音楽好きのたまり場で生まれる、夢とご縁。三軒茶屋にあるShow Chick Boyの行きつけへ
- 取材・文:飯嶋藍子
- 写真:西村満
- 編集:山元翔一(CINRA)
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飲み屋にカフェ、古着屋、書店、レコード店など、ユニークなお店がひしめく三軒茶屋。都内屈指のおしゃれで文化的な街には、俳優や芸人、クリエイターなど表舞台で活躍する人、食通、のんべえ、何かを成し遂げようと人知れず夢を追う人など、生活に一服の憩いを求める多様な人々が夜な夜な行き交う。
そんな三軒茶屋を拠点に活動するシンガーソングライターのShow Chick Boyさんに、ミュージシャンとして大きな夢を追いかける日々の支えになっている行きつけのお店を紹介してもらった。
1軒目はイタリアンバル「RIKI-A」、2軒目はアルバイト先でもあるカラオケスナックダーツバー「TOKYO 1LBK CLUB」。TOKYO 1LBK CLUBでは「音楽の大先輩」だという店主のユタカさんとともに、三軒茶屋の魅力やShow Chick Boyさんが掲げる大きな目標についても語ってもらった。
それでは早速、RIKI-Aから訪ねてみよう。
三茶で手軽に本格イタリアンを食べるならRIKI-Aへ
――RIKI-Aに来店したきっかけは?
アルバイト先のバーの店長に連れてきてもらったのが最初です。店が近く、スタッフ同士の仲もいいんですよ。それからパスタとピザが食べたいときはここに来るようになって、お店のメニューは全部食べました。
Show Chick Boy
――全メニューを食べたShow Chick Boyさんのお気に入りは何でしょう?
「バジル&マスカルポーネピザ」「アラビアータ」「とうふの和ヒージョ」「ハイボール」です。「バジル&マスカルポーネピザ」は、すごく大きいのですが、カリッとした薄い 生地なので酒のつまみにぴったり。 大量のマスカルポーネが乗っているんですけど、意外とあっさりしているのがいいんですよね。僕はもともと辛いものが好きなのですが、RIKI-Aの「アラビアータ」の辛さは絶妙。さらにタバスコをかけて食べるのが大好きです。
Show Chick Boy
――とうふと青ネギの和風アヒージョ「とうふの和ヒージョ」はRIKI-Aならではのメニューですね。
そうですね。じつは僕、いまダイエット中なので、「とうふの和ヒージョ」なら罪悪感なく食べられます(笑)。ハイボールとの相性が抜群です。
Show Chick Boy
――RIKI-Aはどんなお店ですか?
イタリアンを食べたかったらRIKI-Aに来れば間違いないです。朝5時までやっているので、深夜まで仕事や予定があって、でも、ちょっとお腹減ったな、1杯飲みたいなっていうときにもおすすめです。
Show Chick Boy
お客さん同士での共作・共演も。三茶で「いい音楽の縁」を紡ぐTOKYO 1LBK CLUB
次に向かったのはRIKI-Aから徒歩1分の「TOKYO 1LBK CLUB」。今年6年目を迎えるカラオケスナックダーツバーだ。店主のユタカさんも音楽活動をしており、店にはR&Bやヒップホップ好きの歌ウマたちが集う。
数年前、音楽をやりながらもフラフラと過ごしていたのを見かねたユタカさんが「うちで働けば?」と声をかけ、Show Chick Boyさんは現在も週一日程度ここでアルバイトをしているという。
職場であり、音楽仲間との出会いの場でもある「TOKYO 1LBK CLUB」について、そして、師弟のような兄弟のようなふたりの関係について語ってもらった。
――Show Chick Boyさんは、最初はお客さんとして 来店したのですか?
