
講師 : 東急病院顧問(前院長) 川村 忠夫
毎日必ず新聞のどこかで目にする「メタボリック症候群」とは、「内臓脂肪症候群」とも言いその診断基準は表1のとおりです。ぽっこりとおなかが出たあなたはさぞかし気になることでしょう。
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図1 死因別死亡数の割合
これらの因子を併せ持つと以前「死の四重奏」Deadly Quartet(表2、喫煙を含めると「五重奏」deadly quintet)と言われたように、がんについで日本人死亡原因の2位、3位を占める心筋梗塞や脳卒中(図1)に罹る危険性がグーンと高まるのです。
例えばこうした危険因子がない人の心臓病発症率を1.0とした場合、因子が1つ、2つ、3~4つになるとそれぞれの発症率は5.1、5.8、35.8倍としたデータもあります。平安時代、栄華を極め栄養過多と運動不足の優雅な日々を過ごし、でっぷりとした姿に描かれている藤原道長をはじめとしたその一族の多くは、糖尿病と考えられる「飲水病」で亡くなっています。彼らは現代のわが国におけるメタボリック症候群をもつ950万人、予備軍1000万人の先駆者だったと言えるでしょう。
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診断基準に腹部肥満を必須項目としている理由は、内臓に蓄積した脂肪細胞から産生されるホルモンが血糖値や血圧を高め、全身の動脈硬化を加速させるからです。また糖や脂肪代謝に関わる重要臓器である肝臓にも脂肪が貯まると、肝機能障害が生じて動脈硬化や糖尿病の増悪に一層拍車がかかり、致命的な心筋梗塞や脳卒中発症の地盤が作られるという訳です。厚生労働省は、メタボリック症候群をもつ40歳以上の国民への健診と保健指導を平成20年4月から義務化していますが、その範疇の人は、まず肥満解消をターゲットにして自らのライフスタイルを軌道修正すべきです。特に内臓脂肪は分解され易い性質を持っていることから、日頃の食生活と運動への配慮で成果が達成し易いと言えます。表3に掲げるような「健康」を積極的に求めると共に、メタボリック症候群のなれの果ては、心筋梗塞、脳卒中に止まらず腎透析、失明、下肢切断であることを心しておきましょう。