慶應義塾大学 蟹江憲史研究会(所在地:神奈川県藤沢市、代表:蟹江 憲史教授、以下「蟹江研究会」)、東急株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:堀江 正博、以下「東急」)、東急不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:西川 弘典、以下「東急不動産ホールディングス」)は、3者共同で広域渋谷圏※1において、東急、東急不動産ホールディングスまたは両社の連結子会社が運営する商業施設・ホテル内にある飲食店35店舗を対象に、「食のサステナビリティ調査」を実施したことをお知らせいたします。回答店舗の8割が「サステナビリティの取り組みをしたい意向がある」といった結果が出るなど、渋谷の飲食店におけるサステナビリティに関する現状やニーズが明らかになりました。(調査結果は別紙)
また、集計データを元に蟹江研究会・東急・東急不動産ホールディングスの3者にてディスカッションを行い、飲食店の「食のサステナビリティ」に関する取組みや意識、課題などについて意見交換し、学生目線での提案もなされました。
今後もサステナブルで豊かな社会の実現に向け、「ビヨンドSDGs※2」も意識しながら、未来世代との対話やそこから生まれる斬新なアイデアをまちづくりに生かしてまいります。
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※1
広域渋谷圏:東急グループが都市開発・魅力向上の両面から渋谷のまちづくりを進めている渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内のエリアを指す。
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※2
ビヨンドSDGs:ここでは、2030年に目標期限を迎えるSDGsに代わり、今後国際社会において議論がなされる国際目標を指す。


■慶應義塾大学 蟹江憲史研究会からの考察・提案について
今回のアンケート調査は、蟹江研究会の学生有志13 名にもご協力頂いています。店舗への聞き取り形式でのアンケート調査の実施と結果に基づく学生目線での考察及び提案を行っていただき、その内容に基づき、蟹江教授・学生・企業の3 者でディスカッションを行いました。
学生からは、飲食店側・消費者側の双方の意見・課題を整理した上で、サステナブルの定義が分かりにくく、知識も不足していることに加え、消費者として味や価格などサステナビリティより優先したいポイントがあるため、飲食店としてサステナブルな取組みを行う場合には、消費者の来店動機と結び付けることが重要と分析されました。そのうえで、飲食店、商業施設、消費者それぞれのサステナビリティ意識を高めるイベント開催や蟹江研究会によるサステナブルなレストランへの認証・表彰といった具体案の提案もなされました。
今回のディスカッションと学生からの提案を受け、東急および東急不動産ホールディングスは、飲食店をはじめとした事業者のサステナビリティの推進と、消費者のエクスペリエンスの最大化を両立する具体的な施策の検討を進めます。また、未来世代との対話を継続的に行うことで、常に新しい視点を取り入れ、渋谷でしか体験できない「渋谷型都市ライフ」の実現を目指していきます。




■慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 蟹江教授からのコメント
今回の共同調査によって、渋谷地区のレストランやカスタマーにおけるSDGsに対する意識が初めて明らかになりました。我々が事前に想像していた以上に、レストランでSDGsを推進していくことには様々な課題があること、それを乗り越えるには多くの工夫が必要であることなどがわかってきたことは、次のステップに向かううえで大変重要な知見となりました。レストランでは、味などお客さんが求めることとSDGsとを上手に絡め併せていくことの重要性が改めて明らかになりました。
昨年の国連「Summit of the Future」で決議の「Pact for the Future」では、SDGsの次の目標設定に関する多国間プロセスが2027年にスタートするとの見込みです。こうした、「ビヨンドSDGs」の議論は、今年から日本でも始める予定でいます。SDGs達成へ向けた活動は2030年で終わるものではなく、この先も続くものだという認識の下で、これから行動を加速させることが重要です。レストランのSDGs推進はまだまだ広がりを見せていない中、2030年の先の持続可能な社会へ向けて、今回の共同調査は大事なステップになったと実感しています。

≪蟹江教授プロフィール≫
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、慶應義塾大学SFC 研究所 xSDG・ラボ代表、グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)Keio STAR 副所⾧。
専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。国連から4年に一度出版されるSDGs の評価報告書『Global Sustainable Development Report(GSDR)』2023 年版執筆の15 人の独立科学者の一人に、国連事務総⾧から任命された。また、日本政府SDGs 推進本部円卓会議構成員、EarthCommission 委員・大使など、SDGs や地球環境問題を中心に、国際的、国内的な研究・政策関連活動で多方面にわたり活躍中。博士(政策・メディア)。