愛犬と過ごせる庭で、お客さん同士がつながる。薬膳火鍋も楽しめる「つくしのローズガーデン」
- 取材・文・編集:入江百音
- 写真:北原千恵美
- 編集:宇野宙(CINRA)
Share

「ローズガーデン」のローズは、バラじゃなかった? お店の成り立ちと、店名に隠れた秘密
――「つくしのローズガーデン」はどのような経緯でオープンしたのでしょうか。
もともと隣が僕の実家で、父が倉庫を改装してオープンガーデンにしたいというので、2018年に一緒に立ち上げたのが始まりです。
津吹


最初は、ワンちゃんを飼っていたこともあって、手作りでドッグランを設置しました。そのうち知り合いも来てくれるようになり、「せっかくだから来てくれた方に飲み物だけでも出そうか」という感じでカフェが始まりまし た。
津吹


最初から「これをやろう」と決めていたわけではなくて、やりたいことをどんどん重ねていったら、いまのかたちになったんですよね。
柿澤

柿澤さんも、オープンガーデンを始めたばかりのころはお客さまだったんです。
津吹

私は以前から、娘たちの好きなパンを家でよく焼いていて、パン教室もやっていたんです。カフェでハンバーガーをお出しすることになったタイミングでスタッフに加わって、いまもバンズは私が焼いています。
柿澤


――小野寺さんは、どのようなきっかけでお店に通うようになったのでしょうか。
ペットシッターの仕事でこのあたりを散歩していたら、「あれ、急におしゃれな看板が出てきたぞ」と気になったんです。入り口には、リボンで可愛く巻かれたお店のチラシが置いてあって。最初はおしゃれすぎて、「私が入っていいのかな」と思っていたんですけど、ちらほらワンちゃんの姿が見えたので、思い切ってなかに入ってみました。
小野寺


――初めて訪れたときの印象はいかが でしたか?
お花がすっごく綺麗で、働いている方もお客さんも皆さん、素敵な方ばかりで驚きました。お茶を楽しむだけじゃなくて、お客さん同士でおしゃべりできるのも楽しくて。最初のころは、ワンちゃんを連れていない日でも来ていました。
小野寺


――「つくしのローズガーデン」という名前の通り、バラがこちらの魅力なのでしょうか。
じつはローズガーデンの「ローズ」は、皆さんがイメージするバラのことではなかったんです。父がとくに好きだったのがクリスマスローズという花で、最初は庭中にその花を植えて、「つくしのローズガーデン」と名づけました。でも、この名前だと、いらしたお客さまはやっぱり普通のバラを思い浮かべますよね。それで、少しずつバラも増やしていきました。
津吹


そのかいあって、5月の庭は本当にきれいです。新緑のなかでいろんな色のバラが咲く光景は圧巻ですよ。お客さまも1年で一番多くて、満席になるくらい。
柿澤

私は梅雨の時期も好きです。真っ白な紫陽花がばーっと咲いて、雨の季節だけど本当に綺麗なんですよ。
小野寺

最近は1年を通してお庭を楽しんでいただけるように、お花の種類も増やしています。
津吹



店主の体験から生まれた、人と犬のための薬膳料理
庭園内にあるレストラン「薔薇亭」で提供される火鍋には生薬がふんだんに盛り込まれている。お庭と薬膳、そして犬。この3つは、どのようにしてつながったのだろうか?

――薬膳料理はどのようなきっかけで始められたのでしょうか。
2020年ごろ、僕が体調を崩してしまいまして。幸い早めに気づいて治ったんですが、それからは、心と体をいたわりながら毎日を過ごしたいと思うようになりました。せっかく来てくださるお客さまにも、おいしいだけじゃない何かを届けたい。柿澤さんとそう話して、2人で薬膳アドバイザーの資格を取ったんです。僕はもともと15年間中国でお店をやっていたので、薬膳料理に馴染みがあったのも大きかったですね。
津吹

