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過去の公開講座

第52回 公開講座(12月17日開催)報告
「がまんしない更年期」

講師 : 東急病院 婦人科医師 中田 裕信

更年期障害の治療であるホルモン補充療法(HRT)について

エストロゲン欠乏に伴う諸症状や疾患の予防や治療を目的に、閉経後女性の健康維持に高い期待が寄せられています。ところが、2002年のWHI(海外大規模試験)中間報告により、乳がんをはじめとする副作用が注目され、必要以上に恐れるあまり、本当に必要としている患者さまに使用が躊躇される弊害も出てきています。しかし、HRTを閉経後女性のヘルスケアに用いることは、合理的かつ有効な手段であり、より安全に行なうため、認識を整理する必要があります。

(I)HRTの期待される効果

医者のイラスト

1. 年期症状緩和

2. 骨吸収抑制、骨折予防

3. 脂質代謝改善

4. 血管機能改善

5. 血圧低下

6. 中枢神経機能

7. 皮膚萎縮予防

8. 泌尿生殖器症状改善

以上のような好ましい作用を引き出すには、年齢と投与経路を考慮することが重要です。

(II)HRTの有害事象

WHI報告では、乳がんの相対危機率が上昇し、そのうえ冠動脈疾患などに対する効果が疑問視される結果になりました。しかし、最近では改めていろいろなデータが出てきています。

乳がんに関して、WHI報告で26%上昇とは、具体的に説明すれば、HRTを平均5.2年受けた人は、1年間、1万人で8人増加し、発生率アメリカの3分の1なので3人増加するわけで、臨床的に何ら問題ない数字です。また2008年の国際閉経学会で5年以内のHRTはほとんど乳がんのリスクはないとしています。また厚労省、佐伯班(2008)によると相対危険率が0.432と低いことを示しています。このことは対象者を慎重に選択しリスクの少ない症例を選んだ結果と思われます。

冠動脈疾患に関して、開始年齢と投与経路が重要で、高齢者はすでに無症候性の心疾患を有すことがあり、リスクに関しては60歳で区切ることです。(WHIでは平均年齢63.3歳)経皮投与では経口投与の中性脂肪を上昇させ、LDL-Cを小粒子化し、血管炎症に促進的に作用するデメリットがありません。(WHIでは経口投与のみ)以上よりHRTは依然として有効性が期待されます。

(III)HRTの薬剤と投与方法

エストロゲン製剤には、結合型エストロゲン(E1)のほか、経皮型E2製剤の貼り薬、ジェル、E3製剤があります。現在、最も薦められる投与方法としてエストロゲンの貼り薬を連続投与、黄体ホルモンは周期的投与(1か月間のうち10~12日投与)であり、黄体ホルモンは、子宮体がん予防のため必要です。エストロゲンの貼り薬は、エストロゲンが消化管や肝臓を通らず、皮膚を通じて直接体内に吸収されます。また皮膚から徐々に吸収されるしくみになっていて、体内の量を一定に保ちます。貼り薬のメリットとして、

1. 体内で作られるものと同じ、天然型のエストロゲンが使われている。

2. 胃腸障害を起こしにくい。

3. エストロゲンが大量に肝臓を通らないため、肝臓への負担が軽減される。

4. 血液中の中性脂肪値を上昇させない。

5. 血栓形成への影響が少ない。

6. 血液中のCRP(炎症マーカーで、動脈硬化、心筋梗塞などとも関係する)値を上昇させない。

7. 副作用が発現した時には、はがすことができる。

(IV)HRTの管理方法

HRTによる効果の評価、有害事象の早期発見、有害事象の対象者別の薬剤と投与方法の選択などを明確にするための管理項目を示します。

投与前の管理(1)HRTの目的の確認(2)問診にて禁忌のない事を確認(3)HRT投与法の選択(4)投与前検査 血圧、身長、体重、血算、生化学検査、婦人科検査、乳房検査(5)インフォームド コンセント
投与中(毎回)問診
   (年に1~2回)血圧、身長、体重、血算、生化学検査
   (1年毎)婦人科検査、乳房検査
投与終了後(1~2年毎)婦人科検査、乳房検査を実施することを推奨する。

(V)安全なHRT

以上より安全なHRTへのキーワードとして、

1. 5年以内の施行

2. 60歳未満あるいは閉経後10年未満

3. エストロゲンの投与経路、種類

4. MPA(黄体ホルモン)の種類

などが挙げられる。

夕焼けの風景

がまんしない更年期、産婦人科医に気楽に相談し、HRTなど受けてうまく過ごし、よく言われますが、“夕焼け空は朝焼けに負けないくらい美しいですね。閉経後の人生を、夕焼けのように華やかで、明るいものにしましょう。”と言いたいものです。