東急クラフトビール愛好会

東急クラフトビール愛好会/“ビール溝”にはまっちゃう!?溝の口「みぞのくち醸造所」で出会う至高の一杯

Urban Story Lab.

2025/7/15

クラフトビールには、つくり手のこだわりや土地の魅力がぎゅっと詰まっています。味や香りはもちろん、名前や原材料、醸造の背景まで、その土地ならではの個性が感じられるのが魅力です。「東急ビール愛好会」では、東急線沿線のブルワリーを訪ねながら、ビールをきっかけに街の文化や歴史、人の思いにふれていきます。

第1弾は、溝の口にある「みぞのくち醸造所」をレポート。地域と共に育まれた味わいから、街の奥行きを探っていきます。

利便性と、穏やかな自然がある街、溝の口

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神奈川県・川崎市高槻区に位置する溝の口。駅前には「マルイファミリー」や「ノクティプラザ」をはじめとした大型複合商業施設があり、利便性も高い街です。

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駅周辺にはポレポレタウン(ポレポレ通り)というユニークな名前の商店街も。ポレポレはスワヒリ語で「ゆったり」という意味を指すのだとか。飲食店や雑貨店などが軒を連ねるこの通りの店舗数は、なんと100店舗以上!地元の賑わいスポットになっています。

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駅から約5分歩くと、豊かな自然が広がる遊歩道にさしかかります。この地は宿河原・久地にかけて続く散策路で、美しい花や鳥の姿が楽しめます。

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緑豊かで心地よい散策路をのんびり歩きながら、水面の流れを感じるひと時もまた、オツなものですね。

西海岸のような店内にビールタップがズラリ!開放的で明るい「みぞのくち醸造所」。

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さらに3分ほど歩くと、いよいよ「みぞのくち醸造所」に到着!ポップなオレンジの壁が特徴的です。

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スタイリッシュなネオンサインも目を惹きます。

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1974年にできたNTT溝の口ビルをリノベーションし、2022年5月に誕生した複合施設「BOIL」。みぞのくち醸造所はその1階部分に位置しています。店内はまるで西海岸に訪れたような開放的な雰囲気。テーブル席だけでなくスタンディング席もあり、自然と人と人との交流が生まれるような空間づくりが印象的です。

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店内左手には、ビールタップや5つの醸造タンクが並ぶ空間が。ここからどんなビールが生まれるのか、ワクワクが止まりません!

「地元の、気の良い先輩のような存在でありたい」。訪れる人を笑顔で迎えてくれる、太陽みたいな場所。

そんな「みぞのくち醸造所」のコンセプトやこだわりについて、ブランドマネージャーの内藤伸介さん(以下、内藤さん)と、アシスタントブランドマネージャーの秋山悠斗さん(以下、秋山さん)にお話を伺いました。

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写真左:ブランドマネージャー・内藤伸介さん/写真右:アシスタントブランドマネージャー・秋山悠斗さん

「みぞのくち醸造所」の運営母体は、株式会社ローカルダイニング。2009年に和食居酒屋から事業をスタートし、徐々に店舗数を拡大していったといいます。

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クラフトビールに興味を持ったきっかけは、「会社の先輩が、『Baird Beer』という伊豆のブルワリーのタップルームに連れて行ってくれたから」と語る内藤さん。その後、自身が好きなカリフォルニア出身のパンクロックバンド「NOFX(ノーエフエックス)」がブルワリーとコラボしてクラフトビールを手がけたことを知り、「いつかクラフトビールをつくりたい」という夢が生まれたのだそう。

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その後、2022年に縁あって現在の物件との出会いが。「ローカルダイニングには『スタッフ一人ひとりがやりたいこと』を大事にする社風があります」と話すのは秋山さん。溝の口という場所と、内藤さんをはじめとしたスタッフの想い。それらが交差し、「みぞのくち醸造所」の開店が実現したのです。

溝の口は、親子数世代で住み続ける人、夢を追う若者、子連れのファミリー......。さまざまな世代・生活シーンが同居する場所。そんななかで最も大事にしているのは、「開けたブルワリーであること」だと内藤さんは言います。

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ビールのパッケージも「かっこつけすぎず、隙があるデザイン」を意識しているのだとか

「良い意味であまり気取らず、『地元の気の良い先輩』のような存在でありたいですね(笑)。加えて、『入口を難しくしない』ということも大事にしているんです。ビールって、歴史を辿ってもそこまで複雑なお酒ではない。だからこそ、『いつもよりちょっと気の利いたビールをたまたま飲んだら、人生が少し華やかになった』といった体験が、自然に届けられたらと思っています」(内藤さん)

また、みぞのくち醸造所では、「お客様に、どのようなビールを提供するか」を常に模索し続けているのだとか。

「老若男女に受け入れていただけるようなドリンカビリティ(飲みやすさ)は重視しています。ただ、それだけではなく、『自分たちらしさ』『この街らしさ』も大切にしたいんです。最近の試みとして一例を挙げると、私たちが所有する小田原・新松田の畑で育ったヒノキの枝と、ジンの原料に使用されるジュニパーベリーで香りづけをしたビールをつくっています。全国的に見ると小さなブルワリーだからこその小回りがきく環境で、挑戦を重ねていますよ」(内藤さん)

「他にも、2025年の5月1日でみぞのくち醸造所が3周年の節目を迎えたので、お客様アンケートをもとにビール開発を進めました。その結果できたのが、ものすごく濃い味わいのHazy IPA。ビール沼ならぬ、『ビール溝にはめてほしい』というコメントをいただき、これだ!と思いました」(秋山さん)

