ヴィーガンの人もアレルギーの子も。みんなで同じごはんを食べられる。素材にこだわった南町田「6889cafe」
- 取材・文・編集:入江百音
- 写真:北原千恵美
- 編集:宇野宙(CINRA)
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「お母さん、こんなお店があるよ」から始まった店主と常連さんの縁
――まずは、お二人が出会ったきっかけについて教えてください。
秀さん(荒井さん)が初めてうちに来たのは8年くらい前だっけ?
友井


次男のお嫁さんが「お母さん、食材に気を遣っている素敵なお店が近くにあるよ」って教えてくれて。車で10分もかからない距離だから、行ってみたらすごく気に入っちゃったんだよね。それ以来、家族や親しい人たちと足を運ぶようになりました。
荒井


いまでは月に1回くらいは顔を出してくれているよね。ちょっと間が空くと、「どうしたの?病気になった?」って連絡しちゃうくらい、うちの常連さんです。
友井

こだわりの味噌と野菜を使った、食べ応えたっぷりのヴィーガン料理
メニューの端々に息づくのは、素材本来の味わいを大切にする姿勢だ。この日、友井さんが振る舞ってくれたのはネギ味噌ラーメン。荒井さん直伝の味噌を使い、こだわりの野菜を乗せる。
――料理には、どんなこだわりがあるのでしょうか。
うちのネギ味噌ラーメンには、秀さんに作り方を教えてもらったお味噌を使っています。私は思ったことがすぐ形にならないと嫌な性格だから、お味噌を作ったり梅干しを何年も漬けたりするのはじつは苦手なんだけど(笑)、秀さんはそういうの得意な方だから、いろいろ教えてもらっ ています。
友井

そうそう、ママ(友井さん)はその場でパパッと料理したいタイプで、私は時間をかけてじっくり仕込みたいタイプ。対照的だよね。
荒井


ネギは、夫がプランターで育てたものです。いっぱい収穫できたから、お店で使おうってなりました。
友井


あとはキャベツにもちょ っとした工夫があるんです。夫の実家が昔ラーメン屋さんをやっていて、捨てる予定だったキャベツの芯をもらってきたことがあって。そこで、くたくたになるまで煮込んで塩だけで味付けしてみたら、「こんなにおいしいんだ!」って感動したんです。それ以降、ラーメンの具材にしています。
友井


――荒井さんはこのお店のヴィーガン料理についていかがですか?
ヴィーガン料理って、人によってはなんだか物足りないイメージがあるかもしれないけれど、ここのご飯は本当に満足感がある。大豆ミートの唐揚げや、照り焼き丼も、食べ応え抜群です。
荒井

ご家族で来てくださる方も多いんですけど、家では野菜を食べないお子さんが、うちでは食べてくれることもよくあるんですよ。素材の味をちゃんと活かしてあげると、子どもにも野菜のおいしさが伝わるのかなって思います。
友井

看板メニューはエチオピアのコーヒーと、スーパーフード「テフ」のスイーツ
店を語るうえで欠かせないのが、自家焙煎のエチオピア産コーヒーだ。レゲエ好きをきっかけにエチオピアへ足を運ぶようになった夫を通じて、友井さんは現地のコーヒーの魅力に深く惹かれていったという。



――店内の異国の情緒漂う雰囲気も印象的ですね。
インテリアはすべて夫の趣味なんです。夫は大のレゲエ好きで、レゲエと深い関係のあるエチオピアも自分のふるさとって言うくらい(笑)。
友井


それでエチオピアに何度も行くうちに、現地の農園にまで通うようになって。6889cafeでは、エチオピアコーヒーのなかでもっとも品質が良い等級である「G1(グレード1)」の豆を使っているんです。生豆を浅煎りして自家焙煎したら、1杯ずつハンドドリップ。苦味や渋みが控えめで飲みやすいですよ。
友井

