めざせお散歩マスター。にゃんぞぬデシが2日間で出会った、自由が丘の知られざる魅力 【前編】
- 取材・文:原里実
- 写真:大西陽
- 編集:藤﨑竜介(CINRA)
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自由が丘に、暮らすように滞在する。
まちに「泊まる」からこそ、つながる縁を紹介する「ご縁泊」の自由が丘編。今回は、繊細な歌詞と澄んだ歌声が人気のシンガーソングライター・にゃんぞぬデシさんをゲストに迎え、このエリアに滞在してもらいつつ、魅力的なスポットを巡った。
滞在の場を提供してくれたのが、自由が丘で民泊業を10年以上営み、数えきれないほど多くの訪問客を迎え入れてきた三木春子さん。彼女が地元民だからこそ知る名店などを教えてくれたおかげで、自由が丘の新しい魅力を発見することができた。
この前編では、2日間にわたる滞在の1日目をお届け。春子さんおすすめの焼肉店「花十番」、300点近くのアンティークカップを展示するユニークなカフェ「ロイヤルクリスタルコーヒー」などを訪れたにゃんぞぬデシさんは、どんな体験をして、何を感じたのだろうか。
自由が丘在住25年。「お散歩マスター」の民泊オーナー・春子さん
こんにちは。シンガーソングライターのにゃんぞぬデシです!
にゃんぞぬデシ

ふんわりとした水色のワンピースに身を包み、自由が丘駅に元気よく現れたにゃんぞぬデシさん。じつは、地元が東急線沿線で、自由が丘は学生のころときどき訪れていたそう。

雑貨店でかわいいものを探したり、カフェで歌詞を書いたり。いろんな思い出が詰まった大好きな場所なので、今回参加できてとてもうれしいです!
にゃんぞぬデシ

そんなにゃんぞぬデシさんと、まずは滞在先の民泊施設へ。オーナーの三木春子さんが、やさしい笑顔で迎えてくれた。
いらっしゃい。
春子

はじめまして、にゃんぞぬデシと申します!
にゃんぞぬデシ

春子さん宅のダイニングルームには、世界各国の小さな置物や雑貨がずらり。
わー、かわいい!
にゃんぞぬデシ



大半は、若いころにいろいろな国で買ってきたものでね。あと私がこうやって家にお土産を飾っていると知って、宿泊する海外の人が持ってきてくれることもあるんです。
春子

民泊を始めて10年以上になる春子さん。もともと海外旅行が好きで、さまざまな国を訪れてきたが、現在はもてなす側だ。宿泊するのは、海外から来る観光客がほとんどだという。



春子さんは、いつから自由が丘にお住まいなんですか。
にゃんぞぬデシ

もう、25年以上前になるかしら。娘一家と一緒に住むことになって、ここに越してきたの。自由が丘は初めて?
春子

いえ、じつは地元が東急線沿線で。学生のころから、何回も遊びにきているんです。
にゃんぞぬデシ

あら。どこかですれ違ったこともあるかもしれないね(笑)。私、自転車とかでこのあたりを散策するのが大好きなの。
春子

そうなんですね、素敵!
にゃんぞぬデシ

田園調布とか、もうちょっと南に足を伸ばして、アジサイの有名な多摩川台公園とか。それから、大岡山にある東京科学大学のキャンパスからは、天気がいいと富士山が見えるのよ。桜の季節はまたきれいだし、いいのよね。
春子

すごい。春子さん、お散歩マスターですね!
にゃんぞぬデシ

お友達と会うときは、やっぱり自由が丘駅のまわりが多いわね。そうすると、自然と「お決まりのコース」ができてくるのよ。
春子

今回はそんな春子さんの「お決まりのコース」のなかから、焼肉店「花十番」、カフェ「ロイヤルクリスタルコーヒー」の2軒を訪れてみることに。
どちらの店も、味と居心地が最高! 宿泊する人たちにもおすすめしていて、結果的にみんな大満足してくれるの。
春子

