なぜIT企業が「本気の社内盆踊り」を?
GMOインターネットグループが渋谷で育む、人をつなぐワークカルチャー

夏になると、渋谷駅近くのオフィスに巨大なやぐらが現れます。GMOインターネットグループが毎年開催する夏祭り・盆踊り大会「GMO夏祭り」です。同社が「パートナー」と呼ぶ従業員たちが一堂に集まり、浴衣や法被を身にまとって盆踊りを楽しみます。会場となるコミュニケーションスペースには大きなやぐらが組まれ、プロによる着付けやヘアセットまで用意されるという本格ぶりです。

なぜ、IT企業がリアルな場での交流に、これほど力を注ぐのでしょうか。その背景をたどると、働く人同士のつながりを大切にする同社のワークカルチャーと、多様な人や文化が行き交う渋谷との深い関係が見えてきました。取り組みを牽引するグループ総務部 部長の佐山祐太氏と、企画・運営を担う新里篤子氏に、盆踊りに込めた思いや、渋谷で働く魅力、まちとともに描く未来について聞きました。

プロフィール

佐山 祐太

GMOインターネットグループ株式会社 グループ総務部 部長。GMOサムライコンテンツスタジオ株式会社 取締役。

2013年入社。Eコマース事業や採用部門の責任者を経て、現在はグループ本体のグループ総務部長を務める。グループ約160社・約8300名のパートナーが支え合い発展するためのファシリティ、福利厚生、ブランド、グループ横断イベントの統括を担当。高校時代からDJ活動を続けており、社内文化づくりにもその感性を生かしている。

新里 篤子

GMOインターネットグループ株式会社
グループ総務部 ファシリティチーム 福利厚生チーム 兼任マネージャー

2019年入社。当初は福利厚生チームに所属し、施設の運営管理を担う。現在はオフィス環境を構築するファシリティチームと福利厚生チームのマネージャーを兼務し、パートナーが前向きに働ける快適な環境づくりとイベント現場の指揮を執る。

「憧れ」から「誇り」へ――渋谷で働くということ

――まずは、GMOインターネットグループでのこれまでのお仕事と、渋谷というまちとの関わりについて教えてください。

佐山私は2013年に入社し、Eコマースや採用部門を経て、現在はグループ総務部の責任者を務めています。高校生の頃からDJをしていた私にとって、音楽やカルチャーのまちである渋谷は、憧れの場所でした。上京して、今こうして渋谷を拠点にする企業で働けていることに、大きな誇りを感じています。

新里私は2019年に入社し、一貫してパートナー向けの福利厚生施設やオフィスの構築・運営に携わっています。渋谷は、もともと休日によく訪れていた大好きなまちです。ここで働くようになってからは、新しい情報や人が絶えず集まるまちのエネルギーを、毎日肌で感じています。

佐山渋谷は若者や新しいカルチャーを寛容に受け入れるまちですよね。GMOインターネットグループは、1995年にインターネット事業を開始し、その後、渋谷を拠点に成長してきました。時代の変化に応じて、私たち自身も「アンチエイジング」を繰り返し、新しい挑戦を続けていく。そうした企業の姿勢は、渋谷の空気感と深く通じていると感じます。

「社食がほしい」の声から始まった、人が集う場づくり

――現在の盆踊りにつながる、パートナー同士の交流の場づくりは、どのように始まったのでしょうか。

佐山私たちは、オフィスには大きく二つの役割があると考えています。一つは、渋谷駅前に拠点を構えることで、認知度や採用力を高め、事業の成長につなげるビジネスの武器としての役割。もう一つは、パートナー同士のコミュニケーションを育む場としての役割です。いわば、社外に企業の存在感を示す天守閣(お城)であると同時に、働く人たちをつなぐ拠点でもあります。

