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過去の公開講座

第56回 公開講座(6月18日開催)報告
「肝臓病教室」~生活習慣と肝臓・生活習慣とがん~

講師 : 東急病院 内科・消化器科 梶原 幹生

毎回御好評を頂いている「肝臓病教室」、今年2回目の教室が平成21年6月18日に開催されました。梅雨のすっきりしない天気の中、今回も50名を超える受講者の皆さんにお越しいただきました。今回の肝臓病教室のテーマは、「生活習慣と肝臓」、そして「生活習慣とがん」です。生活習慣をとりまく健康上の諸問題につき皆さん熱心に聴講されました。内容の要点につき下にお記しします。

近年の急速なライフスタイルの変化により、肝臓病の様相も変わりつつあります。中でも、肥満者の増加に伴って、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の存在が脚光を浴びる様になりました。NAFLDと、そしてそのより重症型である、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を中心にお話しを進めます(もう一つの大きなテーマである、アルコールと肝臓、アルコールと健康の問題については今年後半の肝臓病教室でより詳しく取り上げる予定です)。また、各種のがんも、長年の生活習慣と密接な関係がある事が明らかになりつつあります。消化器がんを中心に生活習慣とがんの関わりについても御説明します。

従来、日本の肝臓病はB型、C型といったウィルス性肝炎がその多くを占めており、社会の肝炎対策もその力の多くがウィルス性肝炎に注がれてきました。しかしながら、近年の生活習慣の変化、特に食生活の西洋化に伴い、生活習慣と肝臓との関わりが注目される様になり、特にNAFLD~NASHの存在が脚光を浴びています。今までは脂肪肝は良性な病態であり、重篤化する事は稀であると考えられてきましたが、NAFLDの中で炎症を伴う、より重症な型であるNASH患者については、病状の進行とともに肝硬変に至り、肝不全を呈したり肝がんが発症したりする例も多く報告される様になりました。実際、日本人に占めるNAFLD患者の割合も、昭和後期の10%強から、最近のおよそ30%まで、過去20年ほどで倍増している事が分かっています。日本人成人の中での肥満人口の割合も、特に男性を中心にちょうど比例する様に増加し続けています。つまり、NAFLDやNASHは、近年やはり注目を浴びている、メタボリック症候群の肝臓表現型とも言え(右図)、その点でも重要な疾患と考えられるに至っています。

NAFLD~NASHの治療としては、肝庇護剤の投与や脂質改善薬、そしてインスリン抵抗性改善薬などの血糖降下薬を用いたり、また著しい肥満を呈する患者には特に欧米を中心に減量手術が行なわれたりする事もありますが、マネージメントの中心はやはり食生活や運動といった生活習慣の改善にあります。実際、生活習慣を変えるだけで肝機能が正常値に戻る方も少なくありません。「肝臓病は生活習慣病」とも言え、健康増進のため生活習慣の改善が大変重要な訳です。

一方、生活習慣とがんについても、1981年に英国の研究者が、食生活の改善でがんの死亡を予防できる割合を35%と推定し発表して以来、さまざまな実験室レベルや疫学的な研究が行なわれ、その密接な関係が明らかにされつつあります。消化器がんのみで考えても、「肝臓がんと飲酒」は言うまでもない事ですが、今回の前半で取り上げた「脂肪肝と肝臓がん」のみならず、「食道がんと飲酒・喫煙」、「胃がんと塩分過多、野菜不足、喫煙(胃がんはピロリ菌との関連も注目されています)」、「大腸がんと動物性脂肪過多、野菜不足」などの関連性はほぼ確実視されており、こうした点からも、「がんも生活習慣病」と言っても過言ではありません。

国立がん対策情報センターなどが提唱する「がんを防ぐための12箇条」では、「1. バランスのとれた栄養をとる」、「2. 毎日、変化のある食生活を」、「3. 食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに」、「4. お酒はほどほどに」、「5. たばこは吸わないように」、「6. 食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる」、「7. 塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから」、「8. 焦げた部分はさける」、「9. かびの生えたものに注意」「10. 日光に当たりすぎない」、「11. 適度にスポーツをする」、「12. 体を清潔に」といった事で、がんの予防に努める様に呼びかけています。つまり、食生活の要点として、(塩蔵品が多かった点を除いては)米や穀類、海草や魚などの摂取が多かった日本の伝統的食生活を見つめ直す必要があると言えるでしょう。

お示しした様に、「肝臓病」も「がん」も、日常の生活習慣次第で発症や進行を予防できるものもあります。これを機に生活習慣を見直し、日々の健康増進に役立てましょう。

今年の残りの肝臓病教室では、さらに「肝硬変と肝がん」、そして「お酒と健康」といったテーマを取り上げる予定です。どうぞ御期待ください。

図解:NAFLD~NASHの要因