
私たちが口にした食物は、咽頭→食道→胃→小腸(十二指腸,空腸,回腸)→大腸(盲腸,上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸,直腸)→肛門を通り便として体外に出ます。この消化管は、くねるような運動(蠕動運動)により食物を移動させます。また、食物の栄養素を体内に取り込むために、消化酵素の力で栄養素を体の細胞組織レベルまで分解し吸収します。
消化管は、単なる食物の通り道ではないため、肝臓、胆道系、膵臓などの影響を受けるだけでなく個人の食習慣や精神状態により様々な病気が出現します。内視鏡検査は、食べ物の通り道を見るだけでなく、患者さまの背景を頭に入れ考えながら検査しないと診断や治療方針がたちません。
内視鏡を受けたことがないという人も多いのではないのでしょうか。意外に楽だったという方も多くなってきていますので、医師に相談してみませんか。
食道の病気で増加傾向にあるものに逆流性食道炎があげられます。症状としては、“胸が焼けつくような感じ”“酸っぱいものがあがってくる”といった症状が多いですが喉の違和感や咳の原因となることも知られています。原因は加齢や食生活などで食道と胃の間の下部食道括約部のしまりが悪くなるためと考えられています。
胃炎や胃潰瘍だけではなく胃ガンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ピロリ菌について色々な話を聞いた方も多いのではないでしょうか。
胃粘膜表面に炎症のある状態
萎縮により粘膜が薄くなり、粘膜下層の血管が透けて見える状態
胃粘膜再生能が低下して、腸上皮類似の細胞が増殖した状態
腺腫や癌との関連があるとされる。
粘膜の表層の上皮が炎症で脱落したもの
(びらんは潰瘍に比べ浅い)
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を総称して消化性潰瘍といいます。
胃や十二指腸の粘膜を自分で消化した結果生じた潰瘍の意。
日本人の7~8人に1人は潰瘍にかかると言われている。
がんの罹患は、胃癌が最も多くがん全体の20%で10万4千人にのぼる。女性の患者数は横ばいだが、男性は増加傾向。
死因としては男女とも2番目に多い癌(平成15年)でがん死亡全体の16%を占め、約5万人が死亡。胃癌の原因は多因で塩分過多、焼魚、焼肉、喫煙、ピロリ菌が原因として考えられている。
1983年にオーストラリアのマーシャルとワレンにより報告され、この功績により2005年にノーベル賞を得た。細胞を弱めてしまう毒素をピロリ菌が出すことにより粘膜に炎症を起こし、胃炎や潰瘍を発症させる。
40代以上の80%に感染している。
胃潰瘍患者の65~80%、十二指腸潰瘍の90%に存在し、ピロリ菌を除菌(1週間の内服治療)することにより、大部分の潰瘍再発が抑制。
多くは無症状で6mm以上では内視鏡的切除術の対象
食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取増)で増加傾向。
2003年より女性の癌死亡の原因として1位になった。
便潜血検査受診者の7~8%が陽性でそのうち30%に大腸ポリープ、3~5%に大腸癌(50%以上は早期癌)が見つかる。
消化管の病気は多岐にわたるため、広く浅く学んでいただきました。
内視鏡の発達は著しく、上部消化管内視鏡では、鎮静剤投与による苦痛軽減を図り、下部消化管内視鏡では硬度可変大腸内視鏡を導入し患者さまの苦痛軽減および安全安心の医療を提供できるよう努力していきたいと考えています。
ポリープ癌に対する内視鏡的ポリープ切除術に始まった胃がんに対する内視鏡的治療は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)の手技の確立により広く認知されるものとなりました。さらに胆嚢摘出術に始まった腹腔鏡下手術の技術の進歩は、本邦における必然として早期胃がんにその適応を広げてきました。まず胃がんに対する内視鏡治療の現況を紹介してから、根治的治療と姑息的治療に分けて現在の適応と将来の適応拡大の可能性について述べます。
胃がんに対する根治的な内視鏡治療の第一選択としては内視鏡的粘膜切除術が広く行なわれるようになりました。2チャンネル法に始まり、キャップを用いた方法や増田らにより考案された食道静脈瘤結紮用のデバイス(EVL)を用いた方法などが行なわれています。またわれわれの考案したEMR困難部位へのアプローチを容易にし、一括切除率の向上をはかるための経皮経胃壁内視鏡下粘膜切除術ー胃瘻を用いた粘膜切除術(PTEMR)も行なわれています。
胃がんに対する腹腔鏡下手術は、まず自動縫合器による胃を楔状に部分切除することから始まり、次に大橋らにより腹壁から胃内に直接腹腔鏡と鉗子類を入れて粘膜切除を行なう腹腔鏡下胃内手術が考案されました。最近では、より根治性の高いリンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下幽門側胃切除術も行なわれるようになってきました。また切除不能胃がんに対しては 腹腔鏡下胃空腸吻合術が行なわれます。
