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過去の公開講座

第51回 公開講座(10月23日開催)報告
「肝臓病教室」

講師 : 東急病院 内科医師 梶原 幹生

平成20年10月23日に公開講座「肝臓病教室」が開催されました。雨天の中、60名余りの方々が出席され、ウィルス性肝炎についての話題を中心に、慢性肝臓病について勉強されました。

1. 肝臓とその働き

肝臓はお腹の右上にある臓器で、その重さは成人で1.2~1.5 kg程あり、人体の中で最も重い臓器です。肝臓は糖や蛋白、脂質といった栄養分を代謝したり、アルコールや薬物その他の異物を分解、解毒したり、また消化液の一つである胆汁を合成したりする働きがあります。肝臓は人体にとってなくてはならない重要な臓器なのです。

2. 肝臓病の症状

肝臓病(非代償性肝硬変)の症状の図

肝臓病の症状には、白目(眼球結膜)や皮膚が黄色くなる(黄疸)、お腹に液体が貯まる(腹水)、足がむくむ(下腿浮腫)、意識状態が悪くなる(肝性脳症)、血が止まりにくくなる(出血傾向)など、さまざまなものがあげられます。しかし、これらの症状は肝臓病が相当程度進行してからはじめて現れる事が多く、病気の早期から中期の段階では一般的にほとんど症状がありません。肝臓が「沈黙の臓器」といわれる所以です。そのため、健康診断などで肝臓病が疑われた場合は、早めにかかりつけの先生と相談され、必要に応じて精密検査をお受けになる事をおすすめします。

3. 肝臓病の検査

肝臓病の検査で最も良く知られている項目は、血液検査で調べられるAST、ALTとγ(ガンマ)-GTPでしょう。AST、ALTはそれぞれ、GOT、GPTと呼ばれる事もあります。これらは肝臓の細胞の壊れる程度をあらわしたり、アルコール性肝障害の診断に用いられたりするものです。ただし、肝臓の評価にはこれらの検査だけで十分な訳ではもちろんありません。その他に、血液検査だけでも、血小板の数や、黄疸の指標であるビリルビン、肝臓の合成機能をしめす目安の一つであるアルブミン、さらにはB型肝炎やC型肝炎のウィルス感染を調べる血清反応など、多種多様の検査があります。また、血液検査だけではなく、超音波やCTといった画像検査や、顕微鏡で肝臓の組織を評価する肝生検などの検査もあり、これら種々の検査を行なって総合的に肝臓の状態の評価を行なうのです。

4. 肝臓病の原因

わが国においてB型肝炎ウィルスおよびC型肝炎ウィルスの感染者数は200万人を超えるとされています。そして慢性肝臓病の進行した状態である肝硬変の原因で最も多いのもこれらのウィルスによる慢性肝炎です。C型が最も多くおよそ6割、B型がおよそ2割とされています。アルコールによる肝障害がそれらに次ぎます。近年では食生活の西洋化から高脂血症や糖尿病などいわゆるメタボリック症候群の患者が増え、それと並行して脂肪肝による肝硬変が増えつつあり、問題となっています。

5. ウィルス性肝臓病の治療

肝硬変の原因の最も多くを占めるC型の慢性ウィルス性肝炎に対しては、インターフェロンの注射が効果的です。従来C型肝炎は治りにくいとされ、インターフェロン治療によるウィルス除去成功率も3割程度とされていました。しかし、近年インターフェロンの血液濃度が持続する様な薬(ペグ・インターフェロン)が開発され、またインターフェロンと併用する事でより効果を高めるのみ薬も開発されて、治療を最後まで行えた例で除去率6割以上と、成績は飛躍的に高まりました。ただし、インターフェロン治療には種々の副作用があり、慎重な経過観察が必要です。B型肝炎に対しても、インターフェロンや、その他ののみ薬が使用されます。インターフェロン治療の他にも、肝臓の働きをたすける対症的な治療である、肝庇護療法も行なわれます。

6. 肝硬変とその合併症

慢性肝臓病の進行した状態である肝硬変では、上でお示しした様にいろいろな症状があらわれる事があります。その他にも、肝臓がんの発生にも注意する必要があります。肝硬変患者の3大死因は、肝臓がん、肝不全そして消化管出血とされています。肝臓がんに対しては、外科的な手術の他に、皮膚の表面から針を刺して電流を流し、がんを壊死させる経皮的治療や、カテーテルを用いた血管内治療もあります。また特殊な治療として、肝移植も行なわれる事があります。以前は、肝硬変は肝臓病の終着駅といわれ、極めて見通しが厳しい病気とされていましたが、こうした治療の発達により、より長く、より健やかに暮らす事も十分に可能になってきました。

7. 肝臓病での一般的な生活注意

肝臓病における一般的な生活注意は、飲酒はしない、仕事や運動は翌日に疲れを残さない程度にとどめる、一方で過度の安静は避ける、長時間の入浴はしない、食事についてはバランス良く、といったところでしょうか。ただし、肝臓病も、その時期や状態によって生活の注意点や、望ましい食事内容が異なります。

生活の注意点を示す図

肝臓病につき、慢性のウィルス肝炎を中心に概説しました。平成21年1月にも肝臓病の講演を行なう予定です。皆さんの御参加をお待ちしています。