良質な肉をお手ごろ価格でたっぷり味わえる、焼肉店・花十番
春子さんの家を出て、少し遅めのランチを食べに花十番へ。
お肉、大好きなので楽しみです!
にゃんぞぬデシ

迎えてくれたのは、店長の藤江雅典さん。
にゃんぞぬデシと申します、よろしくお願いします!
にゃんぞぬデシ

いらっしゃいませ。
藤江

マイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』が大好きで、約20回劇場に足を運び、それが音楽の道を志すきっかけになったというにゃんぞぬデシさん。そんな彼女にとって、うれしい偶然が……。
(にゃんぞぬデシさんのプロフィールを見たうえで)じつは僕もマイケル・ジャクソンが大好きなんですよ。
藤江

え!?
にゃんぞぬデシ

そこで2人は意気投合。しばらく音楽トークで盛り上がる。

じつは、1987年に行われたマイケル・ジャクソンの初来日ツアーに行ったんです。横浜スタジアムの公演でした。
藤江

えー! 私は亡くなってしまったあとに好きになったので、うらやましい……。お店のBGMで、彼の曲をかけ ることもあるんですか?
にゃんぞぬデシ

ありますよ。でもランチタイムは、つい先日まで約1年間ずっとレゲエでした。レゲエで焼肉って、常夏っぽくて面白いかなと。さすがにそろそろ気分を変えようかなと思い、いまは1990年代あたりの洋楽をかけています。
藤江

音楽がお好きなんですね。
にゃんぞぬデシ

恥ずかしながら、若いころはシンガーソングライターになりたくて。大学を卒業してから、アルバイトをしながらがんばっていた時期もあるんです。だから、にゃんぞぬデシさんのことは心から応援したいです!
藤江

感激です……。
にゃんぞぬデシ

って、音楽の話ばかりしていますね。そろそろ店や食べ物の話をしましょうか(笑)。
藤江

藤江さんによれば、花十番は今回訪れた「本店」と「自由が丘店」の2店舗が自由が丘にある。本店は長らく創業の地・麻布十番にあったが、2023年に移転。地域密着のスタイルで、家族の会食からソロ焼肉までさまざまな用途に対応できる店として、老若男女に愛されている。
親会社が肉の卸売をしているので、新鮮で良質な肉をお手頃価格で提供できるのが特徴の1つです。自由が丘に高級なイメージを抱く人もいるかもしれませんが、じつは気軽に食べられる店が多いんですよ。
藤江

ランチメニューは、1食1,000円台前半からの豊富なラインアップが特徴。今回は藤江さんおすすめの人気メニュー「上撰盛合わせランチ」をいただくことに。
肉は牛タン塩、和牛中カルビ、和牛赤身ももの3種類。そこにサラダ、キムチ、ナムル、豆腐、スープ、ライスか小ビビンバ、そして食後のコーヒーとシャーベットがつきます。
藤江



す、すごいボリューム……! 自分専用のバイキングのような贅沢感です。
にゃんぞぬデシ

踊るような食感の牛タン、とろけるような脂身の中カルビ、そして旨みが凝縮した赤身ももに舌鼓を打つにゃんぞぬデシさん。

美味しすぎます!
にゃんぞぬデシ

キムチやナムルも、自家製でついつい手が伸びる美味しさ。これだけ贅沢なラインアップにもかかわらず、小ビビンバにはナムルに加えてそぼろ肉も載っていて、抜かりない心遣いを感じさせる。
春子さんが花十番をすすめてくれた理由が、よくわかりました。
にゃんぞぬデシ


自由が丘は、自分の感性を大切にしている人が多い。そういった人たちが見ているのは「本当の価値があるかどうか」だと思います。それを大切にしてきたからこそ、長く愛していただけているのかもしれません。
藤江


300点のアンティークカップがズラリ。創業者の夢を具現化したロイヤルクリスタルコーヒー
花十番を出て、まちをちょっと散歩してみる。夕方前の自由が丘は、学校帰りの中高生から、ベビーカーを押したお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんまでさまざまな人たちが行き交う。
急いでいる人が少ないからか、のんびりした雰囲気で歩きやすい。お散歩にぴったりですね。
にゃんぞぬデシ


