現役駅係員による現地レポート「東急渋谷駅24時!」(前編)

東急公式サイト編集部

2025/6/30

東急線の渋谷駅に勤務する現役駅係員のAさんが渋谷駅の24時間をご紹介!駅係員がどんな仕事をしているのか、覗いてみませんか?駅係員の仕事、休憩時間の過ごし方などなど、駅係員だからこそわかる東急線の渋谷駅の裏側を前後編でレポートします。今回は前編です。

■東急電鉄株式会社 運輸部 渋谷駅 主任 Aさん
2006年入社。5社相互直通運転(東武・西武・東京メトロ・横浜高速)開業の営業施策や、東急線初の食事券付き企画乗車券「横濱中華街 旅グルメきっぷ」の立ち上げなどに携わる。2024年現在は渋谷駅にて駅全般の業務や駅係員の指導に従事。

※この記事は2024年に制作されたものを再編集しており、記事内の情報は制作時点のものです。

1|はじめに

東急線 渋谷駅の1日の乗降者数は約99万人(2023年度/東横線と田園都市線の合計)。東横線・田園都市線が走る東急電鉄の一大ターミナルである渋谷駅には、駅長以下約140人の駅係員が在籍しています。東横線・田園都市線だけでなく、東京メトロ半蔵門線・副都心線の業務担当も私たち東急線 渋谷駅の駅係員です。

駅長といえば、東急線各駅は17の地区に振り分けられていて、地区のことは「管内」と呼んでいます。たとえば、東急電鉄で最も新しい新横浜駅は「新横浜駅管内」と言って、日吉駅・綱島駅、そして新横浜駅と同じ日に開業した新綱島駅の4駅を管理しています。そのため、東急線には99駅あるのに、駅長は17名しかいないのです。

ちなみに17名の駅長の他に1人だけ統括駅長がいます。いわば「駅長の中の駅長!」でしょうか。その統括駅長の執務スペースは渋谷駅にあるんです。東急線で唯一、渋谷駅には2名の駅長が在籍しています。

「渋谷駅管内」は渋谷駅以外に管理している駅はありませんが、駅の構造上、東横線を担当する「ヒカリエエリア」と田園都市線を担当する「ハチ公エリア」、そして両線のお客さまが交差し、最も乗降が多い「宮益中央改札」を担当する「宮益エリア」の3つのエリアに分かれています。たった1駅しか管理していませんが、17管内ある中で在籍人数が一番多いのが渋谷駅です。

約140名のうち、1日に勤務するのは約50名です。当社に限らず鉄道会社の駅は「日勤」と「泊まり」の2種類の勤務形態があり、泊まり勤務者が多い傾向にあります。例として、私の1週間の勤務形態を紹介しましょう。
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・月曜日 9:00出勤
・火曜日 9:00退勤
・水曜日 公休
・木曜日 9:00出勤
・金曜日 9:00退勤
・土曜日 9:00出勤
・日曜日 9:00退勤
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※東急電鉄は「4週8休制」で、28日間に8日間の公休があります。

そうです。月曜日の朝に勤務が始まり、火曜日の朝まで働くんです。「えっ!いつ休んでいるの?」と感じるかもしれませんが、もちろん途中に休憩時間も仮眠時間もありますし、東急電鉄の駅係員の勤務時間は監督者より2時間短く設定されています。その日の勤務者が全員同じ時刻に出退勤する「総入れ替え制」を採用している鉄道会社もありますが、東急電鉄はシフト制。朝7時出勤の駅係員もいれば、昼過ぎに出勤する駅係員もいます。

たとえ出退勤がバラバラでも、駅の仕事は「チームワーク」で成り立っています。駅係員ひとり一人に役割があり、どれも欠かすことができません。そんな渋谷駅の1日を朝の9時から見ていきましょう。

2|9:00 ミーティング

ミーティングの様子
ミーティングの様子

朝のラッシュが落ち着きはじめた頃、渋谷駅のマネージメントを担っている駅長・副駅長・助役・主任でミーティングを始めます。泊まっていた助役から前日に発生した出来事や本日の重要事項の共有をもらい、終電後に行なう工事等を確認します。また、駅長・副駅長からお話をいただきます。