そうです。2019年頃にミュージシャンの友達に連れてきてもらったのが最初。ちょうど1曲目を出したときくらいだったかな。そこから半年くらいは普通に通ってました。
Show Chick Boy
そうだったよね。最初に曲を聴かせてもらったんです。作曲もできるし歌もうまいし、才能あるなあって思いましたね。でも、普段はフラフラしてるって言うので、「だったらうちで週一でもいいから働いたら?」って誘ったんですよ。 僕自身も音楽をやっているし、ヒップホップやR&B界隈のシンガーのお客さんがとても多い店だから、うちで働いていれば音楽の縁がつながるんじゃないかと思って。
ユタカ
――ミュージシャンのお客さんが多いんですね。
多いですね。歌ウマが集う店ですよ。カラオケのハードルがめちゃめちゃ上がっちゃって(笑)。この間、トラックメイカーの子が飲みにきて、そのときたまたまカラオケをしていたシンガーの子をスカウトしてました。 後日、「一緒にやったんですよ」みたいな話をしに来てくれて。そういう出会いがめちゃくちゃあると思うから、音楽をやりたい人は来てみてほしいですね。
ユタカ
――自分の曲をつくってほしいっていうシンガーの人も、ここでトラックメイカーに会えるかもしれないですね。
そもそもコンポーザーである僕も働いてますしね! 僕もTOKYO 1LBK CLUBでたくさんのつながりやきっかけをいただきました。実際、ここで出会った人と曲をつくろうって話になっていて。 最初はただ遊びに来ていただけなのにユタカさんに「働きな」って言ってもらえたことは、僕にとってすごく印象に残 っているし、大きな出来事でした。
Show Chick Boy
人と出会うだけで何かが生まれるかもしれないし、そのチャンスって、じつは結構転がっているんですよ。だから、そのきっかけになればいいなって軽い気持ちで誘いました。「よし、お前を食わしたるわ!」って感じじゃなくてね(笑)。 いろんなつながりができるけど、Show Chick Boy自身にちゃんと才能があるから、仕事の話も広がっていくんだと思います。
ユタカ
――ユタカさんから見てShow Chick Boyさんはどんな人ですか?
イマドキの子ですね。ふにゃふにゃしてそうで意外と芯があるよね。
ユタカ
ロールキャベツ系男子っす。
Show Chick Boy
あはは! Show Chick Boyの活動を見ていると、本当にかっこいいことをやっていると思いますし、刺激をもらっていますよ。僕も25年くらい音楽をやっているけど、長年やっているとどうしても同じことばかりになっちゃって「俺ら大丈夫か?」って不安になるんです。 だから、若い子たちがどういう音楽をやっているのかすごく気になるし、Show Chick Boyはかなり最先端だからいろいろ教えてもらっています。
ユタカ
――Show Chick Boyさんから見てユタカさんはどんな人ですか?
音楽の大先輩なので、まずは大きいリスペクトがあります。でも、お店にいるときは、純粋に一緒に音楽を楽しんでくれる人。本当に感謝しています。お店自体も、ファミリー感、仲間感を感じるとてもあたたかい場所です。
Show Chick Boy
「最終目標はつんく♂さん」。三茶で夢を追いかけるShow Chick Boyさん
「TOKYO 1LBK CLUB」での出会いも活かしながら、その活動の幅を有機的に広げていっているShow Chick Boyさんは、そもそもなぜ音楽を始めたのだろう? そして、音楽を通してこれからどんな活動をし、どんな夢を叶えていきたいのだろう?
――Show Chick Boyさんが音楽を始めたきっかけは?
もともと小さい頃から歌うことが大好きだったんですけど、地元の大阪でバンドを組んでギターボーカルをやっていたことが音楽を始めたきっかけですね。高校3年生くらいからは家でDTMソフトをいじり始めて。
Show Chick Boy
――音楽をやるために上京したんですか?
いえ、20歳で上京してきたんですけど、音楽をやるためではなくて、何も考えずにフラっと出てきました。何をするかまったく決まっていなかったので、とりあえず飲食店で働いてみたりしたんですけど、仕事は遅いし、朝も起きられないし、遅刻するし……「自分って何ができんねん……」っていう状況でした。
Show Chick Boy
――そこから音楽をやろうと思ったのはなぜ?
そんな状況でも結局いちばん好きなのは音楽で、音楽なら頑張れるかもしれないって思ったんです。ほかにやりたいこともないし、東京にせっかくいるし、ちょっと気合い入れてやってみようと思って、その時期にTOKYO 1LBK CLUBにも来るようになりました。
Show Chick Boy
――Show Chick Boyさんはこれからどんなミュージシャンになっていきたいですか?
