
講師 : 東急病院 ソーシャルワーカー/社会福祉士 杉田 寿美子
日本は超高齢化社会を迎え、今後20年間で高齢者数は約2倍となります。平成37年(2025年)には戦後すぐ生まれた団塊の世代が75歳に到達し、高齢化に更なる拍車がかかる年と言われています。
昭和48年に70歳以上の医療費が無料化されたことにより、高齢者1人あたりの医療費は急速に増加し、病院のサロン化、社会的入院の増加が社会問題となりました。
健保・政管健保は、リストラによる加入者の減少、標準報酬月額の低下等により保険料収入が下がり、国保は失業者や高齢者の流入で財政を圧迫され、このままでは医療保険制を維持することが困難です。
そこで国が打開策として打ち出したのが「医療制度構造改革」です。主な柱として(1)70歳を過ぎても現役並みの所得を維持している方には、70歳以下の方と同様に自己負担割合を3割とする。(2)75歳以上の高齢者の方を対象に別枠で「後期高齢者医療制度」を創設する。(3)診療報酬の見直し(引き下げ)。(4)特定健診・特定保健指導の導入。などがあります。
病院と診療所では役割が異なります。体調が悪いな・・・と思ったらまず診療所へ。診療所ですむ治療はわざわざ病院まで足を運ぶ必要はありません。なぜなら、診療所は「診療所で解決しないものは病院に紹介する」という窓口的な役割も担っているからです。このような診療所の役割を「かかりつけ医」と呼んでいます。
そして、診療所では対応できない高度医療や入院治療を請け負うのが病院です。二次医療機関で治療できないような高度な治療を要する場合は、二次医療機関から大学病院などへ紹介されます。大学病院などでは他の医療機関からの紹介状を持参した患者さんは優遇され、紹介状を持参しない患者さんには、治療費とは別に特定診療費(各病院によって異なりますが、およそ¥5,000くらい)を請求することがあります。
一昔前の病院は病気の治療、リハビリ、場合によっては長期療養とオールマイティにこなす【なんでも屋】でした。でも今は違います。一病院完結型の医療ではなく、病状に合った病院へ患者さんが移動するという移動型医療です。病院には急性期治療を行う病院、リハビリを提供するリハビリ病院、長期に医学的管理を必要とする方のための療養病床などがあります。病院の機能が分化し、お互いに連携しながら医療サービスを提供するというのが、現在もまた今後も求められる医療の姿です。
高齢者のための福祉サービスは大きく分けると「施設サービス」と「在宅サービス」とがあります。施設サービスは介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老人保健施設)、介護療養型医療施設(療養病床)、有料老人ホームなどがあります。
このうち、介護療養型医療施設(12万床)は平成24年3月で廃止される予定になっています。国は介護療養型医療施設をただ削減するのではなく、介護療養型老人保健施設という新型老健への転換を推進していますが、思うように進んでいないのが実情です。医療の必要性が比較的低い方の行き場が失われ、結果として自宅に戻らざるを得ない状況が生じるかもしれません。
在宅サービスは高齢者ができるだけ長く住み慣れた家で生活できるように、様々な専門スタッフがネットワークを作り、その療養生活を支えています。通院ができない方には訪問診療といって定期的にご自宅を訪問し、診察・治療してくれる医師がいます。訪問看護師は訪問医と連携を取りながら、点滴・胃瘻・カテーテルの管理、患者さんの全身状態のチェックを行います。もし入院が必要になった場合には訪問医の連絡を受け、病院は速やかに入院の受け入れを行います。またこれ以外にも、ご自宅でリハビリの継続を希望される方には訪問リハビリ、身の回りのお手伝いをしてくれるヘルパーさん、在宅サービスのコーディネートをしてくれるケアマネジャーさんは頼もしい相談相手です。今は患者さんのご希望があれば、たとえ人工呼吸器をつけていても、24時間の点滴や常時酸素マスクが必要なご状態でも自宅で療養することが可能です。がん末期をご自宅で家族に囲まれながら過ごされ、ご自宅で最期を迎える方も増えてきています。
生活習慣病を予防するために食生活、適度な運動、禁煙を心がけることが大切です。
日ごろから体調をよく相談でき、病気になったときに親身になって相談に乗ってくれる診療所の先生。できれば顔も広く、ネットワークに富む先生だといざというときに大変力になってくれます(各医師会に「かかりつけ医紹介制度」があります)。
いつまでも自分でやらなければ!!と頑張っていると倒れてしまうこともあります。そうならないためにも適度にサービスを利用し、負担を軽くすることも必要です。
公的サービス以外でいざというときに力を発揮してくれるのがご近所さんです。新聞が新聞受けにたまっている…、最近夜電気がつかない…と役所に連絡してくれたおかげで、屋内で倒れているのを発見してもらった方がいます。また一人暮らしの方が突然入院したとき、パジャマや歯ブラシなど入院に必要な物品を届けてくれるのもご近所さんだったりします。常日頃、近所付き合いは面倒くさいな~と思っても、困ったときにちょっとした助け合いができるご近所さんは大事な存在です。
高齢者の相談窓口はお住まいの住所を管轄する地域包括支援センター、もしくは在宅介護支援センターです(各自治体で名称が異なることがあります)。
飲まないのに、外来受診のたびに薬を処方され、家には薬が有り余っているという方がいます。薬代も健康保険が一部負担していることを思い出してください。私たち個々人が小さな無駄をなくすことが、医療保険制度の維持にも繋がります。