エチオピアには、伝統的なコーヒーセレモニーの文化もあるんだよね。
荒井

そうそう。お客さまが来たら、生豆を洗って、その場で炒って、潰したものに水を入れて煮出すんです。そして、小さなカップで3回に分けてお出しする。エチオピアの女性は、そうやってコーヒーを振る舞うんですよ。
友井


私、もともとコーヒーがまったく飲めなかったんだけど、ここのを飲んで概念がガラッと変わったの。何杯飲んでも胃がもたれず平気だなんて、嘘みたい。
荒井

昨日来てくれた若いお兄ちゃんも、「あの豆なんですか?」「すっごく香りが高くておいしかったです」って喜んでくれてうれしかったね。
友井


――メニューにある「テフ」も気になります。
テフは「世界最小の穀物」ともいわれていて、酸味のある味わいが特徴です。エチオピアでは、水と混ぜて発酵させ、クレープ状に焼いた「インジェラ」という国民食の材料になっています。でも、テフにはもっと違う使い方があるんじゃないかと、思い切ってクッキーやケーキにしてみました。
友井


日本に滞在しているエチオピアの方にケーキをお渡ししたら、一口食べてすぐに「テフだ」って気づかれました。私たちにはテフの味って判別しにくいんですけど、エチオピアの方にはすぐわかるみたいですね。
友井

私はこないだ、テフクッキー4枚も食べちゃった(笑)。すっごく軽くて食べやすいんだよね。
荒井


アレルギーがあっても、子ども連れでも。誰もが安心して過ごせる場所に
アレルギーのあるお子さんや、子育てに奮闘するお母さんたちにとっても、6889cafeは心安らぐ拠り所になっている。
――ヴィーガンの方以外にも、アレルギーなど、いろいろな事情をお持ちのお客さんも多いそうですね。
そうですね。とくに牛乳や卵のアレルギーの方が多いので、アイスクリームやソフトクリームは豆乳で作っているんです。お子さんがすごく喜んで食べてくれます。 このあいだは、お子さんが食後にキッチンの扉をノックしてきて。なんだろうと思ったら、「今日はお父さんとお母さんと同じメニューが食べられました。ありがとうございました!」って、わざわざお礼を言いにきてくれたんです。アレルギーのあるお子さんは普段、親御さんと別のメニューになることが多くて、寂しかったみたい。
友井


――素敵なエピソードですね。親御さんや小さなお子さんに向けて、大切にしていることはありますか?
親御さんにもゆっくりしてほしいから、子どもの世話に手間がかかっているようだったら、こちらで預かって、一緒に絵本を読んだりしています。
友井

赤ちゃんが泣き出しちゃって慌てているお母さんもたまにいるけど、「気にしないで」って思うよね。赤ちゃんは泣くのが仕事だから。
荒井

あとは子どもたちのために、町田市の公共トイレ協力店にもなっています。それとこのあいだ、わざわざ「盲導犬と入れますか?」って問い合わせの電話をいただいて。「もちろん大丈夫です」って即答しました。
友井


移り変わる南町田で、変わらずふらっと立ち寄れるお店であり続けたい
南町田というまちの移り変わりを見つめながら、2人はこの場所が持つ特別な空気感を大切にしている。

――お二人は南町田というまちに対して、どんな印象を抱いていますか?
いい意味で東京らしくないですよね。緑が豊かで山も見えて。「こ こ東京なんだよ」って言うと驚かれるくらい自然が残っている。お店のまわりも緑に囲まれていて、来店するたびになんだか元気がもらえるんです。
荒井

人とのつながりを大事にしているまちだと思います。だから、このお店も開かれたコミュニティの場所でありたい。みんなで一緒に子どもを見守ったり、ふらっと立ち寄れたり、そんな場所であり続けたいですね。
友井

多くの人が行き交うようになり、日々変化し続ける南町田。それでも6889cafeの扉を開ければ、エチオピアコーヒーの香りとあたたかな会話が変わらず出迎えてくれる。自然の恵みと、人々の思いがつむぎ出す縁を感じに、あなたもこの店に足を運んでみてはいかがだろうか。

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