またレーザー治療に代表される組織破壊法も早期胃がんの治療に単独で用いられるばかりでなく、EMRで不完全切除に終わった場合の追加治療法として高く評価されています。加えて進行癌に対するQOLの向上をめざした姑息的治療としても有効であります。さらにはバルーンカテーテルを用いた拡張術、ステント挿入術なども行なわれます。
このように早期胃がんの根治を目指した治療とQOLの改善をめざした姑息的治療のために様々な手技が行なわれるようになってきました。胃がんの内視鏡治療の適応はと問われれば、二次・三次リンパ節転移を伴い開腹術によってのみ切除が可能な進行胃がん以外はすべてが適応となります。もちろん技術的に可能なことが臨床的に有用であるとは限らず、内視鏡治療の適応も、とくに根治的治療については、広く受け入れられる合理的ものでなくてはなりません。しかし本来術式の適応は、適応が一人歩きするものではなく、患者さまそれぞれの身体的条件や社会的条件によって柔軟に対応できるものでなくてならないのは言うまでもありません。
内視鏡的粘膜切除術については、「リンパ節転移のないと考えられる粘膜内に限局する高分化型腺癌ー隆起型で20mm以内・陥凹型では10mm以内で潰瘍瘢痕を伴わない」が現在得られているコンセンサスであります。今後の方向としては、高分化型腺癌であれば表面隆起型(IIa)で30mm、表面陥凹型(IIc)で20mmまでは拡大可能でしょう。一括切除にこだわらなければ、現在の技術でこの適応の拡大は十分に達成可能であります。
問題は、低分化型腺癌であります。現在絶対適応からははずしている施設が多いのですが、われわれの経験では、10mm以下であれば完全切除が可能と考えています。ただし浸潤範囲の同定が難しい場合があるので、十分に広範囲に切除する必要があります。またレーザー治療の追加も根治性を向上させる上で有効であります。
深達度については、粘膜下層に微小浸潤であれば十分に根治が得られると思われますが、脈管浸潤を伴う場合や粘膜下層に広く浸潤する場合は、リンパ節転移の頻度が約15%あることを考えれば、なんらかの追加治療が必要となります。
腹腔鏡下胃部分切除術では、胃の全層切除が行なわれ、近傍のリンパ節の検索も可能であることから、粘膜切除術よりも適応の拡大がはかれます。つまり粘膜下層まで浸潤のみられる高分化型腺癌や潰瘍瘢痕を伴う陥凹型の早期胃がんそして低分化型腺癌も浸潤範囲が同定できれば対象となりえます。通常早期胃がんのリンパ節転移は一次リンパ節にみられることが多く、一次を飛び越していきなり二次リンパ節のみに転移することはまれであるので、一次リンパ節を術中に迅速病理診断に提出し、転移がなければ局所切除で根治が得られます。転移があれば、そのまま系統的リンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下胃切除術を行なうか、開腹術に変更します。腹腔鏡下胃部分切除術で注意しなければならないのは切除断端が外翻してしまうので、断端再発のチェックが難しいことであります。このためサージカルマージンは粘膜切除術の場合よりも大きくとらなくてはなりません。また胃の形態によっては術後の狭窄と胃内容の停滞に留意する必要があります。とくに前庭部では要注意であります。したがって腹腔鏡下胃部分切除術の場合、病変の大きさの面からの適応拡大は慎重を要します。
腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の適応については、まだ議論の多いところであります。二次リンパ節である7番、8番の郭清も可能であることから規約上のD2郭清は可能となります。つまり理論的には一次リンパ節転移のあるN1症例までが適応ということになります。また漿膜浸潤のある場合や広範なリンパ節転移のある症例では、ポート部の再発を考慮しなければならず、リンパ節の問題だけで適応を決められるわけでもなさそうであります。今後の検討を要する問題であります。
胃がんに対する姑息的治療としての内視鏡的治療は、患者さまのQOL改善のために行なわれます。すなわち出血部位や狭窄部に対するレーザー治療、バルーン拡張術、ステント挿入術などが行なわれます。また減圧目的あるいは経腸栄養のための経皮内視鏡的胃瘻造設術も行なわれています。姑息的治療としての腹腔鏡下手術は、バイパス術としての胃空腸吻合術、癌性腹膜炎に対する診断を兼ねた腹腔内抗腫瘍薬注入用リザーバー留置術などが行なわれます。
以上、胃がんに対する内視鏡治療の現況と適応について概説しました。議論のある点も多々ありますが、今後器械の進歩とわれわれの技術の向上により内視鏡治療はますますその適応を広げていくことはあっても、狭まることはないでしょう。