多くの電力を使用する事業者としての取り組み
(大口需要家)
全線再生可能エネルギー由来の電力100%運行

2022年4月1日より、東急線全路線・全駅(世田谷線の駅舎は除く)では、CO2排出実質ゼロの再生可能エネルギー由来の電力100%にて運営しており、これは日本初の取り組みです。
世田谷線では、2019年3月25日(電気記念日)から再生可能エネルギー100%電力での運行を開始しており、その後、東横線をはじめとした鉄道7路線で使用する電力に対象を拡大しました。
また、2023年3月18日開業の東急新横浜線も加わり、鉄道8路線および世田谷線は東京電力エナジーパートナー社の再エネ電力メニュー(※1)により、CO2排出量が実質的にゼロとなりました。
その結果、2023年度は一年間で 約163,488tのCO2を削減しました。一般家庭の1年間のCO2排出量に換算すると64,876世帯(1世帯当たり約2.52t※2で算出)に相当します。
- RE100に対応したトラッキング付非化石証書活用によるメニュー
- 環境省「令和5年度家庭部門のCO2排出実態統計調査結果について(速報値)」より
駅への太陽光発電システムの設置

東横線・目黒線元住吉駅のホーム屋根の部分とコンコース上部に、140kW分の太陽光システムを設置しました。
このシステムにより、2023年度は元住吉駅全体の電力使用量の約10%を賄っています。
また、ホーム屋根の一部 には、遮光性の高いテフロン膜を使用し、自然光による快適さを提供しています。
大規模蓄電池の設置
関東大手民鉄で初の取り組みとして、大規模災害時のBCP強化(※1)、鉄道電力の効率的な活用(※2)、電力系統安定化への寄与を目的に、2025年度に、田園都市線に電力を供給する市が尾変電所に大規模蓄電システム(出力:2.1MW、容量:10MWh)を設置します。
一般的に太陽光や風力などの変動再生可能エネルギーは、天候に応じて供給量が需要量を上回り余剰電力が発生すると、電力系統の安定化のため出力抑制が必要となりますが、大規模蓄電池を設置することで、太陽光や風力の発電量が増える時間帯に余剰電力を貯め、再生可能エネルギーの主電力化と電力系統の安定化への貢献を目指します。
- 大規模災害による広域停電時に、駅間で列車が運行不能となり、お客さまの閉じ込めが発生してしまうリスクなどがありましたが、大規模蓄電池システムの導入により、駅間に停止した列車に電力を供給し最寄り駅まで移動させることが可能になり、お客さまの避難方法の拡充が期待されます。
(災害時電源供給区間:田園都市線たまプラーザ駅~長津田駅、最大電源供給時間:4時間) - 平常時は鉄道の電力需要が高い朝・夕ラッシュ時間帯に蓄電池から放電し、時間帯によって増減する電力消費量の平準化、電力コストの低減を図ります。


余剰回生電力を駅施設で有効活用する装置の導入
東急線は、これまで、電車にブレーキをかけた際に生じた電力(回生電力)を、他の電車の加速に使用することで省エネルギー化を図ってきましたが、使い切れない回生電力がありました。そこで、南町田グランベリーパーク駅に駅舎補助電源装置を設置し、使い切れない回生電力を駅の照明などで利用することで、エネルギーを最大限有効活用しています。

車両の省エネ化の追求

当社はこれまで、「人と環境にやさしい車両」をコンセプトとし、バリアフリー対応や車内の利便性や快適性を向上させた車
両「5000系」「6000系」「7000系」の導入を進めてきました。
2018年3月には、さらに進化させた新型車両「2020系」を田園都市線に、「6020系」を大井町線にそれぞれ導入し、2019年11月には、「3020系」を目黒線に導入しました。
新型車両(2020系、6020系、3020系)は、音が静かなモーターや駆動装置を使っているため、外に出る音が旧型車両(8500系)よりも約10dB低減しました。また、新しい制御装置でモーターを効率よく動かし、車内照明や前後のライトをすべて省エネのLEDにすることで、消費電力が旧型車両と比較し約半分となりました。
2025年度には大井町線に導入予定です。引き続き、導入から20年を超える車両を中心に更新を行い、車両の省エネ化を行ってまいります。
鉄道施設の省エネの取り組み
電気設備のLED化
様々な電気設備をLED化することにより、消費電力の削減に努めています。車両の照明は、東急線全車両のLED化を完了しており、駅構内の照明についても、2025年3月現在、85駅のLED化が完了しています。蛍光灯からLED化することで約50%の消費電力を削減しています。
その他にも、ホーム上の行先案内表示器や線路上の信号機、踏切警報灯器などの機器についてもLED化を推進しています。


省エネ機器の導入
車掌がお客さまの乗降を確認するためのモニターや司令所のディスプレイは、ブラウン管から液晶にすべて切り替えており、これにより約30%の消費電力を削減しました。券売機やチャージ機、精算機などの駅務機器についても、省エネ型機器への更新を進めています。
2025年3月現在、省エネ券売機339台、省エネチャージ機138台、省エネ精算機78台の更新が完了しました。


運転士によるエコ運転
東急線では、運転士が運転方法を工夫して、消費電力を削減する「エコ運転」を実施しています。
列車は加速して必要なスピードに達すると、そのスピードのまま惰性で走ります。この特性を活かし、一定速度での惰行を多用し、運転士が加速する時間を減らす手法で、ダイヤ上の余裕時間や駅間の勾配を活用しながら、全列車で「エコ運転」を実施しています。
また、車庫においても、パンタグラフをおろして待機電力を削減するなど、電力節約に努めています。この結果、新型車両導入の効果も相まって、2019年度比で2024年度の消費電力を1両1kmあたり約10%削減しました。
今後もより効果的なエコ運転を推進してまいります。