私は香港で料理を習っていたので、復習みたいな感覚でした。ただ、勉強はほとんど中国語だったのが、ちょっと大変でしたね(笑)。
柿澤


そのころは不思議とご縁が重なって、僕が「こうしたいね」と言うと、次の日にはなぜかその関係の方から電話がかかってきたりして。
津吹

何かを勉強しようと思ったら、たまたま同級生がそれの講座をやっていたりとかね。
柿澤

何もかもが、薔薇亭のオープンを後押ししてくれているような感じでした。
津吹

――薔薇亭では、どんなお料理を提供されているんですか?
看板メニューは薬膳火鍋です。7種類の生薬に白きくらげ、つばめの巣を合わせています。お出汁は鶏とさまざまな薬膳素材からとっていて、最後にお雑炊もできるんですよ。「火鍋の〆にお雑炊?」って、皆さんびっくりされますね(笑)。
柿澤



食材は旬のものを使うので、たとえばキノコが多い時期はキノコの種類がもっと増えますし、そうじゃない時期は根菜や里芋が入ります。季節ごとに、異なる食材をお楽しみいただけます。
柿澤




デザートもおすすめです。香港のデザートスープ「糖水」をベースに、豆花と白きくらげ、つばめの巣を入れていて、黒蜜も自家製です。
津吹




――ワンちゃんのための「犬薬膳講座」も開催されているそうですね。
私も津吹さんも犬を飼っているんですが、津吹さんのワンちゃんが病気になったとき、ペットの健康管理について必死に勉強したんです。そのときに、人間と同じでやっぱり毎日食べるご飯が大事だと気づきました。それがいまの犬薬膳につながっています。
柿澤


講座は季節に合わせた全4回のコースで、ワンちゃんには薬膳ポタージュを、飼い主さんにはお食事をお出ししています。ワンちゃんには1頭ずつカルテをつけて、半オーダーメイドでポタージュをお作りします。
柿澤


最初は、私が犬の管理栄養士の資格を持っているので、柿澤さんの相談に乗っていたんです。でも、いつの間にか私よりはるかに詳しくなっちゃって(笑)。
小野寺

ガーデンを入り口に、人とまちがつながっていく
お客さんとして通い始めた人が、いつしかイベントを企画するようになる。ガーデンを見た近所の人からは、「うちの庭も」と声がかかる。ローズガーデンで生まれた人の輪は、お店の外へ、まちへと広がり始めている。
――お店をきっかけに、お客さま同士や、つくし野のまちとのつながりも生まれているそうですね。
お店でのイベントはときどき開催しています。このあいだも、お花の先生がワンちゃんと一緒にリース作りを楽しめる体験会を開いてくれて。愛犬家の方が犬を連れて行ける場所って限られ てるんですよね。だから「こんな広い場所で愛犬と一緒にリース作りができてうれしい」と、すごく喜ばれました。
柿澤


出産前は、私もお店の庭園のあちこちにブースを作って、よくイベントを開催していました。肉球クリームやワンちゃん用のスプレーを作るワークショップを開いたり、犬薬膳に詳しい方を招いて相談会をしたり。
小野寺

お客さまのなかに「このお店でこういうことをやりたい」と企画してくださる、熱い方が結構いらっしゃるんです。その熱意に乗っかっていったら、いつの間にかいろんなイベントが生まれていきました。
津吹


――最近は近隣のお庭のメンテナンスもされているそうですね。
そうなんです。お店のガーデンを見てくださったお客さまから「うちの庭もこんなふうにしてほしい」と頼まれたのがきっかけです。
津吹

このあたりの住宅は、ほとんどがお庭付きの一軒家です。ただ、40年ほど前に開発された住宅街なので、住んでいる方の高齢化が進んでいて、お庭の手入れが大変になってきた方も多いようなんです。
柿澤


お子さんが独立されたタイミングでワンちゃんを飼い始める方も多いので、そういう方の力にもなれたらと思っています。
津吹

倉庫だった場所を、少しずつ庭園に、お店に、そして人と人とがつながる場所へと育ててきた津吹さんと柿澤さん。ペットシッターの合間にふらりと立ち寄った小野寺さんは、いまでは保護犬たちやお子さんと一緒に、この場所に通うように。ローズガーデンに人と犬が集い、そこで生まれたつながりが、またまちへと広がっていく。そんな心地よい循環が、ここにはある。
季節ごとに違う顔を見せる庭園と、旬の食材を活かした薬膳料理を目当てに、つくし野を訪れてみてはいかがだろうか。

Share