「Show Chick Boyだから聴きたい」と思ってもらえるようなアーティストになりたいと常々思っています。音楽自体すでに世の中にあふれているなかで、「Show Chick Boyであるべき理由」や「Show Chick Boyだからいいんだよ」ってことを追求していきたいですね。リリースはコンスタントにやりつつ、いままであまりやっていなかったライブもぼちぼちやっていきたいと思っています。
Show Chick Boy
――Show Chick Boyさんの最大の目標を教えてください。
最終地点はつんく♂さんみたいな、いい曲をつくるプロデューサーになることです。いまはサブスクでたくさんの曲が発表されるから、どれだけ曲がかっこよくても半年後には誰も聴いていないってことがよくあるんです。 そうじゃなく て、10年20年ずっと聴かれる曲を人生で1曲でもいいからつくりたい。それで印税でおっきい家に住みたいです! それが僕の目標ですね。いまはそのために、まずは、まずはShow Chick Boyとしての活動を頑張ろうと思っています。そのままShow Chick Boyで行き切ってもおもしろいなとは思うんですけど、最終的にはプロデュースの仕事につなげていきたいですね。
Show Chick Boy
Show Chick Boyさんがリリックとトラックを手がけた楽曲「I Wanna Be Your Lover feat. SKRYU /Show Chick Boy」を聴く(YouTubeを開く)
まだ何も成し遂げていなくてもいい。誰も取り残さない三茶の街と縁
大きな目標を胸に、「今日も三軒茶屋で知り合った人と仕事することが決まったんですよ!」と笑うShow Chick Boyさん。ここから着実に夢に近づこうと進むShow Chick Boyさんと、三軒茶屋に店を構えるユタカさんの考える三茶の魅力とは?
――お二人が感じる三軒茶屋の魅力は?
まだ何も成し遂げていない、これからばんばんやっていくぞって人も受け入れてくれる街です。一緒に頑張ろうぜって思ってくれる人がたくさんいる。成功している人たちも、これから来る人たちに目を向けてくれていて、誰も取り残さない懐の深い街だと思います。
Show Chick Boy
音楽に限らずいろんな人がいるよね。芸人さんやクリエイター、一般の仕事をしている人だっていて。飲み屋街なのでおもしろいヤツがよくも悪くもいっぱいいますよ。 ダメなヤツもいるんだけどさ(笑)、そいつから学ぶこともあるし、本当に頑張っているヤツもたくさんいるし、老若男女ごちゃまぜの街です。みんな和気あいあいと楽しくやっている村っぽい感じがあります。店同士も横のつながりが強くて、お互いの店の雰囲気を理解し合っているし、絆がある街ですね。
ユタカ
――いろいろな縁がある街でありながら、特に音楽をやっている人はTOKYO 1LBK CLUBで新たな出 会いや夢を叶えるきっかけを見つけられるかもしれませんね。
うちに来たら誰かと出会えます。ロックバンドとかだったらもっといい店があるからそっちを紹介したいけど(笑)、R&Bが好きな人、歌うことが好きな人は来てみてください。 音楽をやりたいっていう人じゃなくとも、カラオケバーなので歌うのが好きなら楽しんでもらえると思いますよ。素人だけど音楽をかじっていた人もいるし、これから何かやりたいっていう人も来るし、何かしら音楽に関わっていたいと思っている人も、歌好きも、ぜひ!
ユタカ
一見華やかに見える街と、そこに行き交う人々の営みを支える大小さまざまな絆と縁。路地をひとつ入ると、そんな三軒茶屋の魅力にきっと触れられるだろう。
毎日を充実して過ごす人、会社や学校に馴染めない人、真面目な人、ダメな人、社会から認められるような何かを成した人、まだ何も成し遂げていない人……そんなことはおかまいなしといった三軒茶屋には、美味しい料理でもてなしてくれるお店、独自のコミュニティで人と人をつなぐお店がたくさんある。
三軒茶屋の街に訪れ、いつもと違う角を曲がると、あなたの毎日を変えてくれるお店や「縁」と出会えるかもしれない。RIKI-AやTOKYO 1LBK CLUBには、そんな何かが起こりそうな匂いが漂っていた。
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