
ある日、田園都市線の用賀駅に降り立った編集部。駅の周辺を散策していると、足元に文字が彫ってあることに気づきました。「あきのたの かりほのいほの…1」「ちはやぶる かみよもきかず…17」「このたびは ぬさもとりあへず…24」百人一首だ!しかも番号がついている。もしかして、百首すべて彫ってある?ならば辿ってみよう!そんな好奇心で歩いた「いらかみち」という遊歩道をご紹介します。
百人一首の道、正体は「いらかみち(用賀プロムナード)」

好奇心を掻き立ててやまないこの道、実は1986年に完成した「用賀プロムナード」という遊歩道。「生活と文化の軸をつくる」ことをテーマに、用賀駅から世田谷美術館(砧公園内)までの約1キロメートルをつなぐ道です。美術館までの道のりを楽しく歩いてもらうこともテーマのひとつで、「歩く・感じる・楽しむ・憩う」といった歩く人の快適さも重視されています。
設計を手がけたのは、象設計集団。平成14年には、世田谷区の地域風景資産にも選ばれています。遊歩道といいつつも歩行者だけの道ではなく、車も通行できることが特徴的です。「いらかみち」では、“人はのびのびと、車はつつましく”行き交います。
その遊歩道のうち約600メートルが、次の4つのゾーンで構成された「いらかみち」です。
- みちのホール(用賀二条通り内)
- みちのギャラリー(西用賀通り沿い)
- みちのサロン(用賀三条通り内)
- 並木みち(用賀三条通り内)

「いらか」は「瓦」という意味で、いらかみちには趣のある淡路瓦が多用されています。瓦というといわゆる屋根瓦を想像してしまいますが、いらかみちの瓦は多種多様!瓦のデザインの幅広さに驚くはずです。

そんな遊歩道になぜ百人一首が彫られているのかというと、『日本の“いにしえ”に心を遊ばせてもらう』ためなのだとか。用賀がかつての大山道の宿場町だったこともあり、その歴史を感じられるようにもなっているんですね。
今回は、百人一首の一首目が彫られている用賀駅から砧公園方面に向かうルートで散策してみます。
用賀駅北口から「いらかみち」へ出発


用賀駅の北口から出発して、「用賀プロムナード」の始点に到着。この左手には「世田谷ビジネススクエア(GMOインターネットTOWER)」があります。そして、足元に彫られた一首目はきっと多くの方が教科書で目にしたことがある天智天皇の歌です。ここから「いらかみち」を目指します。
用賀駅前エリアを進む

「いらかみち」を目指してどんどん進みます。途中には地元のお客さんで賑わう「用賀商店街」も。編集部が散策していたのは午前中ですが、ランチタイムに向けた仕込みなのか、お肉を焼いているようないい匂いがします。


「世田谷ビジネススクエア(GMOインターネットTOWER)」の外側を周るように歩いて行くと、大きな三角形のオブジェが目をひく「用賀くすのき公園」が現れました。かなりの広さがあり、まるで広場みたい!
この公園は「用賀サマーフェスティバル」の会場としても親しまれているのだそう。ちなみに2025年は8月23日〜24日に開催されます(詳細は公式Instagram @youga.summer.festival または note https://note.com/ysf000 にて)。
いよいよ「いらかみち」へ



いよいよ「いらかみち」に到着!ここから先は、住宅が建ち並ぶ静かな街並みが続きます。道中には百人一首のほかにもたくさんのアートがあるとのことなので、さっそく見にいってみましょう。
「いらかみち」のアートを探索

世田谷区からいただいた資料によると、「いらかみち」にはオブジェなどのたくさんのアートがあるのだそう。完成から40年ほど経っていますが、当時のおもかげを感じながら、ひとつひとつ辿ってみます。
「へびのかわの水路」が主役の「みちのホール」ゾーン

「いらかみち」には「へびのかわの水路」など水路がいくつかありますが、これらはもともと存在していた水路を再現したもの。ドブ川のようになっていた水路を美しく生まれ変わらせて、等々力渓谷があることでも有名な谷沢川上流のイメージを表現したのだそうです。さらに、瓦の道路舗装に彫られた曲線もまた、“流れ”を表しています。





美術館の存在感が増す「みちのギャラリー」ゾーンへ

「みちのギャラリー」は、車道とは完全に分離した歩行者専用の道。道の両脇にそれぞれ水路と展示台があり、この先にある世田谷美術館のポスターなどが掲示されています。さきほどの「みちのホール」よりもさらにアート感の強い空間です。



巨大なチェスコートは必見!「みちのサロン」ゾーン

ここまでの道中はオリエンタルな雰囲気が強かったのですが、和風とも洋風とも割り切れない、どこかエキゾチックな雰囲気に変わるのがこの「みちのサロン」。ビビッドな色使いのモチーフや巨大なチェスコートなど、まさにアート!と思える仕掛けがたくさんあります。





「並木みち」ゾーンは緑が気持ち良い散策路

THE遊歩道!という佇まいで歩行者を迎えてくれるのが「並木みち」ゾーン。道のすぐ横には大きな畑が広がっていたり、はたまた迫力のある鬼瓦が鎮座していたりと、多彩な表情がおもしろい場所です。











唯一無二の「瓦の道」で散策を楽しんでみては
懐かしい雰囲気の中で「歩く・感じる・楽しむ・憩う」を楽しめる「いらかみち」。完成から40年ほどが経ち、周囲の街はきっと大きく変化したはず。けれど、「いらかみち」は今でも、当時の空気感を残しているように感じられます。道中に散りばめられた百人一首や瓦、アート、草花などが、散策をより一層豊かにしてくれる。そんなことを感じる道でした。
用賀プロムナード
・所在地:東京都世田谷区用賀4丁目、上用賀5丁目
・世田谷区ホームページ:https://www.city.setagaya.lg.jp/02092/4321.html
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取材・文:SABO(東急公式サイト編集部)
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