GMOインターネットグループでは、2007年に経営危機に直面しました。その際、代表の熊谷が私財や約45億円相当の不動産を投じて自己資本を補強し、不採算事業から撤退。2008年2月に金融危機の終結を宣言し、業績が回復した頃に「一緒に戦ってくれたパートナーにも還元したい」ということで、2010年10月の全社会議で福利厚生施設の希望を募ったところ、「社食がほしい」という声が上がりました。それをきっかけに、2011年、セルリアンタワー内にコミュニケーションスペース「シナジーカフェ GMO Yours」を開設しました。夏祭りも同じ年に季節のイベントとして始まり、浴衣で仕事をした後、夜の交流会を楽しむスタイルが定着していきました。

24時間利用できるコミュニケーションスペース「シナジーカフェ GMO Yours」。ドリンクやフードを無料で提供し、金曜日の夜にはBarタイムも設けています。

――夏祭りは、どのようにして現在の本格的な盆踊りへと発展したのでしょうか。

新里2023年に、「やぐらを立てて、本格的な盆踊りを開催したら面白いのではないか」というアイデアから、夏祭りを発展させました。

佐山毎年アンケートを実施し、良かった点や「こうしてほしい」という要望を、翌年の企画に反映しています。運営側のアイデアにパートナーの声を取り入れながら、少しずつ内容を磨いてきました。

新里「シナジーカフェ GMO Yours」に大きなやぐらを設置し、その周りをぐるっと囲んでパートナーが思い思いに盆踊りを楽しむのですが、当日は日中から浴衣での勤務も推奨しています。社内で着付けやヘアセットができる体制も整えました。2023年に本格的な盆踊りを始めて以来、年々盛り上がりを増し、2025年は約1200人のパートナーが参加しました。フロア全体が満員になるほどの熱気で、運営する私たちも年々力が入っています(笑)。

運営にはさまざまな意見が寄せられるため、何を取り入れるか、判断が難しいこともあります。それでも、いただいた意見は「できることはすべてやる」という姿勢で検討しています。一見、突拍子もないような案でも、運営チームや「シナジーカフェ GMO Yours」の運営を担う協力会社様と一緒に、どうすれば実現できるかを考えます。それが実際に形になり、パートナーに喜んでもらえたときの達成感が、次の企画への力になっています。

「シナジーカフェ GMO Yours」に大きなやぐらが組まれ、和太鼓や縁日も登場。当日はパートナーも浴衣や法被姿で仕事をし、オフィスは昼間から祭りの雰囲気に包まれます。
夏祭りでは、浴衣姿の佐山さんが自らDJを務め、音楽で会場を盛り上げます。

IT企業だからこそ大切にする、リアルな交流

――なぜ、これほど大がかりな仕掛けを設け、空間づくりにも力を注ぐのでしょうか。

佐山私たちはITやデジタルの会社ですから、業務そのものはオンラインでも完結できます。一方で、人は昔から焚き火を囲み、歌ったり踊ったりしながら絆を深めてきました。同じ場所に集まり、体験や感情、熱量を分かち合うことは、人間にとって根源的な営みです。オンラインだけでは得がたい一体感もあります。だからこそ、コミュニケーションスペースにきちんと投資し、人が集まって体験を共有できる機会をつくる。それが仲間同士の結束を高め、企業や組織の強さにつながると考えています。

新里GMOインターネットグループには現在、グループ会社が約160社あり、渋谷エリアだけでも約5000人のパートナーが働いています。事業領域も職種も多種多様です。

夏の盆踊りだけでなく、数十種類の本物の桜で会場を彩る春のお花見、ボジョレー・ヌーヴォーを楽しむ催し、クリスマスなど、季節ごとにさまざまなイベントを開催しています。さらに、毎週金曜日の夜にはBarタイムも設けています。こうした場があることで、普段は接点のない部署やグループ会社のパートナー同士も、立場を越えて気軽に言葉を交わせるようになります。

春のイベント「お花見」では、「シナジーカフェ GMO Yours」が本物の桜で彩られ、華やかな空間に変わります。

佐山名前を大きく、ひらがなで表示した社員証をコミュニケーションツールとして活用するなど、面識のない人同士でも話しかけやすくする仕掛けも取り入れています。「普通のこと、当たり前のことはしない」という発想で工夫を重ね、パートナーが「この会社で働くのが楽しい」「オフィスに来たくなる」と思える環境を目指しています。