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そんな溝の口醸造所で実現したいことも、お二人に聞いてみました。

「ビールを美味しく味わっていただくのはもちろんですが、うちのビールをきっかけに交流が生まれたり、友達ができたりして......人生がより豊かになるような体験を届けられたら嬉しいです」(秋山さん)

「溝の口はいろいろな酒とつまみが楽しめる街。だからこそ、みぞのくち醸造所に来た方が、他のクラフトビールにも出会ってくださったら嬉しいですね。たとえば、うちに来る前後にハシゴ酒をしたりして、この街でへべれけになってもらえたら(笑)。みぞのくち醸造所をきっかけに、溝の口がより酒飲みの聖地になったらいいなと思っています」(内藤さん)

「1杯だけ」じゃ、止められない!!風味豊かなビールとおつまみに囲まれる、至福の時間を。

「明日からまた頑張ろう!という気持ちになれるようなクラフトビールを届けたい」という内藤さんと、「スタッフもあたたかい人ばかりなので、おすすめのビールなど、気軽に聞いてくださいね!」と話す秋山さん。

お二人のハツラツとした笑顔に元気をもらった筆者、もう待ちきれないので、実際にビールを飲んでいこうと思います!!

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まずは、3種飲み比べセット(1,380円・税込)をオーダー。みぞのくち醸造所に用意があるビールは、常時10種類以上。「いろんな種類のビールを少しずつ飲んで、お気に入りを見つけたい!」という方にぴったりです。

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写真左から、Dive Deeper、Mist、Pale Ale #29

Dive Deeperは、みぞのくち醸造所の3周年を記念し、お客様のご要望から生まれたビールです。アルコール度数は比較的高めの9%。創業から今に至るまで、みぞのくち醸造所がずっと活用してきた王道のホップや麦芽を使用して手がけたのだそう。

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まろやかな飲み口ながら、しっかりとホップの苦味を感じるDive Deeperは、爽やかなキレよりも、深い余韻が残る味わい。まさに「ビール溝」にはまるような癖になるテイストでした。

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Mistは、北海道にあるストリートライト・ブルーイングとのコラボビールです。フルーツのような酸味のある酵母とスパイシーな香りがする酵母を使用。さらに、北海道の農家の方から取り寄せたシナモンバジルを使用し、複雑な味わいが楽しめます。

まず、バジルの爽やかな香りが鼻腔をかすめ、その後にキュッとくる酸味とライトな甘味がふわっと押し寄せる......。一度飲んで二度美味しいとはまさにこのことか!と感じる、ユニークなビールでした。

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Pale Ale #29は、創業時からつくっているみぞのくち醸造所の定番ビール。レシピは創業時からほとんど変えておらず、最初の一杯から休憩の一杯まで、飽きずに飲み続けられるビールなのだそう。

繊細ながら、スッキリとした切れ味と柑橘の爽やかな香り......!食事の風味を邪魔することなく、ごくごくと飲み干せそう。「お客様にも一番飲んでいただいているビール」というのも頷ける黄金の味わいでした。

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そんなビールにあわせる定番おつまみと言えば?......そう、「フィッシュ&チップス」(980円・税込)ですね。

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魚には、東南アジア産の「バサ」を使用。臭みがなく、じゅわっととろける脂の旨みが感じられます。口に入れる度にふわりとほどける白身の柔らかさが絶妙で、ひと口頬張った筆者も思わずこの表情。ああ、この時間がずっと続けばいいのに......。

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そんな気持ちで、思わず「Teal」(レギュラー:720円/パイント:1,240円・いずれも税込。写真はレギュラーサイズ)も追加注文してしまいました。ノルウェーの伝統的なビアスタイル・Kornøl(コーンオール)をアレンジしたというTealは、香り付けにヒノキやジュニパーベリーを使用しています。

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こちらに合わせるのは、「フリアリエッリ&サルシッチャ」(1,180円・税込)。イタリア産の菜の花の塩漬けと、粗挽きソーセージが入ったピザです。

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ハーバルな香りと、まろやかな飲み口が両立する複雑な味わいながら、癖はなく華やかなテイスト。飲み口が穏やかなので、あたたかい陽気の日に外で飲みたいビールだと感じました。もちもちの生地に、菜の花のほろ苦さと、ハーブの香りが漂うソーセージの程よい塩味のピザがたまらない!ビールがぐいぐい進む味わいでした。

ワクワクでいっぱいになる「みぞのくち醸造所」で、特別な一杯との出会いを。

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「溝の口の好きなところは、人を惹き寄せる、不思議なパワーがあるところ」と語る内藤さん。「昔から住む人も、新しく訪れた人も受け入れてくれる懐の広さがある」と言います。

その言葉の通り、街を歩くだけでいろいろな表情が垣間見え、噛めば噛むほど味わいのある、スルメのような街だと感じた溝の口。それはみぞのくち醸造所も同様で、訪れるたびに、「どんなビールが飲めるんだろう?」とワクワクでいっぱいになる場所。だからこそ、老若男女、多くの人に愛されているのだろうと感じました。次のクラフトビールに出会えるのは、どんな街かな。

みぞのくち醸造所
・住所:神奈川県川崎市高津区溝口3-2-5 BOIL 1F
・電話番号:044-543-9160
・営業時間:12:00~23:00
・定休日:不定休

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文/高橋まりな
写真/Ban Yutaka
編集/高山諒(ヒャクマンボルト)

掲載店舗・施設・イベント・価格などの情報は記事公開時点のものです。定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。

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