<1>東急グループ代表 野本弘文 年頭あいさつ(東急グループ各社トップに対する年頭あいさつ)
(1)日 時 2024年1月4日(木) 9時00分
(2)要 旨
コロナ禍も収まりつつあり、今年は4年ぶりに普段の正月を迎えることができると思っていましたが、元日に能登半島沖での地震が発生し、時間とともにその被害の大きさが明らかになっております。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。現地にはグループ各社の施設もあり、また社員の皆さんの親戚や、中には帰郷されて被災された方もいるのではと心配しており、一日も早い復旧を望んでいます。
また、2日には羽田空港で航空機事故が発生しました。こういった災害・事故は何時、どこで、どの様な形で起きるかわかりません。被害を最小にするためには、常日頃からリスクに対する事前の想像と、そして起きた後の行動が大事であることは皆さんもお分かりのことかと思います。もし自分に起きたらどう行動するか、そのために普段どのように心がけておくのかなど、色々な災害・事故・事件に対して、自分事として追体験、疑似体験をすることも大事で、日ごろの訓練も同じです。羽田空港での航空機事故で僅かの時間で旅客機に乗っていた全員が脱出できたのは、日ごろからの訓練と、乗客への緊急避難の告知を繰り返し行っていた結果ではないかと思います。
さて、昨今の国際・政治情勢の不安定、そして工事費をはじめ物価・人件費の高騰など、事業環境の変化はめまぐるしいですが、そうした状況下でも中長期的な未来を想像し、機会を捉えていかなければなりません。DX、GXを抜きでは考えられず、特に「生成AI」については、インターネット誕生以来の大きなインパクトをもたらす可能性を感じています。
また、建設業・運輸業では「2024年問題」もいよいよ本番となり、人手不足の問題はあらゆる業種に影響を及ぼしていますが、その解決手段の一つとしての活用も大切だと思っています。
今年は、インバウンドもコロナ前以上に本格回復し、人流も活発になると期待されています。コロナなどで停滞していた事業や、新たな事業をしっかり進め、これからの成長に繋げてほしいです。
来年度から新たな中期経営計画が始まる会社もありますが、一番大事なことはトップ自らが、何をすべきかというビジョンを示し、5年後、10年後の会社の姿を、どの様な会社に成長しているのかを、従業員の皆さんと共有することです。何を実現するのか将来あるべき姿をイメージしてその蓋然性を高めることが大事であり、皆が夢をもって楽しく働きたくなるような中期経営計画にしてほしいと思います。
12年前に「3つの日本一、ひとつの東急」を掲げ、「日本一訪れたい街 渋谷」というビジョンを打ち出しましたが、昨年初めて「外国人旅行客が訪れた街」で渋谷が1位になりました。グループを挙げて、多くの社員の皆さんが、このビジョン実現のため、たゆまぬ努力を続けてきた結果であると思います。ただ安心すれば、あっという間に衰退するのも現実であり、これからも、渋谷の街に多くの人が長い時間滞在し、何度も訪れたいと思っていただくために、常に「楽しさ、豊かさ、美しさ」を意識していただきたいと思います。
今年は渋谷駅周辺開発のトピックは多く、5月に「渋谷アクシュ」が竣工し、7月には「渋谷サクラステージ」が全面開業します。また春には、「東急プラザ原宿・ハラカド」も開業予定であり、「日本一訪れたい街 渋谷」に大きく寄与するものと思います。
私は、事業には「オープン、ネットワーク、組み合わせ」が大事と思っています。一言で「つなぐ」という言葉で言ってもよいです。東急のまちづくりは、創業以来、囲いこみではなく、常にオープンな発想であり、駅だけでなく周辺エリアと「つなぐ」ことで、回遊性を高め、まちの価値を上げてきました。開発の面的な話だけでなく、「渋谷QWS」での多彩な人々の交流促進や、渋谷区と設立した「シブヤスタートアップス」を通じてのオープンイノベーションも全く同じです。恵比寿に2028年に誘致予定のMITなどとも、新たな「つながり」を生み出すことで、渋谷のまちの魅力向上に繋げたいと思います。また、開発以外の事業においても、北海道や四国でも運行されるザ・ロイヤルエクスプレスや、再生可能エネルギー事業、空港事業なども「つなぐ」ことで、より付加価値が生まれることもしっかりと意識してください。