にゃんぞぬデシさんにとって、散歩は「最高の遊び」なのだという。
とにかく歩いていたいタイプなんです。物理的に止まっていると、なんとなく停滞しているような感じがして。だからオフの日も、家でのんびりすればいいのにわざわざ出かけていって、気づくと2万歩も歩いていたり(笑)。
にゃんぞぬデシ


自由が丘駅近くを通る九品仏緑道は、絶好の散歩コース。春子さんも、よく利用するのだとか。道沿いには数多くのベンチが設けてあり、休憩場として愛されている。
高校生のころ、このあたりのベンチに座って弾き語りをして、友達に聴いてもらったことがあったなぁ。なつかしい。
にゃんぞぬデシ



歩いてお腹も空いたところで、次なる春子さんのおすすめスポット、ロイヤルクリスタルコーヒーへ。
自由が丘駅の正面口から徒歩約3分、インテリアショップや学習塾が並ぶ通りに、ひときわ目を引く壮麗な建物がある。

わ、お城みたい!
にゃんぞぬデシ

なかに入ると、約300点のアンティークカップがショーケースに飾られている。数十年をかけて、ヨーロッパを中心とする世界中から集められたコレクションだ。

店を案内してくれるのは、店長の岩瀬裕治さん。

自由が丘にはよく来ているのですが、失礼ながらこのお店は初めてです。いつからこちらに店舗を?
にゃんぞぬデシ

オープンは、2021年7月です。ドトールコーヒーの創業者・鳥羽博道が、数十年におよぶコーヒー人生のなかで行き着いた「夢」をかたちにした店です。
岩瀬

あのドトールコーヒーの創業者さん! 「夢」というのは?
にゃんぞぬデシ

古き良きヨーロッパ風の建物に、焙煎設備や優 雅なカフェを設け、カップやミルも展示した「コーヒーを取り巻く極上の空間」です。
岩瀬

1階は、挽きたてのコーヒーを手頃な価格で味わえるカジュアルなスペース。そして2階はよりハイクラスなコーヒーや、店内でパティシエがつくるケーキなどを、上質なインテリアなどとともに楽しめるくつろぎの場だ。
今回は、2階でゆっくり休憩させてもらうことに。
どれも美味しそう! メニューが豊富で迷うなぁ。
にゃんぞぬデシ

出してもらったのは、新メニューの「スフレドリンクセット」。

スフレって食べるの初めてです! どんな味なんだ ろう。
にゃんぞぬデシ

ふっくらとした食感が特徴です。ぜひ温かいうちにどうぞ。
岩瀬

いただきます!
にゃんぞぬデシ


……ふわふわのプリンみたい!
にゃんぞぬデシ


カスタードクリームに、メレンゲを入れて焼いています。たしかにプリンの味と近いかもしれないですね。
岩瀬

バニラビーンズが……香水にしたいくらい、いい香り。コーヒーとも相性抜群ですね。
にゃんぞぬデシ

うちのコーヒーはもちろんブラックでも美味しいのですが、少し砂糖を入れて甘みを足していただくと、苦味が抑えられてすっきりと飲めます。だからスフレの甘みとも好相性なんだと思います。
岩瀬

ふわふわだから、どんどん食べられる!
にゃんぞぬデシ

軽やかな食感に導かれて、あっという間に完食。

優雅な気分を味わえて、とても幸せな時間でした。この店みたいな特別な雰囲気のある場所って、心を華やかにしてくれるから、住むまちにあるとうれしいですね。
にゃんぞぬデシ

外に出ると、すっかり日の暮れた自由が丘のまちに、夜の明かりが灯っていた。

春子さんの家に戻ると、「おかえりなさい」とふたたび笑顔で迎えられホっと一息。
私のおすすめのお店、どうだった?
春子

もう、最高でした。どちらのお店も、また行きたいです。
にゃんぞぬデシ

「でしょう?」と得意そうな笑みを浮かべる春子さん。
在住20年以上の春子さんのおすすめを頼りに、新たな自由が丘の楽しみ方を発見した1日目。
2日目は、豊富なメニューが魅力のたい焼き店「Medetaiya」(メデタイヤ)、日本で初めて「デパート」を名乗った「自由が丘デパート」、老舗写真専門店「ポパイカメラ」などを訪問予定。はたして、どんな体験が待ち受けているのか——。
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