東急クラフトビール愛好会

東急クラフトビール愛好会/大崎広小路「Far Yeast Tokyo」で自分の“好き”を更新する一杯

Urban Story Lab.

2025/9/9

クラフトビールには、つくり手のこだわりや土地の魅力がぎゅっと詰まっています。味や香りはもちろん、名前や原材料、醸造の背景まで、その土地ならではの個性が感じられるのが魅力です。「東急クラフトビール愛好会」では、東急線沿線のブルワリーを訪ねながら、ビールをきっかけに、まちの文化や歴史、人の思いにふれていきます。

第2弾は、大崎広小路にある「Far Yeast Tokyo」をレポート。

「Far Yeast Tokyo」は、“自分だけの好み=推し”を見つけられる場所。クラフトビールが初めてでも、誰かに話したくなる一杯がきっと見つかります。

さまざまな表情を見せる温故知新のまち、大崎広小路

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東京都・品川区大崎に位置する大崎広小路。

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老舗の飲食店や個人商店に加え、リノベーションされたお洒落なお店が混在するこのエリアには、温故知新の空気感が漂っています。

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少し足を延ばせば、目黒川沿いの散策も楽しめます。春には桜並木が広がるなど、季節ごとに表情を変える自然もこのまちの魅力です。

レストラン・立ち飲み・テイクアウト。気分やシチュエーションに合わせてクラフトビールを堪能できる「Far Yeast Tokyo」。

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そんな池上線五反田駅~大崎広小路駅の高架下に位置するのが、山梨県・小菅村を拠点とするブルワリー「Far Yeast Brewing」の直営店「Far Yeast Tokyo」です。

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「Far Yeast Tokyo」の店内は、3つのエリアにわかれているのが大きな特徴です。まずはゆったり食事やクラフトビールが楽しめる「レストランエリア」で、その席数はなんと75席。店員さんにその日のおすすめを聞いたり、宴会で仲間と共にクラフトビールを味わったりと、用途に合わせて楽しめます。

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入口を背にして左奥が、立ち飲みとテイクアウトができるエリア。散歩中や仕事帰りなど、気軽にちょっと一杯飲みたいときにおすすめです。お気に入りのビールと出会えたらテイクアウトし、家でその余韻を味わうのも良いですね。

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壁面にはビールタップがずらり!どのビールを飲むかワクワクしてしまいます。
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天気が良い日はテラス席で一杯もおすすめ。

スタイリッシュでありながら、立ち寄りやすい雰囲気が、クラフトビール初心者にもぴったりです。

推しの一杯と、つくり手の想いが詰まったフードで至福の時を

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「一杯のビールを選ぶ時間は『推し活』のようだと思うんです。当店では、常時12〜18種類のビールを飲んでいただけます。さまざまなクラフトビールの中から、Far Yeast Brewingで『推し』に出会っていただけたら嬉しいですね」と話すのは、ゼネラルマネージャーの稲垣大介さん(以下、稲垣さん)。

私も心奪われる一杯を見つけたい......!そんな気持ちで、早速テイスティングスタートです!!

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本日いただくのは、「ラードラー」(写真左 800円・税込)と「Peach Haze」(写真右950円・税込)。

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ラードラーはアルコール度数3%と低アルコールながら、しっかりと飲みごたえがある一杯。レモンの甘味と皮のほろ苦さがダイレクトに感じられ、まるでレモンを丸かじりしているような気持ちになります。暑い夏の日にぴったりな爽やかな味わいが特徴的でした。

Peach Hazeは桃のフレッシュ感が存分に感じられるビール。甘味は控えめで、口いっぱいに広がるジューシーな酸味がたまりません!ちなみにPeach Hazeは年に数回醸造しており、桃の糖度によって味わいも変わるのだとか。毎年飲みたくなってしまいますね。2杯とも、私の推しになってしまいました。

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そんなビールに合わせるのは「フライドポテト」(780円・税込)と「ソーセージ」(1,980円・税込)。

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フライドポテトは、国産のじゃがいもを使用しており、冷凍ではなく生のじゃがいもをその場で揚げて提供しています。自然な甘みとしっとり感が味わいの特徴なのだとか。

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左・サルシッチャ、右・チョリソー。2種類が楽しめるソーセージセット

ソーセージには、山梨県・上野原市の「hayari-sausage(ハヤリソーセージ)」から仕入れた良質な肉を使用。Far Yeast Tokyoでは、腸詰めから乾燥・熟成まで、仕上げの工程を1本1本丁寧に手がけているのだそう。イタリアのハーブが主体のサルシッチャと、メキシコのスパイスをふんだんに使用したチョリソーの2種類です。

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噛むたびにじゅわっと旨みが溢れ出すソーセージは、柔らかくジューシー。肉の甘みと脂のコクが口いっぱいに広がります。揚げたてのフライドポテトは、ほどよく塩気の効いた胡椒と、コクのあるチーズが絶妙なアクセントに。ホクホクのじゃがいもから優しい甘みが広がり、素材の旨みを引き立てるバランス感がお見事です。

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Far Yeast Brewingのクラフトビールはパンチが強すぎなくて、クリアな味わいなので食事にもぴったり。ああ、ここは天国でしょうか......。気づけばグラスを持つ手がエンドレスリピート状態になってしまった筆者なのでした。

ついつい仕事を忘れて、飲んで食べて、気持ちよくなってしまいそうですが、酔っ払ってしまう前にお店の方にインタビューをしていきたいと思います!

地元農家とのつながりを深めながら、多様で豊かなビール造りを。「できるまでの過程」も味わえる醍醐味。

今回お話を伺うのは、ブランドコミュニケーションの小松代広之さん(以下、小松代さん)と稲垣さん。「Far Yeast Brewing」や「Far Yeast Tokyo」について根掘り葉掘り聞いていきます!