<2>東急(株)取締役社長 堀江正博 年頭あいさつ (東急(株)社員に対する年頭メッセージ)
(1)日 時 2024年1月4日(木) 9時50分
(2)要 旨
元日には能登半島沖で地震があり、石川から新潟に至る広範なエリアで多くの被害が出ました。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。
また、羽田空港での航空機事故では、乗客乗員が全員無事に脱出できたことは、日頃の訓練の成果でもあります。緊急時のお客さま避難誘導などの訓練をより積上げていきたいと考えています。
一方、首都圏では各事業の第一線で勤務している皆さんが、年末年始も変わらず真摯に業務に取り組んでくれたことで、当社グループでは大きな事故もなく、まずは御礼申し上げます。
昨年は、当社グループでもさまざまなことがありました。東急新横浜線開業・東横線でのワンマン運転開始・鉄道やバスの運賃改定です。新綱島の再開発が竣工し、綱島温泉駅設置以来の地元との新しい関係もスタートしました。また、日本に誇るエンタメ施設たる東急歌舞伎町タワーやベトナムビンズンでは、初の商業施設「SORA gardens SC」が開業しました。3月に東急線全駅のトイレ全てにウォシュレットが設置できたことは誇るべきことだと思っています。このほかにも東急セキュリティでは地域の見守り協定を自治体と順次締結してきましたが、今般、大和市との締結で、沿線17市区全部をカバーすることになりました。さらにインバウンド観光客の訪問率で、渋谷が初めて都内ナンバーワンに躍進しました。
今年についてですが、まず1月に札幌のすすきのに「札幌ストリームホテル」が開業します。同時に渋谷ストリームエクセルホテルがブランド変更し、渋谷ストリームホテルとなります。また、4月には沖縄でストーリーライン瀬長島が開業します。初の分譲コンドミニアム型ホテルとして、引渡後オーナーから運営を受託するもので、省資金でローリスクのホテルビジネス展開手法として今後に期待します。オフィスビルでは、渋谷アクシュが開業します。社有地がない地区で再開発に取り組み、無事に開業まで辿り着く予定です。以上のように、コロナ禍で地道にかつ先進的に取り組んだ事業が花を開く年と言えましょう。
留意すべき今年の事業環境についてですが、金融環境の変化「金利・量的緩和修正・円安修正」がこれにあたります。これはマンションの売れ行きや、不動産価格そのものに影響を及ぼします。また不動産業では工事費の高騰も相俟って、事業の推進には十分留意してもらいたいと思います。また物価値上がりによるコスト高騰も懸念材料です。さらに2024年問題で労働時間への制約・人手不足の激化が予想されます。いずれも当社の事業展開に大きな影響を及ぼすことから、積極的な対応に注力します。一方で、コロナ禍を乗り越え、大きく飛躍する年になります。まさに辰年です。全社一丸となって昇龍の如く、踏み出しましょう。
現在、来年度からの中期経営計画を策定中です。従来からの経営数値目標に直結する事業やプロジェクトのみならず、社員の皆さんからの提案は、個々に拝見し、必要に応じて経営計画や長期構想に取り込み、具体的にプロジェクト化が有用と思われるものは、可能な限り早く着手したいと考えています。サステナブルな企業価値の成長のためには、従業員の皆さんの一人一人がモチベーション高く、クリエイティビティを発揮して働けることが大事です。そのための制度や施設、環境を整備していくことに併せて、会社の目指す戦略や方向性について、より分かり易く、私自身でさまざまな方法で発信していきます。
先程、野本会長の年頭あいさつで「つなぐ」という今年のキーワードが紹介されました。地域や事業を私達が仲立ちして「つなぐ」ことで、新しい関係が構築されます。またグループの会社同士や各事業部門にあっても、組織を超えて「つなぐ」連携を図ることで、新しいアイディアが生まれ、ビジネスチャンスや顧客満足を向上させることになります。常に「つなぐ」発想とチャレンジ精神をもって、クリエイティブに仕事に取り組んでもらいたい。私自身も共に知恵を出します。「向こう傷はビジネスパーソンの勲章だ!」との五島昇元会長の言葉で締め括ります。