――こうした交流は、実際の仕事にも生かされていますか。

新里グループ会社の垣根を越えて連携するプロジェクトが増え、その打ち上げにBarタイムを利用することもあります。コロナ禍で一度途切れた交流を取り戻すのは、簡単ではありませんでした。それでも、イベントや企画を重ねるなかで、今では仕事を終えたパートナーが自然と「シナジーカフェ GMO Yours」へ集まる文化が戻ってきました。

金曜日の18時以降はBarタイム。お酒や食事が無料で提供され、取引先を招くこともあり、社内外の交流の場として活用されています。

佐山普段なら、ミーティングを設定しなければ話す機会のないパートナーとも、ここで顔を合わせれば、立ち話をきっかけに課題が解決することがあります。抱えている課題や自分のアイデアを気軽に共有できる。そうした偶発的な会話も、仕事を円滑に進める力になっています。

渋谷の刺激と出会いを呼び込む、開かれたオフィス

――渋谷のまちから受ける刺激は、オフィスづくりや社内文化にどのように生かされていますか。

佐山渋谷は、多様な人が行き交い、新しいカルチャーが生まれるまちです。私たちも、社内でDJイベントやワインイベントなどを開催するほか、ミーティングスペースに花や現代アートを取り入れるなど、感性が刺激される環境づくりを大切にしています。パートナーがまちの自由で多様な刺激を吸収し、オフィスに持ち帰ることで、新しい仕事の発想が生まれる。そんな良い循環ができていると感じます。

ミーティングルームのテーブルを彩るフラワーボックス。ミーティングフロアには現代アートも展示され、美術館のような空間が広がります。

――オフィスを社外に開くことで、どのような交流や効果が生まれていますか。

佐山「シナジーカフェ GMO Yours」はパートナーのための場所ですが、私たちの事業と親和性のある社外向けのカンファレンスや勉強会にも会場を提供し、共催することがあります。金曜日は社内のBarタイム、月曜日から木曜日はカンファレンスや勉強会などに活用され、日々さまざまな人が会社を訪れます。

人が集まることで、鮮度の高い情報も入ってきます。それに触れたパートナーの発想が広がり、新たな提携や取引、サービスの利用につながることもあります。オフィスを開くことが、人と情報を呼び込み、新たなビジネスを生み出すきっかけになっています。

新里まちの人の流れや雰囲気が移り変わるなか、「シナジーカフェ GMO Yours」にも日々さまざまな人が訪れ、イベントを通じた交流が生まれています。社内外の人が同じ場を共有することで、渋谷とGMOインターネットグループ、それぞれのカルチャーが交わり、新しいつながりが生まれていると感じます。

渋谷とともに育む、新しいワークカルチャー

――最後に、渋谷のまちとともに、どのような未来をつくっていきたいですか。

新里「渋谷に行けば、ほかにはない面白いことや新しい出会いがある」。そんなワクワク感を、これからも社内外に届けていきたいです。渋谷ならではのイベントが生まれたり、社外の方から「この場所を使いたい」という声が寄せられたりするなかで、渋谷とGMOインターネットグループ、それぞれのカルチャーが交わっていることを実感しています。こうした接点をさらに広げ、渋谷とともに新しい文化を生み出していきたいですね。

佐山私たちは1995年にインターネット事業を開始し、その後、セルリアンタワーを中心に少しずつオフィスを広げてきました。その歩みのなかで、周辺の商店街や地域の皆さまに支えていただき、渋谷とともに発展してきたという自覚があります。また、2025年からは「GMO渋谷エンタメ祭」へ特別協賛をさせていただき、渋谷エリアのさらなる活性化と魅力向上に貢献しております。

現在は、2051年を見据えた長期計画「55カ年計画」を掲げ、定量的な目標のもと取り組みを進めています。再開発によって進化を続ける渋谷とともに私たちも成長し、より良いサービスを通じて、人々を笑顔にしていきたい。まちと共存・共創しながら、働く人が心から楽しめる新しいワークカルチャーを、ここ渋谷から発信し続けていきます。

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