くの人に支えられている北谷公園のイベントの中から、3つの取り組みをご紹介します。
JINNAN MARKET

「JINNAN MARKET」は、北谷公園周辺の子育て支援施設や小学校、アトリエ、アパレルショップなど、神南に関わるさまざまな方とともにつくる地域連携イベント。2025年10月の開催で12回目を迎える、大盛況のイベントです。最近では、周辺道路や地域の店舗のスペースも巻き込んだ内容に進化を遂げています。
フリーマーケット、ファッションアイテムやハンドメイド作品の販売、ワークショップなど、開催時期によって変わる盛りだくさんのコンテンツも人気。老若男女が集まる様子は、まさに今の北谷公園を象徴しているようです。
開催情報
・開催時期:春と秋の年2回開催(詳細は公式ホームページまたは公式Instagramでご確認ください)
https://www.jinnanmarket.com/
https://www.instagram.com/jinnan_market/
SHIBUYA PARK MUSIC

「SHIBUYA PARK MUSIC」は、「しぶきたパートナーズ」の中の株式会社CRAZY ADを中心に開催されている音楽プロジェクト。2021年の公園リニューアル直後から継続的に行われており、弾き語り、ストリートライブ、バンド演奏など、都市の真ん中で音楽を楽しむことのできる新しい場を提供しています。
渋谷の新しい音楽カルチャーの発展に寄与するとともに、都市部特有の「騒音問題」にも向き合い、誰もが安心して音楽を楽しめる仕組みづくりを進めています。
中でも特徴的なのが、「Silent Live(サイレントライブ)」という開催手法。FMラジオとケーブルタイプのヘッドホン/イヤホンを使って参加者全員でライブをオンタイムで共有することで、スピーカーを用いずとも生演奏を没入感とともに楽しむことができる新しい音楽体験のカタチです。
開催情報
・開催時期:おおむね月1回の開催(詳細は公式ホームページまたは公式Instagramでご確認ください)
https://shibuya-kitaya-park.tokyo/
POPUP MARKET

渋谷に実店舗出店を検討しているショップやテストマーケティングを行いたい企業などをターゲットに北谷公園の小規模区画貸しを行っている企画。ファッション感度の高い客層が多い神南エリアらしく、アパレル、古着、ヴィンテージアイテム、ハンドメイドアクセサリー、雑貨などを中心にこだわりのアイテムを扱うショップが集まります。
開催情報
・開催時期:夏季冬季を除き原則毎月開催(詳細は公式ホームページでご確認ください)
https://www.instagram.com/jinnan_market/
渋谷の新スポット・北谷公園の未来
渋谷区初の「Park-PFI」で大きく生まれ変わった北谷公園。訪れる人に寄り添いながら、官民の協働を体感できる場所としての役割を確立しつつありますが、これからどんな未来を描いていくのでしょうか。
「北谷公園から、東急が掲げる渋谷まちづくり戦略『Greater SHIBUYA 2.0』や『渋谷型都市ライフ』の実例を発信していきたい」と語る、秋元さんと福島さん。「働く・遊ぶ・暮らす」の3要素からなる『Greater SHIBUYA 2.0』ですが、居住者も多い神南エリアや北谷公園は、まさにその舞台になりえるのだといいます。
「そのためには、公園自体の知名度を上げることがとても重要です。どなたでも安心・安全に利用できるように環境整備を続けることはもちろん、新しいイベントの企画・開催にも取り組んでいきたいと思っています」(秋元さん・福島さん)
これからも地域や人を巻き込みながら、新しい取り組みに挑戦し続けるという北谷公園。都市の可能性を広げる、新たな実証の場としての発展に期待が掛かります。
<関連ページ>渋谷再開発&まちづくり
渋谷区立北谷公園
・住所:東京都渋谷区神南1丁目7-3
https://shibuya-kitaya-park.tokyo/
https://www.instagram.com/shibuya_kitaya_park/
※駐車場・駐輪場はありません。近隣の駐車場・駐輪場をご利用ください。
--
取材・文:SABO(東急公式サイト編集部)
掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。