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写真左:ブランドコミュニケーション・小松代広之さん/写真右:ゼネラルマネージャー・稲垣大介さん

「創業者である山田司朗がイギリスに訪れた際、多様なビールカルチャーに衝撃を受け、『日本のビールにも、もっと選択肢を』という想いから立ち上がったのがFar Yeast Brewingです」と語るのは小松代さん。日本に本格的なクラフトビールブームが訪れる前の2011年に創業された老舗ブルワリーで、都内での委託醸造から始まり、現在は山梨県・小菅村に醸造所と本社を構えています。

小菅村の魅力は、清涼な川に流れる水と、農産物の豊富さ。その特徴を活かし、地元農家とのつながりを深めながら、地域や環境保全に貢献できるようなビールを展開しているのだとか。

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「山梨の農家さんの産物を活用してビール造りをするというのは、当社の軸のひとつになっています。たとえば2020年のコロナ禍では、廃棄予定だった桃を引き取り、『Peach Haze』という限定ビールを開発しました。それが好評を博し、今では夏の定番商品となっています」

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「他にも、米農家さんと協働し、環境保全の取り組みにも力を入れています。米農家が減ると、田んぼが少なくなります。するとお米に欠かせない水を流す用水路が使われなくなり、自然のバランスが崩れてしまうんです。そんな課題を少しでも解消できる力になれればと思い、農家さんから米を仕入れ、『もりともり』というビールも開発しました。環境保全は地球規模の課題ですが、まずは私たちができることをすべてやっていきたいと思っています」(小松代さん)

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そんなFar Yeast Brewingのミッションは「Democratizing beer」(ビールの多様性と豊かさをもう一度取り戻す)。なかでも、大崎広小路のFar Yeast Tokyoの立ち位置は「クラフトビールの魅力をお客様に直接伝えられる、発信基地のような存在」なのだと小松代さんは言います。

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「お客様と直接コミュニケーションが取れるような場所ができないか。そんな想いからさまざまな物件を探していたのですが、ちょうどそのタイミングで、池上線の高架下の再開発が行われていて。繁華街から少し離れており、スタイリッシュで落ち着いた開放的な空間。ここだ!と、ビビッときたんです。ビジネス街である五反田にも近いので、若い世代のビジネスパーソンにもうちのビールを知っていただくきっかけになればと思いました」

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「日本の大手酒造メーカーが出すスタイルは『ラガー』が主ですが、クラフトビールのスタイルは約150種類ほど。そんなクラフトビールをFar Yeast Tokyoで実際に飲み、楽しんでいただくことで、何か新しい発見があれば嬉しいですね。美味しさを味わっていただくのはもちろんですが、ビールのネーミングやラベル、農家さんのコメントを実際に見ていただくことで、『ビールができるまでの過程』にも想いを馳せていただけたら」(小松代さん)

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「Far Yeast Tokyoでは、お客様同士が『今年のPeach Hazeはこうきたか!』なんて話している場面をよく見かけます。まるでボージョレ・ヌーボーのように、毎年ビールの出来を楽しみにしてくださる方がいるのは、本当に嬉しいことです。私たちは農産物の状態にあわせて毎年レシピや造り方を調整しているので、味が固定されることはありません。だからこそ、『今年はこんな想いで造りました』といった背景までお伝えすることで、より深く、より自由に楽しんでいただける。そんな“ビールの多様性”をまるごと味わえるのが、Far Yeast Tokyoの魅力だと思っています」(稲垣さん)

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「私たちは、クラフトビールの『生産者』として、Far Yeast Tokyoを通じ、ビールに使われる農産物の魅力もどんどん広めていきたいと思っています」「ゆくゆくは農家の方もお招きし、実際に農産物を販売するイベントを開催するなど、お客様と直接コミュニケーションを取れる機会も増やしたいですね」と笑顔で語るお二人。これからどんな試みが生まれるのか、ますます楽しみです!

選ぶ楽しさごと味わえる「Far Yeast Tokyo」で、クラフトビールの世界がグンと広がる体験を

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「大崎広小路の好きなところは、新しさと懐かしさが同居しているところ。スタイリッシュなお店が点在しているかと思いきや、老舗店舗の人情味も感じられる。Far Yeast Brewingのミッションである『多様性と豊かさ』にも共通しているところがあると思います」と語る小松代さん。

そんなまちの空気に溶け込むように佇むFar Yeast Tokyoは、クラフトビールの枠にとらわれない自由さと、食材やスタイルの多様性に出会える場所。自分だけの「好き」を見つけられるワクワク感が、ここには確かにあります。何度でも足を運びたくなるのは、ビールの味わいだけでなく、選ぶ楽しさごと味わえるからなのではないでしょうか。

さあ、次はどの街に行こうかな。
次なるクラフトビールを見つける旅は、まだまだ続きます。

Far Yeast Tokyo
・住所:東京都品川区西五反田1-15-6
・電話番号:03‑6420‑3978
・営業時間:平日 ランチ 11:30~15:00(14:00 L.O.)/ディナー17:00~23:00(22:00 L.O.)、土・祝日 11:30~23:00(22:00 L.O.)、日 11:30~22:00(21:00 L.O.)
・定休日/なし

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文/高橋まりな
写真/Ban Yutaka
編集/高山諒(ヒャクマンボルト)

掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。

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まちのいいところって、正面からだと見えづらかったりする。だから、ちょっとだけナナメ視点がいい。ワクワクや発見に満ちた、東急線沿線の“まちのストーリー”を紡ぎます。