一方、現場を守る駅係員は、ホーム案内や改札、お忘れ物窓口、室内で勤務しています。もちろん、初電から終電まで必ず誰かがそのポジションに配置されています。各ポジションがどんな仕事をしているのかご紹介しましょう。

合図灯によるホーム案内。「ドアを閉めていいよ」と合図
合図灯によるホーム案内。「ドアを閉めていいよ」と合図

■ホーム案内
ホーム上の安全を守るポジションです。ホームで赤い旗を持って立っている駅係員を見たことはないでしょうか?地下駅の渋谷駅では赤い旗は見えづらいので、代わりに「合図灯(あいずとう)」と呼ばれるライトを持っています。駅係員が合図灯を高く掲げている時は、運転士や車掌に「車両のドアを閉めてもいいよ」という合図を送っています。ドアが閉まった後、もう1回高く掲げているのは「ちゃんとドアが閉まっているから発車して大丈夫だよ」という意味です。朝のラッシュ時のみホーム案内を行なう駅もありますが、渋谷駅は初電から終電まで、終日行なっています。

■改札
自動改札機の横にある窓口に駅係員が立っているのを見たことはありませんか?普段は自動改札にタッチしてスムーズに入出場するので、そこにいる駅係員に気づかない方もいるかもしれません。しかし、入出場でお困りごとやご質問があるお客さまは意外と多く、そこでご案内をしているのが「改札」のポジションです。特に、渋谷駅は訪日外国人のお客さまも多いので、日本人のお客さまより外国人のお客さまへの案内件数が多いこともよくあります。

■お忘れ物窓口
その名のとおり、お忘れ物を担当するポジションです。渋谷駅に届いたお忘れ物の管理から、遺失者への引き渡しまでを担当しています。遺失者不明の時は、数日間保管した後で警察に引き渡します。

■室内
東急電鉄では、駅のバックヤードのことを「駅務室」と言います。その駅務室内で勤務していることから「室内」と呼ばれていますが、ホーム上でお客さまが倒れた、コンコースでお客さま同士のトラブルが発生している等、何かが起きた時に真っ先に対応するのが室内勤務者です。また、近年は駅のバリアフリー化が進んでおり、車いすや白杖が必要なお客さまのご利用が増えています。渋谷駅では、「バリアフリー応対」が平均して1日約50件。休日などは100件を超える場合もあります。

3|12:00 休憩(1回目)

シフト勤務なので、この時間に一斉というわけではありませんが、早朝から勤務していた駅係員が交代で休憩します。ちなみに、数年前までは、みんなで食べられるように「食事作り」をすることもありました。

もし駅で不測の事態が生じた場合には、駅係員が一丸となり、早期復旧を目指して対応する必要があります。「同じ釜の飯を食う」ことによるチームワークの創出のほかにも、節約や栄養バランスを考えるなど、食事作りには色々な意味がありました。食べ終わったら、少しでも長く休息時間を確保したいので、ワンプレート料理が人気でした。

4|13:00 定期券うりば開店

定期券うりばで定期券を発行する様子
定期券うりばで定期券を発行する様子

私たちは「定発(ていはつ)」と呼んでいますが、この時間に定期券うりばが開店します。数年前までは朝7:30から営業していましたが、今では各駅の券売機で定期券が購入できるだけでなく、払い戻しまでできるので、東急線の定期券うりばは減少しました。

5|17:00 休憩(2回目)

この時間から23時ごろにかけて、交代で夜の休憩が始まります。渋谷駅は渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエア、東急フードショーの食品売り場と直結しているので、そこでお弁当を買う係員もいます。パパッと買い物ができるので、便利ですね。

東京最大級のターミナル駅の仕事

さて、9:00〜17:00の渋谷駅の様子をお伝えしてきました。ちょっと珍しい勤務形態や本番さながらの訓練など、普段はなかなか見聞きできない内容だったのではないかと思います。後編では18:00〜終電の様子をお伝えします。ぜひご覧くださいね。

東急渋谷駅24時!後編を読む

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